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中国各地で続く買い占め。1日17時間ネットで食料品確保、国民のメンタル崩壊寸前

ゼロコロナ政策によりロックダウン中の中国・上海。ニュース映像でもその様子はたびたび報じられていますが、実態は想像をはるかに超えるもののようで、現在ネット上でも買い占めが相次いでいるといいます。そこで今回は中国出身で日本在住の作家として活動する黄文葦さんが、自身のメルマガ『黄文葦の日中楽話』の中で今、上海で起きている買い占めの現状を詳しく紹介しています。

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今の時代、なぜ買い占めをしなければならないのか

買い占めが中国各地に広がる

「搶購」という中国語の言葉は、日本語で買い占め、争って買い込む、買いあさるという意味合いを持つ。今回の特集のテーマは、買い占めだ。21世紀20年代、すでにモノが非常に豊富な時代、中国の上海では、人々はネットで食料品を確保することに必死になっている。

上海の友人は、現在1日に17時間もネットで食べ物を探していると語ってくれた。中国で最も繁栄している大都市である上海では、物資が不足し、人々はロックダウンのため、オンラインで食品を買うために争っているようだ。20日以上にわたるロックダウンで、人々は心理的に疲れ果て、食料の心配をしなければならなくなった。

中国の強制的な感染対策政策により、上海では食糧配給や医療資源が不足し、2,500万人の大都市では市民の不満が噴出しているようである。

上海以外の地域の人々も可能性が高い閉鎖に備え、必要な商品を買いだめしている。北京では、ここ数週間、感染者が出たため、一部の地区が閉鎖されている。北京の一部のスーパーでは、最近、トイレットペーパーや缶詰、インスタントラーメン、米なども買い占めされているそうだ。

4月12日、上海から西へ約2時間の工業中心である蘇州では、地元当局が市内で地域PCR検査を実施すると発表した数時間後、住民がインスタントラーメンなどの食品を買い求めにスーパーマーケットに押し寄せた。伝染力の強いオミクロンが各地で発生し、上海のような厳重な閉鎖を恐れて、住民は生活必需品を多めに買い占める。

中国SNSの微博では、ネットユーザーが、冷凍ビーフミートボール、ツナ缶、歯磨き粉、ペットフードなど、ロックダウン中に買いだめしておくべきものについて情報交換している。また、家庭でできる野菜の育て方や、凍り豆腐の賞味期限を延ばす方法などのアドバイスもあった…

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買い占めの歴史は繰り返している

今の時代、なぜ買い占めをしなければならないのか。権力者の政策は人災を引き起こす要因になっていると言わざるを得ない。歴史は繰り返している。

近代史を振り返ると、パニックによる買い占めが大きな危機を招き、人間社会に大きな弊害をもたらした例が数多くある。

第一次、第二次世界大戦では、多くの国で食糧や医薬品などの必需品の買い占めが起こり、戦争が直接の原因ではない深刻な物資不足の危機が発生した。

1988年、中国での「物価改革」の政策が民衆に明らかにされ、物価上昇に恐れて、各地の民衆の買い占めが起こり、これが、やがて「天安門事件」の勃発につながる民衆の不満の大きな引き金になったと指摘する学者もいる。当方の記憶の中、幼い頃、大人がオイル、塩、米などを買占めしていた。

1999年末、2000年問題、いわゆる2000年になるとコンピュータが誤作動する可能性があるとされた問題で、世の中の人々が供給危機を恐れて、世界各地で買い占めが行われ、必要な物資が不足する危機が発生した。

2003年のSARS流行時には、中国の広東省、海南省、香港で大規模な買い占めが行われた。

そして、新型コロナの感染拡大が始まって以来、世界各地で大小さまざまな資材・食材の買い占めが行われている。

2年前、コロナ感染拡大の初期、世界中、トイレットペーパーを買占め現象が起きた。日本でも例外なく、大勢の人がトイレットペーパーを買占めていた。政府がトイレットペーパーの在庫は不足していないといくら強調しても、買い占めは続く。その時、不思議に思った。

感染症や戦争などに脅かされる現代社会では、人々は無力で、自分と家族を守ることさえできないように見える。トイレットペーパーは、安くてかさばる存在感のあるものだ。それが、すこしでも人々の安心につながるかもしれない。いざというとき、紙があれば尊厳も保てるかもしれない。

そして現在、ウクライナ戦地の人々にはトイレットペーパーがあるかどうか、そういうことを思うと、心が痛む…。

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繁栄は一瞬で消えてしまうのか?

