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プーチン再選のために虐殺されたウクライナ市民の「軽すぎる命」

ウクライナ侵略開始後初めて行われた記者会見で、キーウ近郊での自軍による住民虐殺をフェイクだと主張したプーチン大統領。しかしこの残虐行為はロシアが「意図」を持ち行っている可能性が高いようです。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、大量虐殺はプーチン大統領再選のために行われているとしてその理由を解説。さらにプーチン氏にとっては2024年の大統領選時もウクライナ情勢が不安定であることが重要であるため、この紛争の長期化は避けられないのではないかという予想を記しています。

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春本番の中で考える「プーチンの戦争」:「デモくらジオ」(4月8日)から

ハレルヤとかビバとか南無とか言っていられない状況がロシアを巡ってというか、ウクライナを巡って起きておりますね。

4月8日、岸田総理が会見をして、ロシアに対する制裁の新たな内容を記者会見で発表しています。ちょっと今回は…本気かどうかは分からないけれど、ちょっと今回は重いですね。なぜかというと石炭の禁輸、輸入しないということが入っています。直ちに全量シャットアウトするのではなくて。今、日本は大量の石炭を輸入してそれを発電に使っていることで世界中の環境保護関係の皆様方からきつくお叱りをいただいている国ですけれども、全輸入量のうちの10%くらいですかね、インドネシアがものすごく多いのだと思いますけれど、10%くらいはロシアから来ている。

これ、1億何千万トンという量ですので、その10%、たいしたことないと言えるほど少ない量ではない。これをゼロにするために、輸入先を変えるという意味で岸田総理は言っているようです。これまでエネルギー関係の制裁に踏み込むことについては、自分の首を絞める結果になるだけだということで、政府内部でも躊躇する声というか意見が多かったようですが、さすがに今報じられているような大変な事態がウクライナで生じている、それをなんとか止めようという動きの中では、そうは言っていられなくなったということだと思います。

ただ、それをいわゆる再生可能エネルギーであるとか、あるいは原子力。多分、それも話になってくるのだと思いますけれど、それによって代替するよりは、とりあえず輸入先に増産をしてもらうことはできないかという、そういう話ではないかと想像しているのですが。これ、まだどれくらいのペースで減らしていくのかとか、もちろん代替に関する方策が具体的には出てきていませんので、よく分かりませんけれど、ともかくエネルギー関係の制裁に踏み込んだということは非常に大きい。

それから外交官8人でしたかね。もっと、外交官はたくさんいると思いますけれど、ロシア大使館所属の外交官を国外追放するということだそうです。早速ロシア側は報復措置を執ると言っていますので、当然日本の外交官が追放されることになるのでしょう。致し方ないですよね。それから国連の人権理事会でロシアを、まあ、追い払うような格好になったようですね。ロシアは人権理事会を脱退するということになったようです。

国際的な枠組みからロシアがどんどん外れていくということで、じゃあ戦争が止まるのかというと、デモクラTVの本会議などを見ていただいている方は先週の稲熊均さん、東京新聞編集委員の稲熊さんのお話で十分お分かりになったと思うのですが、これは「プーチンの戦争」であって、特にプーチンが終身大統領を目指すということに戦争の目的が置かれている限りにおいては、2年後の大統領選挙の時も、ウクライナが不安定な状況であること、戦争が終わっていないことが重要で、そのもとでこそ、プーチンは終身大統領の座を確保できる、そのように思ってやっている。ということになると、何が何でも終わらせないということになるのかもしれませんね。

既にメディアも抑え込んでいる、野党も押さえている、その状況下では簡単にいかないというか。案の定というか。おそらくキエフも出来れば占領したいと思っていたのでしょうが、東部の切り取りというか、東部から南部クリミアに掛けての地域をとるということで兵力を集中し、数日中に大攻勢が始まるとということで、今盛んに報じられていますけれども、むしろそのようなことになっていく可能性が高いのだと思いますね。それが現状ということだと思います。

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あの、まあ、それが今の現状だと思うのですが、きょうこの番組でお話ししたいと思っていましたのは、むしろその、虐殺そのものの話です。特に言いもしませんでしたけれど、ロシア軍が特定の町なりを占拠する、砲撃とかミサイルによる破壊の末に町を支配する、町からウクライナ軍を一掃してしまった場所に関しては、おそらく何らかのこういうことが起こるだろうなというのは十分想像できました。

というのは、軍隊が他国を支配する局面が訪れた場合には、しばしばそういうことが起こってきた。守っていた軍隊がいなくなって、他国の軍隊がそこに入ってくるということになった場合には、しばしば歴史上、そのようなことが起こってきているので。これはあり得ることだなと。

しかし、その想像をも超える凄まじさですね。いくつかの町でまだ数も分からないほど、おそらくは数百から数千というレベルになっていくのではないでしょうか。とにかくたくさんの町をロシア軍は包囲して支配してきていますからね。その場所で、「虐殺」が起きている。偶々出くわして兵隊と間違えて撃ってしまったとか、あるいは砲弾が住居に当たって…というケースもたくさんあるとは思いますけれど、そういうことではなくて、住民を追い出して、その家を使ったりしているわけですけれども、その住民を何らかの意図を持って、まさに戦争目的に合致した「虐殺」が起こっている。

