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フードもドリンクも高品質。虎ノ門の新名所「小虎小路」が成功の予感しかない訳

令和を迎えて初となる寅年の今年1月、再開発が進む虎ノ門にオープンした「小虎小路」が早くも話題となっています。この横丁スタイルの飲食店街を高く評価するのは、『月刊食堂』『飲食店経営』両誌の編集長を経て、現在フードフォーラム代表を務めるフードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんは今回、「小虎小路」が繁盛スポットとして定着するであろう理由を分析・解説するとともに、これまでの「横丁」とは一線を画した感動があると称賛しています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

虎ノ門ヒルズの谷間に繁盛する要素が満載の横丁「小虎小路」が1月19日オープン

1月19日、虎ノ門に「小虎小路」がオープンした。ここはいわゆる「横丁」。1つの飲食店では賄うことが困難な広いスペースを複数の店舗を寄せ集めて構成した飲食施設である。今日、横丁がオープンしたということだけでは珍しいことでは全くないが、この「小虎小路」にはこれまでの横丁とは異なる大きなポテンシャルが秘められている。

1月19日のオープン初日、17時オープンしてすぐに店内は満席となった(筆者撮影)


プロデューサーの人望が厚い

まず、立地がダイナミックである。「小虎小路」は森ビルが開発を進める虎ノ門ヒルズの谷間にある。このエリアには2014年「虎ノ門ヒルズ 森タワー」、2020年に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が誕生しているが、これから「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」および東京メトロ日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅と一体開発する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(仮称)」が加わり、区域面積7.5ha、延床面積80万㎡となる計画で、2003年に誕生した六本木ヒルズ(区画面積8.5ha、延床面積72万5,000㎡)に匹敵するオフィス・商業施設・住宅の国際都市が形成される。既に、ここから羽田空港までのバス直行便が稼働していて、国内・世界からのアクセスが整っている。これからの就労人口や居住者の増加を見込むと未曽有の市場拡大が想定される。

入口は神社の鳥居を模していて、神秘な世界観が伝わってくる(筆者撮影)

次に、横丁としてのつくり込みが丁寧に行われている。以前、地元の居酒屋が営業していたという地下1階130坪の敷地の中に12店舗で構成、各店舗が歩道側に客席を構成していることから横丁全体の賑わいが十二分に醸し出される。総席数は248におよぶ。

客席がみな歩道側に設けられていて繁盛風景が演出されやすい(筆者撮影)

「小虎小路」をプロデュースしたのは高橋英樹氏。「居酒屋甲子園」の2代目理事長を務めた人物で、昨年11月に誕生した「日本飲食業経営審議会」の事務局長に就任している。

「小虎小路」をプロデュースした高橋英樹氏は広島県福山市や東京で飲食業を営んでいる(筆者撮影)

居酒屋甲子園とは「共に学び、共に成長し、共に勝つ」を理念として、「居酒屋から日本を、世界を元気にする」と目的とする全国的な学びの組織。2006年に結成されて以来、メンバーの結びつきが深まるばかりで、飲食業界にかかわるさまざま企業がサポーターとなっている。これらを背景として「小虎小路」は「居酒屋甲子園公認」の横丁となっている。

日本飲食業経営審議会とは、全国の飲食業者が集まって飲食業の全国的な発信型組織をつくり、国や地方自治体との対話と提案を行うことを目的としている。

ずばり高橋氏は飲食業界での人望がとても厚い人物なのである。

業種がかぶらず全国から出店

入居する店舗には高橋氏がそれぞれ出店してくれるよう直接アタックした。基本的にフードメニュー、ドリンクメニューのクオリティがしっかりしているところに出店をお願いした。フードメニューが手薄となる「スナック」「バー」は対象から外した。出店している店舗名(業種は店舗名の冠)、運営会社、本社所在地をそれぞれ紹介しよう。

このように全国の各地から集まっていて、業種がかぶることなく、既存の業種であっても特徴がはっきりとしたメニューを打ち出している。

店舗の業種は和食に限らず、フレンチ、イタリアン、ジンギスカンなど多岐にわたる(筆者撮影)

プロデュースした高橋氏は地元の広島県福山市内で横丁をプロデュースしていて、そのノウハウがここに十二分に生かされている。高橋氏によると、横丁運営にとって重要なポイントとは「いつもお客様がパンパンに入っていること」。その状態を保つことができないと、いつの間にか横丁の中に「勝ち組」「負け組」が生ずることになるという。そのようなことから、ここが常ににぎわうような仕掛けをつくるという。

お客同士が会話するきっかけをつくる

各店舗共通のルールとして、ビールとハイボールの価格を統一していて、ここでの価格競争をしないこと。また、同じ店内にいるお客と会話をするきっかけをつくる「あちらの方からレモンサワー」というレモンサワーをサービスする仕組み(拒否されたら自分で飲む)や、「一緒にシーシャ」という呼称でシーシャ(水たばこ)を各店舗で販売、「一緒にシーシャしませんか?」というタイミングを演出するために用意している。また、シャンパンをボトルで注文して近くにいるお客にグラスでシャンパンを振舞う「みんなでシャンパン」という仕掛けもある。

ここではランチ営業も行っている。ご飯のメニューもあるが看板となる「ヌードル」のメニューを設けることを条件としている。そこで「麻辣湯麵」「琉球まぜそば」「牛骨の塩生姜ラーメン」「自家製ボロネーゼのスパゲティ」等々、各店はそれぞれの強みを託したヌードルメニューをラインアップしている。

高橋氏によると、「お客様は、横丁の店舗のはしごを平均1.7店舗で楽しんでいただき、客単価は4,000~5,000円を想定している」という。月商目標を6,000万円としている。

「小虎小路」の最大の強みは「居酒屋甲子園公認」となっていることだろう。これらのメンバーの学びに基づいた結束は固い。また地方から東京に訪れる機会が多く、勉強会等の活動を行った後にはここで打ち上げを行うといったシーンは容易に想定できる。

オープン初日の1月19日は、17時オープンと共に店内は満席となった。居酒屋甲子園の関係者はもとより、これらの活動を支えるメーカーなどさまざまなサポーターが詰めかけて「居酒屋」「横丁」を楽しむ一体感があった。何より、フードメニュー、ドリンクメニュー共にクオリティが高いことが、これまでの「横丁」とは一線を画した感動があり、繁盛スポットとして定着していくことであろう。

image by: 千葉哲幸

協力:㈱カロスエンターテイメント 

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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