世界の多く地域が徐々に通常の生活に戻っている中、上海では閉鎖による「買占め需要」が再び発生し、品不足が続いており、中国のゼロコロナ政策の代償を考えざるを得ない状況になっている。

また、コロナによるサプライチェーンの混乱は、すでに世界的な価格高騰を招いており、私たちはさらに貧しい未来に直面しているのではないだろうか?繁栄は一瞬で消えてしまうのか?と心配しなくてはならない。

3月28日に上海政府が区域閉鎖措置を発表すると、多くの人が食料品や生活必需品を買い求めるためにスーパーに殺到し始めた。しかし、価格は大幅に上昇し、卵30個入りの箱が35元と、前日より10元ほど値上がりしている。

一方、コロナがサプライチェーンに与える影響は、価格の高騰を招き、すでに多くの国で消費者の悲鳴が上がっている。世界の製造業の3分の1を占める中国で、特に深センや上海といった輸出入の要となる港湾都市で新たな都市閉鎖が相次ぎ、ただでさえ厳しい世界のサプライチェーンにさらに拍車がかかっている。

また、3月には香港でも買占め風潮があった。政府からのロックダウンを心配する声も多く、各地区で数日続けて駆け込み購入があり、多くの地区のスーパーや非常食店の棚が一掃され、野菜、冷凍肉、インスタントラーメン、冷凍食品、トイレットペーパーまで補充が間に合わず、買占めはさらにオンラインショップにも広がり、納期は14日後に延ばさざるを得なかったという。

上海は、お金を持っていても食べ物が買えないという状況に突入している。「多くの富を築いたが、ある日、どんな富も心の安らぎを買うことはできない、食べ物も買えないことに気が付いた」、と上海の友人が感慨深げに言った。

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買い占めを終わらせ、ロックダウンを解消させるには?

国民感情を安定させるために、政府が公共メディアにおいて、一貫したタイムリーで透明性のある情報を発表する必要がある。同時に、買い占めによる実害の事例を政府やメディアが民衆に示すことも必要だ。パニックを終わらせる鍵は透明性と政府のタイムリーな対策であり、そうでなければ噂や根拠のない憶測がパニックを激化させるだけだ。

中国政府は、メンツにこだわって政策を変える必要があることを認めないかもしれない。ウイルスと戦うためには、イデオロギーや政治的需要に囚われず、どこの国が採用した経済・生活救済策でも、実際に効果があると証明されたものは参考していくことが必要だ。

民衆の窮状と経済・生活問題を解決する最も根本的な方法は、一刻も早く、より良いコロナ対策を見つけ、社会が一刻も早く活動を再開できるようにすることである。欧米の防疫手法は中国には不向きであるかもしれないが、全国をローテーションで都市閉鎖する現在の方法は、長期的には確実に機能しないだろう。

そのため、ずっと変異しているウイルスの特性や国際的な感染の現状を踏まえ、より国民の要求に沿った、また経済的・生活的な状況に即した防疫方法を模索する必要がある。今回の感染拡大の中、上海で得られた教訓は、中国における次の防疫対策の探求に十分な示唆を与えてくれるはずである。中国製ワクチンはオミクロンに効果が薄そうだったら、海外製ワクチンを導入することも視野に入れてよい。

上海、徹底した封鎖を行っていてもなかなか収束に向かっていないようである。急速に変化する感染態勢を前にして、黒か白か、味方か敵かという二項対立を捨てて、柔軟に対策を講じるべきである。中国のコロナ対策には、より科学的で効果的、かつ経済や人々の生活とバランスの取れたアプローチを見出す必要がある。

この2年間でウイルスはずっと変異しており、現在の上海で流行しているウイルスは、2年前に武漢で流行していたウイルスとは別物であり、上海での都市閉鎖の効果は武漢ほど明らかではないかもしれない。上海の張文宏医師の見解を支持する。「コロナとの戦いが目的ではなく、民衆の生活安定が目的」ということだ。

ウイルスが常に変異している世界では、人間の思考も進化する必要があり、すべての人が意識的に自ら予防する社会の確立が必要だ。新しい感染対策を上海からスタートさせ、そして上海の「解放」を一日も早くきてほしい。

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image by: Shutterstock.com

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在日中国人作家。日中の大学でマスコミを専攻し、両国のマスコミに従事。十数年間マスコミの現場を経験した後、2009年から留学生教育に携わる仕事に従事。2015年日本のある学校法人の理事に就任。現在、教育・社会・文化領域の課題を中心に、関連のコラムを執筆中。2000年の来日以降、中国語と日本語の言語で執筆すること及び両国の「真実」を相手国に伝えることを模索している。

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