これは、凄まじい話で、つまりウクライナ政府に近い人物とか、行政機構の末端とか、そのような人を特定して…どうもロシア軍はその種の情報を持っているみたいですね。で、拷問もしているようですね。拷問して、つまりウクライナ政府の意図に従って町をまとめているのは誰と誰なのかということで、それを拷問でしゃべらせ、殺害するということがあったみたいですし、あるいは、遺体を路上に残しているのは、これはもう恐怖心を煽る見せしめ的な効果を狙ったのではないかと思います。

そのようなことを含めて色んな理由で、偶然でも何でもなく、計画的に殺害をしているということだと思います。だからこそ、非常に多くの地域で殺害された住民の遺体が発見されてきている。これは、あれだけの規模の軍事侵攻を続けていることを考えると、むしろあっても不思議ではないと逆に思ってしまうくらいです。

大事なことは、そのような虐殺が「プーチンの戦争」、プーチンにとっての戦争目的と十分合致した、それにかなう行動だということです。これも何かのことに申し上げたと思いますけれど、元々ロシア軍は無差別と思えるくらい、住民の家でも何でも建物を破壊するということをやり、住宅地の砲撃もやっていたわけですね。町中、例えばマリウポリなどは90%の建物が破壊されたというくらい、破壊し尽くす戦い方、いや、「戦い方」などと言うべきことなのかどうかも分かりませんけど、そういうことをしてきた訳なので、そこに人がいれば死ぬだろうね、と。これ、無差別の殺人そのものなので、そういうことをしてきたわけですけれど。

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それと、そのような行動、究極形としての虐殺行為。これをロシア軍の正規軍の兵士が普通にやれるだろうかということを考えると、どうなんだろうという気がするんですね。途中からということもありましたけれど、投入されている兵力のうち、ロシア軍の正規軍だけではなくて、傭兵部隊がありましたね、シリアあたりからきているね。それからチェチェンから1,000人くらい来ていますよね。

チェチェンというのはウクライナや、その前のジョージアのように、ボカスカ町そのものを破壊して独立を叩き潰した戦争、独立の願いを叩き潰した戦争、紛争ですけれど。そのときにプーチン側、ロシア政府側に立って行動したカディロフでしたか、今は息子さんの時代になっているようですけれども。その人たちが率いている武装集団みたいなもの。それからプーチン氏におそらくは忠誠を誓っているFSBの職員、元KGBの人たちですね。こういう、法律にもとらわれず殺害行為を自分たちの行動の中に組み込んでいるような人たちが、この行動をやったのではないかという気がしています。それを含めてこれから明らかになることは色々あるのだと思いますね。

ロシア政府は当然、これは西側のフェイクだ、ねつ造だ、嘘だと「反論」なるものをしているようですが、悲しいことに嘘をつくことも下手くそになったのだなという気がします。誰があの言い訳を信じるか、信じてもらえると思っているのでしょうか。ただ、どうやら彼らにとって、国際的にどれだけ批判されても痛くもかゆくもないところがあってですね。

吃驚したのですが、YouTubeなんかで色々見ていると、ロシアのテレビの映像も入ってくるんですよ。それを見ると、ロシア軍がまるで解放軍なんですよね。そのストーリーは最初から提示されているもので、ドネツク、ルガンスクで親露派の住民をウクライナ政府が弾圧している、殺害までしているというストーリーですよね。その可哀想な人たちを救出に行くというのが、少なくとも当初言われていた戦争の目的だった。それに沿ったニュース番組みたいなのもあってですね、これが無茶苦茶ウソっぽいんですけれど、ただ、メディアの弾圧を徹底的にやって、もうすべてが「プーチン放送局」「プーチン新聞」みたいになっている中で、今の戦闘の様子はこうですよという映像、ロシア兵は頑張っていますという感じの映像を見せられたら、多くのロシア国民、モスクワ市民は、ああ、やはりプーチンは正しいのだと、もしかしたら思うかもしれないですね。それを自らがプーチンを信じていることの根拠にしたい…周りに批判する人がいたら、それはおかしい、「おまえはちゃんとテレビを見たか」みたいなことを、何というのですが、理屈として使えるじゃないですか。私は見たのだと。住民のインタビューもそれなりに入っていたりして、これまたウソっぽいんですけれど。勿論、写っているのは本当の被害者かもしれないのですが、その人がどういうことでケガをしたのか、親戚家族が亡くなったのかということをちゃんと語っていないようなのです。

そういうことがあるので、国内的な批判を押さえ込む態勢は作り上げたので、2年後の選挙は大丈夫、という話なんだろうということです。ということは仮に停戦協議が続いたとしても、実際の停戦には至らず、いつもウクライナ国内のどこかに散発的な砲撃が加えられて、毎日何人か亡くなっていくということが、プーチンのためにずっと続けられていくという。なんと馬鹿馬鹿しいのでょう。そのような状況だと思います。

