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マツコも呆れ果てた。いじめの証拠を突きつけても取り合わぬ腐った学校

本来ならば児童や生徒を守るべき立場であるはずの学校や教育委員会が、自己保身のためその正反対の存在となることも多々あるようです。今回のメルマガ『伝説の探偵』では、現役探偵で「いじめSOS 特定非営利活動法人ユース・ガーディアン」の代表も務める阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、いじめを認めながらない教師サイドが描きたがるストーリーを紹介。さらに学校や教育委員会が、いじめ問題解決の一番の障壁となっている実態を明かしています。

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そもそも「いじめ」を認めないという学校対応

私のところには、全国各地からいじめや不適切指導や体罰の相談が毎日複数件入ってくるが、最近数が増えていると感じるものがある。

共通点は2つある。1つ目は、「そもそものいじめ認定をしないケース」。2つ目は「重大事態いじめにしないための対策が取られているケース」だ。

中学2年生Aさん(男子)のケース

いじめには仲間外れや無視などの精神的に追い込むものや暴力などを伴うものに大きく分けることができるが、例えば、暴力であれば被害者はその場から逃れるため抵抗する場合がある。

一方で、加害者側が加害者自身を殴れと被害者に強要し、殴らせるケースがあるなど多種多様の方法があるが、抵抗したことなどを加害者側が先に被害だと学校に申し出るなどして、常態的に始動が怠慢である学校に双方指導させて、いわゆる「喧嘩両成敗」で済ませてしまうのだ。

Aさんは小学生時代から近所に住んでいるBら同級生から軽い暴力(強いツッコミ)をうけたり、お菓子などを取られたりしてきたが、同じ公立中学校に進学してから、より激しいものとなった。

特に、暴力はひどく、腹を殴られたり、寝技をかけられたりするなどのことは度々あった。

周囲の生徒らはいつも一緒にいるので、仲が良いグループとしか見ていないところがあったが、中学1年生の夏前に、常に暴力をふるってくる加害者の拳がAさんの右目に当たり、酷く腫れるという状態になった。

帰宅後、青く内出血した目の周囲に気が付いた保護者がAさんから暴力の実態を聞き、学校に報告をしたが、学校側は、調査をするといっても加害者本人に確認するだけであり、加害者の主張は「僕も殴られました」「カッとなってやり過ぎてしまった」と反省する姿を見せつつ、自分も被害は受けていると主張し、他の加害者やはやし立てていた者らも、それを見たと証言したのだ。

Aさんは学級担任から「払いのけた手が相手の身体に当たっていないか?」などと質問をうけたが、殴られた事以外はあまり記憶がないと答えると、相手はそれで怪我をした言っていると言われて、もしかしたら抵抗したから、手が当たっていたかもしれないと思い、「当たったかもしれません」と答えた。

結局被害者にも関わらず、Aさんにも加害指導が入り、喧嘩両成敗で終結させられてしまった。

ところが、加害者側はより団結し、「チクった」裏切者というレッテルをAさんに貼って、より分かりづらく、より酷いいじめを展開することになる。Aさんは、もう先生に言っても無駄だと思い、今さえ我慢してやり過ごせば、きっとなんとかなると殻に閉じこもるわけだ。

しかし、Aさんの場合はやり過ごすことはできなかった。

そこから、Aさんが受けたいじめは、女子への告白の強要、展示物の破壊、髪の毛の剃り上げ、飲食店での支払い強要、全員分の荷物を持つことやごみの入ったおにぎりを食べさせられるなどであった。

このケースでは、結果いじめが相当ひどい状態になり、被害者本人が適応障害等の状況に陥ってから再び発覚することになったのだ。

私に相談が入ったのは、Aさんが適応障害だと病院で診断を受けた後であり、Aさん本人の申告と学校の対応に大きな隔たりがあるため、その原因を知るため、開示請求のアドバイスと、情報整理から始まった。

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いじめではなく「いざこざ」で記録

開示請求では、学校は面談記録を主に開示してきたが、「学校としては、Aさんも暴力をふるっていることを認めたので、両方指導をした」とあった。

また、Aさんが身に覚えのない「眼鏡を壊した」という記録も出てきた。これは加害グループの1人が、「眼鏡をAさんに叩かれて、レンズがフレームから外れてしまった」と言ったというものだ。

結局、学校は「生徒間のいざこざ」として扱い、「いじめ」としては記録していなかったのだ。

また、開示請求によって得られた資料には出欠席の記録も出てきたのだが、私が被害側から聞いている欠席日数とはかけ離れた数字が出てきた。

Aさん本人と保護者によれば、2020年の秋以降は、定期テストのために別室登校をした以外、学校で出席を取ったことはない。

ただし、朝だけ顔を見せてくれと担任の先輩に当たる生活指導の先生から言われて、数回校門にタッチするということはしていたということであった。

Aさん本人も保護者も、校門タッチについては記録していないため、カレンダーを見ながら大まかに日数をカウントすると、開示によって得られた記録と大まかに合致するであろうということになるが、年間通算で30日以上の欠席ということにもならないことになり、不登校の基準に満たないことがわかったのだ。

