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ウクライナ侵攻で潮目が変わった。来る「超円安」と“戦争の時代”を生き残る経済理論とは

プーチン大統領によるウクライナ侵略の悪影響と円安で先行きが心配される日本経済ですが、そんな状況を乗り切ることが可能な「経済理論」も存在するようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、「円安と戦争の時代」に取るべき経済政策を具体例を挙げつつ解説。積極的な移民支援こそが今後の日本を支え、さらにこれまで抱えていた日本の問題解決にも役立つとの見解を記しています。

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「戦争の時代」の経済理論。ウクライナ戦争の推移

ウクライナ戦争で「戦争の時代」になった。戦争の時代は、それに適合する経済になる必要がある。それを検討する。

徐々にロシア軍の欠点が見えてきている。敵探査能力の欠如、通信環境の不備、現場での三軍連携ができていないことであり、この欠点をどう克服するのか、見えていない。

ウクライナ軍は、NATO軍と情報連携して、ロシア軍の動きを把握しているが、東部では把握できないでいる。このため、ロシア空軍機の制空権が確立され、空爆ができるようである。

しかし、露巡洋艦「モスクワ」が、ウ軍の対艦ミサイル「ネプチューン」により沈没した。この艦は防空レーダーでウクライナ南部を監視して、ウ軍の航空機に対する防御をしていたが、この機能をなくした。

ということで、英国供与の対艦ミサイル「ハープーン」を使う必要もなく、自国のミサイルで戦果を挙げた。露黒海艦隊の船はウクライナ沿岸に近づけなくなった。

また、これにより、南部でもロシアの航空優勢がなくなり、南部オデッサ港の攻撃が難しくなったようだ。

この中、東部へのロシア軍大攻勢が始まると欧米情報機関が予測しているが、その攻撃を邪魔するべく、ウ軍は、ロシア国内にも攻撃をしているようである。この攻撃は、中距離榴弾砲でおこなうしかないはず。鉄道の爆破は、米英宇の特殊部隊が行ったとされている。

東部でも徐々に、ウ軍は中距離砲で攻撃に転じているようだ。ロシア軍は犠牲を出しても、大軍勢で攻めるしか手がないようである。ということで、再度、キーウ侵攻と同じようなことになりそうである。

ウ軍もそのようにするためには、東部での監視レーダ網の構築が必要である。NATO軍のAWACSレーダーは東部まで届かないので、ドローン搭載レーダーという手もあるが、大型のドローンでないと難しい。

NATO軍のAWACSがウクライナ上空まで来て、東部も監視することだとは思うが、ウクライナ南部を監視していた露巡洋艦「モスクワ」の沈没で、飛行可能となったような気もする。

ロシアは、米に武器支援の停止を要求して、要求を受け入れないなら「予測不能な結果招く」と脅した。

そして、東部でのロシア大攻撃でも成果が出ないと、本当に戦術核使用の可能性が高まることになる。

第3次世界大戦にならなければよいと願うしかないですね。もし核使用なら、NATOは参戦するが、その時、中国は参戦するかどうかで、世界大戦になるかどうかが決まる。

中国が参戦しなくとも、米軍はロシア参戦になる。在日米軍はシベリア出兵ですかね。自衛隊は、後方支援や北方四島、樺太などの守備などに回ることになる。そうなってほしくないが可能性はある。

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「戦争の時代」の経済理論

戦争になると、ある国の生産能力が落ち、かつ、軍事・難民などの消費が増えることになる。このため、供給力が落ち、需要は拡大するので、戦争当該国以外では、景気が良くなるはずだ。

今、経済学者・評論家は、世界がリセッションになると、不景気になると騒いでいる。それは間違いだ。どうして、戦争特需ということを見ないのか不思議である。戦争が始まって以来、現在までに米国は50億ドルの兵器をウクライナに供与している。

対戦車ミサイルのジェベリンは、1発1,600万円もするが、5,000発以上も供与している。そのジャベリンを1ヶ月で400億円以上も使っている計算になる。

というように戦争は、当事国にとって、非常にカネのかかる行為である。T-72やMIG29を出した東欧諸国に代わりの米国製戦闘機や戦車を安値で渡している。米国軍の装備から出したので補充のため、国防総省はメーカーを呼んで、増産の指示を出している。

侵略戦争を起こしたロシアより、ウクライナを助ける欧米の方が最新鋭兵器なんでカネを使っている。戦争は最大の公共事業である。この効果は絶大だ。

米国は、現在までの供与総額0.5兆円であり、欧州諸国も0.2兆円程度の供与をしている。まだ、2ヶ月ですから、年間では5兆円以上の供与になるはず。

このため、米国では、財政拡大で国債買取の金融緩和を行い、それを中和するために大幅な利上げになる。長期国債金利も上がることになる。FRBは、今の内に資産縮小をしないと資産が大幅に増えることが予想できるので、5月から資産売却としたのである。近い将来は資産が積上がることになる。年末までには株価も元に戻すはず。