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えー、それから虐殺に関して色んなことがありますけれど、直接ウクライナの情勢とは関係ないことですけれど。アメリカ人も歴史的に見ると大きいことは言えなくて、特に先住民に対する虐殺は凄まじい。計算はどういう風にしているか分かりませんが、一説には950万人くらいのアメリカ先住民、いわゆる「インディアン」が殺害されたといいます。

多分、私のように70年代に高校生活を送った人は覚えておられるのではないかと思いますけれど、『ソルジャー・ブルー』という映画がありましたよね。私の大好きなキャンディス・バーゲンさんが主演を努めておられましたし、バフィーセントメリーという先住民の歌手の方が主題歌を歌っておられました。

これは南北戦争(1861年~64年)の最中、シャイアン族の集落、ほとんど女性ばかりだったらしいですが、それを騎兵隊が襲い、皆殺しにした事件です。アメリカの開拓の歴史、アングロサクソンの開拓史はほとんど先住民に対する虐殺の歴史とパラレルでして、例えば特定の部族と条約を結んで、ここは君たちこっちは私たちだから入ってこないでねというような条約を結ぶ。ところが、「インディアンの居留地」、先住民の居留地から金鉱が発見されると条約をすぐに破って攻め込むというようなことをアングロサクソンの皆さんはやってこられました。その果てに何が起こったかというと、先住民は皆で殺すべきだということが公言されるまでになっていく。まさにジェノサイドだと思うのですが、そのようなことがありました。

で、それを題材にした映画だったのですよ、『ソルジャー・ブルー』は。しかし、アメリカの西部劇の中では全く異質な映画といわれたこの作品が70年に出たのかというと、それはその2年前の1968年の何月でしたかね、ベトナム戦争最中のクワンガイ省でしたか、ソンミ村ミライ部落というところで起きた虐殺事件。507人村民がいたのですが、そのうち504人が殺される事件が起こっています。ご記憶の方多いと思いますが、カリー中尉という人が現場で指揮を執りました。命令したのはその上司の大尉くらいでしたかね。中隊長くらいだったと思いますけれど。裁判が行われましたが、有罪になったのはカリーさん一人で、そのカリーさんも懲役10年だったのが途中で仮釈放され、今もお元気なのではないかと思います。

その事件がベトナム反戦運動を非常に大きくしていくきっかけになった。虐殺の証拠写真がたくさん出てきたので、これでベトナム戦争は汚い戦争だということがアメリカ国民に知れ渡ったわけですよね。当然、反戦運動のきっかけになりました。

戦争の論理というのは、一般人を殺すということを全く躊躇しないんですよね。

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で、もう一つ。吃驚した事件があって。その3年前、65年にやはり大きな事件が…。殺された人の数は20人くらいなのですが。タインフォン村というところで非戦闘員を虐殺した。ちなみにベトナム戦争全体を通して米兵は5万人ほど死んでいますけれど、ベトナム人は200万人死んでいますからね。それはおいておくとして。ボプ・ケリーさんというね、一時大統領候補にもなったような上院議員がいたんですよ。その人が2000年以降だと思いますけれど、元部下の証言で、戦争当時、蛮行を命じていたことが明らかになり、本人も認めた。若い頃、彼はシールズの一員だった。海軍の特殊部隊。で、上の方の人だったのだと思いますけれど、彼が作戦の一環として、ある一帯を作戦行動のためにすべての障害を除去する、そのためにシールズが動いたわけですけれど、その過程で20人の罪のない、戦闘員ではないベトナム人を殺害しているんですね。私は、それこそ20年以上前ですが、CBSかなにかの番組で見たと記憶しているのですが、ボブ・ケリー自身が殺害行為をしているのではなかったかな。お祖父さんとお祖母さんと8歳くらいの小さな女の子が住んでいる家にシールズの隊員が入り込んで3人をナイフで殺害する。シールズの人殺しの仕方は、声を出させないために喉をかききるんですね。その家の3人が亡くなり、お墓の写真も見ましたけれど。作戦上必要とされれば、地域をきれいにしてしまう、邪魔を一掃してしまうために、非戦闘員の命を奪う。そのことに何の躊躇もないんですよ。それが軍隊のあり方なのだと思います。

まあ、虐殺の話をあまりたくさん聞いても辛くなってしまうと思うので。今度の虐殺も、まさに大統領の再選のためにですよ、部下の兵隊が外国で非戦闘員の人たちを拷問したり殺害したりするということが起こっているわけですね。これ以外にも虐殺の話で言うと、どうしても「社会主義と虐殺」というテーマを語らざるを得ないのですが、時間がありません。あるいは日本自身のことというのもあって、関東大震災のときの朝鮮人の虐殺問題、中国大陸での南京事件のことも言わなければならないのですが、それは別の機会にしましょう。

(『uttiiジャーナル』2022年4月10日号より一部抜粋、続きはご登録の上、バックナンバーをお求めください)

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image by: kibri_ho / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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