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リスクも最小限。「メタバース」が広まればアパレルが儲かるワケ

Facebookから社名を変更した「Meta」を筆頭に、「メタバース」の構築に取り組むIT企業が多くあります。このメタバースの世界と親和性が高いのがデジタルアート作品の取引などで注目されるNFT(非代替性トークン)のようです。今回のメルマガ『杉原耀介の「ハックテックあきばラブ★」』では、システム開発者であり外資系フィンテックベンチャーCTO(最高技術責任者)でもある現役東大大学院生の杉原耀介さんが、メタバースが当たり前となっていく中で、人々は何に注目し、どういったサービスに価値を感じるのかを考察。NFTで希少性を付加することで、アパレルブランドに可能性が広がると伝えています。

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メタバースが広まればアパレルが儲かる?

夢物語はすぐ現実に

Facebookが名前をMetaに変え、にわかに活気付いているメタバース界隈ですね。まだまだMetaは苦戦していますし、VRもそれほど一般的ではありませんがこれからどうなるでしょう?私はこれから10年にかけては充分可能性はありますが、まだ広まるには時間がかかるかなと思っています。

考えてみればappleが1991年にquicktimeを発表した時は「こんな遅くて小さな画面で動画見るよりビデオの方が何倍も手軽で早いね」なんて言ってた15年後には動画サイトが花盛りとなり、2003年にECが叫ばれ始めた頃は「実物を見ないでオンラインだけで物を買うのは無理だからショールームが必要だ」なんて言われてたのに、今ではむしろ実物を見ないでネットで買う方が一般的になりました。

多くの技術的課題は時間によって解決されます。けれどその伸び方は級数的なので、大体の場合ベンチャーは飛びつくのが早すぎてお金が持たず、大手はほとんど後手に回ってしまうのですね。まあ、これは後知恵で実際にはお金を適切に投資するのは難しく、臆病な私のようにただ眺めている人もいれば大きな勝負に出る人もいます。私の周りでも大金持ちになった人もいれば、破産した人もいて悲喜交々ですね。

メタバースはNFTと共に

それはさておき、最近のメタバースのトレンドで面白いなと思っているのが、NFTとの関係に注目されているところです。

NFTはよく美術品とくっついてNFTアートに話題が集まってます。小さな子供の描いたドット絵やよく分からない写真(失礼)が何千万で売れたりと、ちょっと射倖心を煽られて思わずopen seaにアカウント開いた人も多いのではないでしょうか(私のように)。

ただ、これはNFTの能力の氷山の一角で、実際のところNFTが本当に力を発揮するのはこれからメタバースなどが広まって「アバターやその装飾品が取引されるようになった時」なのです。

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技術はエンジニアが進めると言う罠

さて、少し話を巻き戻します。意外に見落とされがちなのが技術は当然のことながら技術者(エンジニア)を中心に広まって行くということです。エンジニアが中心だから最新の技術ではまず「技術がどれほど優れているか」で優劣が決まります。ただ面白いのは利用者が必ずしも「技術的に優れているプロダクト」を選ぶとは限らないことです。

例えば(ここで例に挙げるのは気が引けるのですが)skypeは昔からあるネット通話やチャットのソリューションです。まだ「ネット通話」と言うものが一般的でなかった頃から私たちエンジニアはskypeを使い、もしネット通話やチャットが一般化するとしたら、skypeが最もその中心に相応しいとみんなが思ってました。

ところが!実際に蓋を開けてみたらLINEが、特に女子高生の中で爆発的に広まりを見せ、それに釣られる形でその両親や若者たちにもLINEは広まりました。少なくとも今ではエンジニアではない「普通」の人にとって一般的なネット通話アプリはLINEです。

LINEが強かった理由は脱力?

ではなぜLINEはSkypeに勝てたのか?その理由は「脱力のスタンプ」だと言われています。しゃべる代わりにちょっと脱力の可愛いスタンプを送り合うことができる。比較的ビジネス寄りだったSkypeにはそのような脱力スタンプは当時ありませんでした。もちろん音質や機能ではSkypeは圧倒的に有利だったのですが、問題は評価する人によってはそこが強みには感じられなかったという事です。

今更とってつけるようにフォローしますが、私は今でも毎日Skype使ってますし、LINEとSkypeは全く違うものです。ただ技術的に優れているものが必ずしも覇権を握るとはなかなか言い辛いものですね。

文字は読めれば良い?