通算30日欠席で不登校となる

不登校の定義において、あくまで目安であるが、「通算30日の欠席」で「不登校」とするとされている。これは文科省の「児童生徒の問題行動調査」(毎年いじめの認知数などが公表されている調査)で示されたことから、定義化されたものだが、校門タッチや提出物などで欠席としない措置は、「高校進学時に内申で不利になることを避けるような特別な配慮」と口頭では説明しつつ、結局は「不登校」としないことで、いじめの中でも第三者委員会の設置などが必要になってくるような「重大事態いじめ」にしないための措置であるとも考えられる。

一度公的な記録になったことを、誤りとして訂正することを是としない傾向が強いから、記録した側も意固地になることが多く、そんなことは社会に出ればいくらでもあるからと言って、これを受容できない人物の方が未熟だとして対応をしなかったり、クレーマーに仕立て上げようとする。

一方で、そもそも「いじめ」として認めていないので、(公立校の場合)学校は教育委員会に報告していないということになり、隠ぺい圧力が働きやすくなることがあるわけだ。

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調査による証拠収集

こうなると、何らかの突破口を見出さないと、単なるいざこざで、個人差がある感じ方でAさんが不登校になりかけているという学校側のストーリーにのせられた状態になってしまう。

私はAさん本人から当時の話を詳しく聞き取った。この聞き取りは何かの特別なテクニックを使うのではなく、初回は互いのことの開示などを通じた雑談などで、その次は今現状の不安などへの道筋を考えることなど、直接的な質問はほとんどしないで進めるが、こうした方法で接触機会を比較的頻繁にもつことで、突破口が見えることが多い。

この件でも、こうした雑談から「おにぎりのごみはゴミではなく雑草だった」という告白があり、その後、机に同じ雑草が置いてあって、その場にいない他の生徒も笑っていて、誰も助けてくれないんだと思ったし、恥ずかしかった、という会話から、このおにぎり動画が拡散されていた可能性を見出した。

また、同時期に五月雨登校になっていた女子生徒がいることもわかり、接触を図ったところ、この女子生徒の保護者を通じて、クラスメイトのグループLINE上で、Aさんが自暴自棄になった様子で「米と海苔の間に雑草を挟んだおにぎりを食べる動画」を提供してもらうことができた。

さらに、この女子生徒の保護者によれば、女子生徒はこの動画を担任に見せて、この記録を提出しているということであった。

そのため、すぐにAさんの保護者から担任に連絡をしてもらい、この動画を持っているか確認を取ったところ、自分の使っているパソコンに記録を持っているということがわかったのだ。

担任は終始不機嫌で投げやりな様子であったが、学校長に動画がある事を告げた後は、態度が激変し、「いじめだとは思わなかった」「本人がウケを狙ってやっていると聞いていた」などと信じられない説明を繰り返していた。

但し、校門タッチで出席、提出物でとりあえず出席というような記録があったりすることから、これだけの判断を担任のみが行っていたとは考えづらい。

学校の仕組みからすれば、ここに校長の許可があったことが予想されるが、責任回避のために本格的な隠ぺいをされてもより問題が複雑化するであろう。

いずれにしても、まともな第三者委員会が設置されれば、こうした諸問題は指摘される対象になると考え、本件では第三者委員会の設置要望を提出する運びとなった。

2022年2月現在は、Aさんの事案はここまで進んだが、どのような形の第三者委員会が設置され、どのような方針で進められるかは、これからの話になる。

同様のケースは数十件

Aさんのケース以外でも、同様、類似するケースを私は常に数十件抱えている状態で対応が続いている。いずれも、第三者委員会の設置までを避けようとした痕跡があり、同時に、いじめ対応として、「加害者がみとめないから加害行為はない」と杜撰な判断をしている。

第三者委員会の設置について問題があるケースが多いことから見ても、いじめ対応においては、問題があるハードルが多すぎやしないかと思える。

もちろん、まともにやっている自治体もあるのだろうが、私が知る限り指で数えるほどしかない。全てを根本から見直すべきではないだろうかとしか思えないのが現状だ。

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編集後記

以前、マツコ・デラックスさんに「学校が取り合わなかったら証拠あっても無駄じゃない」というコメントをもらいました。

確か、『5時に夢中』の取材を受けてのときだったと記憶しています。その時、私は率直に「マツコ・デラックスさんは、いきなりズバリ本質か!すげーな、この人」と感じました。

事実として、調査で苦労することもありますが、ほとんどのいじめ事案は、すでに不登校になっていて、新規の証拠が取れない状態であったり、開示請求などを進めて証拠の整理や分析をしつつ、保護者などと同行して交渉の際に意見をして、いじめ対応のテーブルにのせるということの方が圧倒的に多いからです。

つまり、学校や教育委員会への対応に苦慮することの方が圧倒的に多いというのが、活動の実態であるのです。

ただし、そうした対応には必ず証拠類が必要になります。そういう意味で、一般的にイメージしやすい尾行や張り込みみたいな調査はいじめ調査においてはそれほどする機会は少ないものの、情報収集や聞き取り調査という総体的な調査は要になります。

ですが、確かに、証拠をいくら出しても、上から下まで腐ってら、ということもあります…。

やはり、マツコ・デラックスさんの本質ズバリ!に一本取られちゃいますね。

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image by: KenSoftTH / Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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