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中国人が「日本を見習って欲しい」とまで呆れる“最弱のスポーツ”とは

サッカー・カタールW杯アジア最終予選で一度も負けたことがなかったベトナムに歴史的敗戦をした中国。中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんは自身のメルマガ『黄文葦の日中楽話』で、中国のサッカーが日本に遠く及ばない理由について明かしています。

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中国サッカーが強くなる日、中国が本当の大国になる日

中国人にとって、メンツがすごく大事である。しかし、一つだけ、メンツに拘らないことがある。それは中国サッカー。外の人からどんなに中国サッカーが批判、揶揄されても、中国人は納得し、全然怒らないという。

中国人は自国のサッカーを話す時に最も謙虚だそうだ。むしろ自虐的な情緒があふれる。「中国のサッカーは何故そんなに下手なのか」、「14億もの人口なのに、何故一つ優秀なサッカーチームも作れないのか」、「中国サッカーは日本サッカーに学ぶべきだ」など、この類の国民的な議論が十数年、いいえ、二十数年も続けられてきた。これからもまだまだ長く続くかもしれない。

自国のサッカーの負けに慣れている中国サッカーファンたちが、さらに大きな衝撃をうけた。2月1日、ちょうど旧正月、カタールW杯アジア最終予選で、中国はベトナムに1-3で敗れ、本大会出場の道が閉ざされた。これまで一度も中国はベトナムに負けたことがなかった。

春節の初日に、歴史的敗戦を食らったとあって各中国メディアとネットユーザーは「メンツまる潰れ」「歴史的恥辱」と猛批判だ。

実は当方は昔からサッカーファンだ。中国サッカーがなかなか進歩してないので、だんだんがっかりして、中国サッカーを観なくなって…日本サッカーを見るようになった。

改めて、「14億の人口なのに、何故一つ優秀なサッカーチームも作れないのか」を考えてみよう。人と制度の両方に原因がある。

まず、中国人の性格から言えば、サッカーのような頗る集団戦略が求められるスポーツがあまり得意ではないはず。卓球のような個人の力で巧みにコントロールできるスポーツが得意であるわけだ。中国社会には個人の卓越性が評価されている。

もう一つ、やはり国の体制とサッカーの体制に問題があると思われる。

近年、中国のサッカーチームがヨーロッパの優秀な監督を招き、人材育成や戦術戦略指導に力を入れているらしい。

しかし、一方、中国サッカー協会の腐敗問題も深刻で、中長期のサッカー人材の育成体制にも構築に欠けている。アジアトップレベルましてや世界強豪になる日はまだまだ遠い。

中国サッカーには、お金持ちになったが、なかなか強くなれない。

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最大の欠点は、スポーツを政府が一元的に管理していること。中国の市場経済が盛んである現在、サッカーなどのスポーツは依然として政府によって管理されており、サッカーも中国経済と同様に、体育委員会とサッカー協会が権力と金の両方を持つ二重システムになっていて、腐敗の温床となっている。

過去数十年間、中国政府はスポーツ界のエリートを育成し、資金、トレーニング環境などを提供し、主にオリンピックで金メダルを獲得し、共産党政治体制の勝利と成功をアピールする。

この方針は、サッカーの発展に影を落としている。サッカークラブは当局によって管理されており、その結果、地域の独立したサッカークラブは発展できない。

中国政府は、このような小さなサッカークラブが都市で何千と生まれ、「ボトムアップ」の社会運動として広がり、政府の支配に挑戦することを恐れているかもしれない。サッカークラブは、都市と農村の家族や隣人を集め、政府や体育委員会の官僚よりも、クラブに対して忠実になる可能性があるからである。

中国のサッカーが強くなれないもう一つの理由は、一般的に中国の親はスポーツを重視せず、子供に勉強をしっかりさせたいと考えているからだ。

週6日学校と塾に通い、朝6時に起床し、夜10時まで勉強する子供が大勢いる。子供がサッカーを好きになっても、サッカーをする余裕がない。

サッカーと民主主義の関連性は、中国サッカーの課題であるかも知れない。

現在中国では、サッカーをする人、支える人の視野の広がりが無く、個人的に優れた選手がたまたま集まったとしても、それを継続して積み上げていく基盤がなさそうだ。

サッカーという競技は民主的な自立した社会の存在が強いチームを生む大きな要素であるかも知れない。

トップアスリートの育成と強化だけを考える中国的なスポーツの取り組みでは、サッカーのような「チームとしての熟成」が求められる競技で成功することは難しい。

60-70年代まで日本サッカーもインドや香港やベトナムに負けていた。70年代から小学生・少年のサッカー普及に力を入れ、サッカーの視野を拡げる努力を続けてきた結果、継続的に強いチームが組めるようになった。

サッカーについて、中国は日本に学ぶべきだと思う。

とりあえず、しっかり、サッカーの基礎を築いてほしい。中国サッカーが民主化の先頭に立つことを期待せざるを得ない。

中国サッカーが強くなる日、中国が本当の大国になる日であるかもしれない。その日は、いつ来るだろうか。

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image by: Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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