感染対策で制約のある生活が長引き、心に変調を来す人が増えているようです。俗に「コロナうつ」と呼ばれる状況に陥り仕事にも支障が出てくると、自分を責めてしまう人も。まさにそんな状態にある47歳男性会社員からの相談に、メルマガ『公認心理師永藤かおるの「勇気の処方箋」―それってアドラー的にどうなのよ―』著者で公認心理師の永藤かおるさんは、心理学者ユングの40歳「人生の正午」説を紹介し、自然なことで責めることではないとアドバイス。男性の更年期障害の可能性もあり、専門家に診てもらうことも勧めています。
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ちょっと御相談がありまして:なんの気力も湧かない
皆様からお寄せいただいたご相談や質問にお答えしたり、一緒に考えたりしていきます。
Question
47歳男性。会社員。妻と、社会人の娘と3人暮らしです。コロナ禍で、今は在宅勤務と出社が半々くらいです。コロナ以前も、そんなにアクティブなタイプではありませんでしたが、それなりに家族と買い物や食事に行ったり、ゴルフの打ちっぱなしに行ったり、同僚と飲みに行ったりはしていました。
しかし、この状況下で、どこかに行くこともなくなり、出社の日でも会社と家を往復するだけの生活が続いており、なんだか何の気力も湧かなくなってしまいました。妻や娘は、「コロナが明けたらどこどこへ行きたいね」などと話していますが、私は「そうだね」と相づちは打つものの、そんな気持ちになれないのです。
会社でも、部下や同僚たち、そして取引先の方なども、「コロナが明けたらぜひ飲みましょう」と言っているのですが、面倒でたまらない。仕事自体にも、以前と比べると真剣に取り組むことができず、ボーっとしてしまいます。
なんだか魂が抜かれてしまったような感じで、家族にも心配されています。行きたいところもなく、食べたいものも飲みたいものもなく、仕事にも身が入らない。こんな自分はダメだと思い、気持ちがよどむばかりです。
【永藤より愛をこめて】
新型コロナウィルス感染症の拡大で日常生活が激変し、心身に不調を訴える人が実際増えています。特に、俗に「コロナうつ」と言われるような気分の落ち込みを中心とした不調は、誰しもなんとなく身に覚えがあるのではないでしょうか。ちなみにこの「コロナうつ」というのは、病名でも医学用語でもなく、ただなんとなくこの状況に当てはまる造語のようなものです。
47歳男性さんも、「魂がぬかれてしまったような」状況なのですね。気力が湧かない。楽しいこともない。何も楽しくないし、仕事にも身が入らない。
ところでアドラーと一時期ともに心理学の研究をしていたユング。彼が立てた一つの有名な説「人生の正午」というのをご存じでしょうか?
ユングは、40歳を「人生の正午」と名付けました。40歳までは上り調子で人生これから、イケイケゴーゴー。でも、40歳で人生の正午を迎え、あとは暮れていく、終盤に差し掛かるという捉え方をしたのです。そしてその頃に、いわゆる「中年の危機」を覚える人が多いとも。
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ユングがなくなったのは1961年、85歳のときでした。今から60年前の85歳なので、かなりご長寿だったとは思いますが、現代日本は人生100年時代と言われています。もしかしたら47歳男性さんの、「人生の正午」とコロナ禍が重なってしまったのかもしれません。
20代前半で社会人になったとしたら、47才ならもう25年くらい、なんと四半世紀も、一生懸命働いてきたのです。
「ちょっとしんどくなったな」
「ペース落としたいな」
と思ったって不思議ではありません。
もちろん自分がそういう時期に差し掛かり、「こんなんじゃいかん!」と思い込んでしまっている中で周りの同年代を見ると、「あいつはバリバリ働いている」「あいつは昇進した」「あいつは会社を興して奮闘している」など、“自分ができないことをやっている人達”に目を奪われ、さらに自責の念や自罰心が湧いてしまうかもしれません。
でも、へとへとな人だっていっぱいいるし、人間は機械じゃないんだから疲れてあたりまえです。現に、同年代の女性は身体の大きな変化がある時期です。そして今、男性の更年期障害も、メディアなどに取り上げられ、少しずつ知られるようになってきました。
決めつけるわけではありませんが、不眠や抑うつ、気分障害、摂食障害など日常生活に大きな支障が出る前に、専門家に相談してみてもいいかもしれません。専門家のアドバイスや治療で以前の自分を取り戻すことができるかもしれませんしね。
誰もが「イケおじ」「ちょい悪オヤジ」になるわけではありません。だから焦らなくて結構。小休止の時間を取ることに、罪悪感を持たなくてもよいのではないでしょうか。
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