「国産は信用できて、中国産は信用できない─」そうした思いを抱いている日本人は多いでしょう。しかし、時代が大きく動いている今、かつての思想は改める必要があるかもしれません。今回、中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんは自身のメルマガ『黄文葦の日中楽話』で、 中国産に対するステレオタイプを変えなくてはいけないとして、その理由を語っています。
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何故日本人がいまだに「国産」に拘っているのか
22年前、当方が日本に来たばかりの時、日本人が日本製に愛着を持っていることが羨ましかった。国産が一番いい、一番信頼できる。その年代、中国では逆であった。中国人は外国製品にとても憧れ、国産よりずっと優れていると考えていた。
最近、自宅の近くに新しいレストランがオープンしたのだが、その店の看板には、「すべて国産の食材を使用している」と書かれている。何故日本人がいまだに「国産」に拘っているのか理由を考えずにはいられない。今の時代に、「国産」「日本製」について、日本人は再認識する必要があるのではないか。
「国産」「日本製」に関する中身が変わっている。日本製は単純な日本製ではなくなった。例えば、日本の腕時計メーカーのブランドの腕時計でも、部品の製造、組み立て、検査を中国で行う。日本製のムーブメントを使っている限り、「日本製」を名乗れる。
腕時計に限らず、服の生産も同じようなことがある。海外縫製なのに、「日本製」になっている。日本で造られる洋服でも、海外から日本に来た研修生が縫製している。
また、日本のブランド服には、デザイナーは海外出身の方だとか…今の時代、日本製でも、国際協力で完成する場合は多い。産地について、観念を更新する時がきたのではないか。
コロナの前、当方はかつて中国から来日した親友を連れて料理屋さんに行ったら、「中国産は一切使用しておりません」という宣伝チラシを発見した。
親友に日本国産食材の素晴らしさを紹介してあげたら、皆は何となく納得してくれた。「せっかく日本に来たので、やはり、正真正銘な日本産を味わいたい。でも、中国商品は日本では信頼されていないみたいだよね」と言われた。
実際に、日本のスーパーでは中国産食材はたくさんあるはず。多くの日本家庭の食卓には中国食品は欠かせない存在であるはず。多くの日本企業には単に利潤を追求するため中国産食材を輸入したとは簡単に言えないだろう。中国食材を輸入しなければならない。そして、日本のビジネス業界には、内向きの宣伝文をもっと外向きの宣伝文に変えたらいいと思った。
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「中国産」について、日本人のステレオタイプを変えなければならないだろう。確かに、中国製品はまだ個々に規格外の品質である。全体的に見れば、中国製品の品質はここ数年で大きく向上している。化粧品、日用品、家電、アパレルなど、高品質の中国製品は次々と生まれて、日本に輸入されてきた。高めの「日本製」は厳しい状況に置かれているに違いない。
最近、「中国産アサリが日本産に化ける」というニュースがあった。産地偽装の背景には、国産アサリの減少がある。減少した分を補うように輸入アサリが増加し、今では中国など「外国産」が9割を占める。
偽装することは勿論いけない。しかし、なぜ国産アサリの減少という事実を隠すのか。日本人の一般的な心理特性は、いまだに国産だけを信じ、中国産を信用しないことである。企業はこのメンタリティに合わせて偽装している。
時には、「国産」に拘ることは一種のこころの閉鎖であるかも知れない。海外の人にも、ものにも心をもっとオープンにすればいいんだ。「日本製」というより「日本技術」に誇りを持ち続ければいい。
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