ただ、このようなエンジニア視点と非エンジニア視点は時に大きく異なることがあります。例えば初期のMacはジョブスが大学でたまたまタイポグラフィの授業を取ってて「これからはコンピュータにも書体が必要だ」と、当時のコンピュータにとってはかなりの無理をして書体を選べる機能を搭載しましたが、Windowsでは「文字は読めればいい」と書体を選ぶ機能はありませんでした。

実際、機能の観点からだけ見れば書体を選ぶ機能を作るのは非合理的だと言えます。しかしその結果Macは「書体にこだわる」デザイナー御用達のマシンとなりました。そして、その「なんとなくかっこいいマシン」と言うイメージはその後長くAppleのブランディングに寄与した訳です。

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円熟した技術のその先

話が長くなりましたが、つまり何が言いたいかと言うと「メタバースが広まれば、必ずみんな着るものや見た目にこだわる」ようになるという事です。

当初は3Dの再現率や操作性、便利な新機能にみんなの目が向くでしょう。ちょうど黎明期の家電が「カラーかどうか」「脱水機がついてるかどうか」のように機能で戦う時代が最初は続きます。しかし、それがある程度落ち着くといつかは「どこを選んでも大して変わらない」というレベルに辿り着きます。

そんな技術が進歩して、実際の世界の体験とほとんど変わらない世界。そこに放り出された時にふと見渡せばみんなの着ている服は多分「エンジニアが知っているどこかのデザイナーが作った服」です。そんなに悪くもないけど取り立てて欲しいわけではない「無料の服」。そんな中にもしブランド物の服を着ている人がいたら?有名なバックを持っている人がいたら?その人たちがどのくらい注目を浴びるかは火を見るより明らかです。

知らない人とは知り合えない

古い漫画で恐縮ですが昔「動物のお医者さん」という漫画がありました。その中の何気ないセリフがとても真実を突いていて、私は折に触れていつもそれを引用しています。

その漫画には漆原教授というとても変わり者の先生がいて、主人公はその先生の紹介でいろんな動物病院に修行に行きます。しかし先生が変わっているので紹介された獣医さんもやはり変わった人で主人公たちが苦しめられます。そこで主人公は思わずこう叫ぶのです。「先生の知らない人を紹介してください!」それに先生は答えていいます。「知らない人は紹介できん!」

これはものすごく真理を突いています。そう「知らない人は紹介できない」のです。先ほどのメタバースでブランドの服を作れる人はつまりこう言う人です。「ITに精通してて権利や著作権に強く、そしてファッションやアパレルに強いコネを持っていてビジネスビルディングができる人」です。

お友達でもし思いつく人がいたならラッキー、ぜひ新しいメタバースのアパレルを考えてください。しかし大抵の場合、エンジニアとそのようなアパレルビジネスの人々は遠い距離にいることがほとんどです。

Webの世界も最初はエンジニアだらけでした。それが一般化するにつれ違う仕事から転職してくる人が増え、やがてそれが「映像の専門家」や「ファッションの専門家」と融合し始めて新しいベンチャーが生まれ始めました。

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メタバースでアパレル

同じようにメタバースでもこれからファッションやアパレルといった業界に注目が集まっていくでしょう。そしてその場合のキーになるのがNFTなのです。

デジタルでアパレルをやって行くのに問題となる事。それが「デジタルは無限にコピー出来ること」なのです。いくらでもコピーできて、本物も偽物もない世界、そんな世界でアパレルをやったら、あっという間に海賊版が出回りとてもやって行けません。

しかしNFTを利用すれば少なくとも「本物」と偽物は区別されます。考えてみれば本物と見間違うくらいの偽物はリアルの世界でも存在しますし、逆を言えばリアルの世界では「見分けがつかなければ本物か偽物かもわからない」のです。ただNFTを利用してその数量を制限することで「世界に1,000コピーしかないブランドの靴」や「一点物のバック」を作ることができるわけですね。

また、以前私がお手伝いしていたアパレルの方に聞いたお話では、結局アパレルの難しさは「売れるかどうか分からなくても在庫をある程度作る必要がある」事だと言っていました。売れそうなサイズの売れそうな服をコンテナに何杯も作る。利益率が高いので売れれば大儲けだが、もし当たらなければ全て不良在庫になってしまう…それがアパレルの悩みだそうです。(メルマガ『杉原耀介の「テックハックあきばラブ★」』2022年2月17日号より一部抜粋)

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杉原耀介この著者の記事一覧

幼少期から独学でプログラムを学び、15歳でプログラムコンテスト荒らしを始める。工学系に一旦は進むもすぐ飽きて美術系に転向。映像・CGデザイナーを経て1995年にインターネットと出会いニューヨークでシステム開発の仕事を始め、その後アイドルから金融まで幅広い新規事業に携わる。直近ではゼロから外資系フィンテックベンチャーのシステム開発を行い、CTOとして成長に寄与。ガジェット大好きなガチオタ。新しいテックトレンドの予言に定評があり「預言者」と呼ばれることも 。慶應義塾大学大学院美学美術史学修士、現在東京大学大学院博士課程在学。

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【著者】 杉原耀介 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎月 第1木曜日・第3木曜日

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