別の見方をすると、ウクライナのGDPは1,555億ドルで20兆円であり、IMFによると、この半分がなくなる。人口4,159万人で500万人が他国に避難している。ロシアのGDPは14,785億ドルで177兆円でこの20%がなくなる。ということで、35兆円と10兆円の45兆円の穴が開く。この穴埋めを世界が行うとみるべきである。2国以外での経済効果は大きいとみるべきだ。

ということで、軍需企業だけではなく、食料品、衣料品など多品目の供給が必要であり、これだけの追加供給の必要が出て、米日欧などの多くの企業に大量のカネが来るはずだ。

ロシアサイドでは、中国企業やインド企業に、大量のカネがバラかまれている。このため、中国もインドもロシアを非難しないのである。この両方の経済圏での経済効果は大きい。特にロシア経済圏の効果が大きいので、発展途上国や新興国は群がる。

今までのグローバル経済では、逆で世界全体で生産力が上がり、消費は一定なので、供給>需要になり、コストの安い国に生産が移り、このためデフレになっていた。

しかし、戦争になると、逆で供給<需要となるので、インフレになるので、物価高騰を抑えるために、自国の安定的な供給が必要になる。フェーズが移ったのだ。この指摘をしないのは、経済学者の怠慢だ。

このため、戦争の時代は、この供給<需要の状況を見越した経済対策を打つ必要がある。グローバル経済の時代は、供給力を削減するために価格競争をさせて、工場を減らす必要になる。このため、自由化が必要で価格競争させることが正解になる。

しかし、戦争の時代は供給<需要になり、供給力を上げる必要になる。この時は、安定供給の方が正解で、自由化は間違いになる。

戦争の時代になり、本格的な統制経済の時代になったのである。このコラムでは、前から統制経済になるとしてきたが、とうとう、その時代が来たようである。

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このため、供給安定のためには、価格を自国のコスト水準まで上げて、自由競争ではなく、安定供給のために寡占化させることが正解になる。電気の小売り自由化を即座に止めて、九電力会社の地域優位を復活させる必要がある。

ベンチャー電力企業が小売りするなら、電力を自前か再生エネルギー企業と個別契約して、小売り電力と自前電力が等価までしか小売りを認めないことで、自由卸市場電力は短時間の不足分しか買えないようにするしかない。

その上に、九電力会社の原子力発電を再稼働させて、地域優先で電力の安定電力確保を義務付けることである。または、小売りの自由化をなくしていくことだ。戦争が続く限り、安定供給力重視の政策で行くことである。

その他のエネルギーも供給を増加させることである。太陽光発電、風力発電などの一層の拡充が必要である。石油やLNGなどの輸入は、公的企業が一括で行うことである。その企業を政府が統括して、価格をコントロールするしかない。

木材も足りない。国内の林業を活性化させる必要がある。国内林業を育成することである。若者を都市から山に呼び戻すことである。機械化と林道の整備が必要であり、木材工場も必要になる。

そして、輸入木材も価格管理するべきである。安定供給するためには、輸入木材に国内木材と同価格になるようにするしかない。勿論、木材切り出しなどの合理化・機械化を行い、価格を下げる努力をしても埋められない部分の価格差を無くすことである。

食糧も同じであり、供給力の拡充が必要であり、安定価格制度を作り、耕地面積の拡大と機械化による収益の拡大を政府が支援することである。補助金ではなく、広大な耕作面積を容易に確保でき、機械化投資の支援を行うことである。

海外から輸入する食料品は、国内生産価格より安いなら、差額分を政府が逆ザヤになる時に補填のために、貯蓄することである。物価統制の仕組みを作り、安定供給と価格安定を優先に経済政策を打つことである。

もう1つ、円安の時代になった。戦争と円安で、工場の日本回帰を促進する必要がある。このためには、労働者不足解消が必要であり、このためには、ミャンマーやウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど専制的支配者と専制主義国からの攻撃から逃げる人たちを、優先的に日本に来てもらえる環境を整える必要がある。難民支援を積極的に行うことが日本の問題解決にも役立つことになる。

この人たちとともに、高学歴の人たちも入ってくるので、この人たちが日本で企業を起こすための資金も集められる仕組みが必要である。英語環境を整える必要もある。日本は安全であり、環境を整えると、多くの人たちが日本を目指してくることになる。

東京を国際都市にするという構想は、進めるべきである。観光としては、多くの地点が手を挙げているが、ビジネス環境は東京しかできないかもしれない。

円安の時代では、インバウンドも有望である。観光資源が豊富にあり、日本人の感覚やおもてなし力は高いレベルにあるからだ。

円安と「戦争の時代」に合う経済政策が必要であり、その構築を早期にするべきである。しかし、統制経済化するのは、世界的に供給が足りないものだけである。G7としての地位を守るために、自由貿易を堅持することは国益上、必要である。

この体制は、民主主義国と専制主義国との戦争が続く間、続くことになり、相当長期になると思われる。民主主義国のリーダーとしての地位を確保する必要にもある。

さあ、どうなりますか?

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image by: Club4traveler / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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