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貧しくなった日本復活には“健全な”金権政治と「族議員」が必要な訳

国内の産業空洞化も厭わず中国を筆頭とする外国に投資し、気づけば先進国の中でも際立って低成長の国になってしまった日本。追い打ちをかけるようにコロナ禍とウクライナ戦争で、進めてきたグローバリズムも行き詰まってしまい、対応が急務となっています。まずはどこから手をつければいいのでしょうか。今回のメルマガ『j-fashion journal』で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、国内企業が献金しにくい制度により親中国の政党や政治家が増えたと指摘。健全な金権政治をもとにした健全な族議員による国益のための政治に舵を切る必要があると主張し、その理由を説明しています。

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健全な金権政治、健全な族議員を復活しよう

1.なぜ、親中議員が生れたのか?

最近、親中政党、親中議員が増えたと言われます。昔は親中議員なんていなかったのに、なぜ、これほど多くの議員が親中になってしまったのでしょうか。

それは親中になった方がお金が儲かるからです。例えば、日本の中小企業の成長を推進したとしても、政治家にはお金が入りません。それは、政治家や政党への企業献金が禁止されているからです。それと、企業が政治献金しても免税になりません。3割程度の寄付金控除が認められるだけです。

欧米では、政党や政治家だけでなく、NPO、NGOへの寄付も免税になります。つまり、政府に税金で納めるか、それとも特定団体に寄付して使ってもらうかという選択肢があるのです。

しかし、日本では選択肢はありません。全て、一度政府に納税して、政府がその中から補助金、助成金等を配布するのです。お金の流れを見ると、日本は全体主義国家です。したがって、中小企業の団体が、中小企業のための政策を推進してくれる政党に寄付することができません。

一方、外国政府、諜報機関等には工作活動費があります。例えば、中国政府は中国企業や中国人に有利な法律を作ってもらうための予算を用意して、工作活動をしています。

政治家のパーティー券を大量に購入したり、政治家を中国に招待して接待したり、名誉を与えたり、必ず儲かる商売を紹介します。つまり、中国のために働くと議員に個人的な利益を与える仕組みをつくり出すのです。

日本企業のために働いても個人的に儲からない。でも、中国企業のために働くと個人的に儲かる。そうなると、日本の議員でありながら、中国の利益のために働くようになります。

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2.アメリカは健全な金権政治?

マスコミは常に「政治と金」問題に敏感に反応します。しかし、それは日本国内の利権に限定されています。海外政府の利権に関しては、「政治と金」と言わないのです。

政治と金の問題が最も多く出てくるのは選挙の時です。もし、金の掛からない選挙の仕組みを作れば、政治と金の問題の相当部分が解決します。最近、流行っているデジタル技術を使って、選挙DXを行えばいいのです。

まず、ポスターをデジタル化する。デジタルサイネージでもいいですよね。そうすれば、ボスターを人海戦術で張り出す必要がなくなります。それで、各政党、立候補者には共通のフォーマットの元に、政策を掲げてもらう。また、オンライン会議の仕組みを作って立会演説、討論会の画像を公開する。

こうすれば、選挙の経費はかなり合理化できます。しかし、これは既存の議員にとっては困った事態です。ポスターを貼るには組織力が必要であり、ポスターをなくすと組織力を持たない立候補者と同じになってしまう。これは嫌なんですね。

しかし、選挙費用を考えても、DXを実行すれば、税金の節約になるでしょう。既存議員の便宜を図るのか、それとも税金の無駄遣いを減らすのか。新しい技術に背を向けて既得権にしがみついている人を選ぶのか、それとも新しい仕組みを理解して、新しい政治を目指す人を選ぶのか、という選択肢です。

米国の大統領選挙は、完全に金権政治です。お金を使って、広告を出し、大規模なイベントを開催します。お金が続かなくなって立候補を断念する人も少なくありません。それでも、アメリカのマスコミは「政治と金」を問題にしません。資本主義の世界では能力のある人が経済的な成功を収めるものだ、と考えれば、お金のある人がお金を使って運動するのは正しい行為なのです。

但し、様々な規則と制約があります。例えば、敵対する海外勢力とつながっている人は立候補できないというルールもあります。つまり、国益を損なうような立候補者は法律によって排除するという考え方です。

日本は「政治と金」というイメージばかりが論じられますが、国益を損ねることや、敵対する海外勢力との交流等については管理が甘いように感じます。それだけでなく、国防とかスパイ防止等についても多くの政治家は関心を持っていません。そんなことをしたら、自分の利益が損なわれると思っているのかもしれません。

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3.族議員はスペシャリスト

昔は、族議員と呼ばれる議員が多く存在しました。族議員とは、特定の政策分野に精通して関連する省庁の政策決定に強い影響力を及ぼし、関連業界の利益を擁護してそれらの代弁者の役割も果たす国会議員およびその集団の俗称だそうです。つまり、特定の業界を代表するロビイストが議員になったという存在です。

日本でもロビイング活動が行われますが、多くは陳情と呼ばれます。陳情はその業界団体等の代表者が行うもので、陳情のプロは存在しません。するのかもしれませんが、一般的でないのは確かです。

族議員も「政治と金」を代表する存在とされました。特定の業界と癒着して、便宜を図る存在だからです。しかし、日本の国益につながる産業が存在することは当然ですし、特定の産業の振興を優先する政治家がいるのも当然です。

地方選出の議員は地元への利益誘導を要求されます。そして、特定の産業の利益を代表する議員もいるのです。族議員のメリットもあります。それは、特定の産業や業界に詳しいスペシャリストであるということです。族議員も金権政治と同様、その存在が悪なのではなく、活動のルールが必要だということです。

更に言うなら、新しい産業が生まれるなら、新しい族議員の育成が必要であるということです。族議員のデメリットは、国益に貢献しない業界、既得権のある業界だけが優遇され、新しい産業、ベンチャー企業の成長を阻害する可能性があることです。

これを改善するには、国益にかなう産業、企業等を支援する政治家が評価されるような仕組みが必要です。あるいは、政治家自身が明確な産業ビジョンを表明して、それを有権者に問うことを義務づけることです。そして、特定の産業、企業からの献金を可能にしてそれを公開することです。

政治献金が悪いのではなく、政治献金の仕組みがオープンでないことが問題なのです。政治資金の使い途を全て公開し、政治献金についても誰がどれだけの金額を寄付したのか、その献金については、どんなことを期待するのかを公開しても良いかもしれません。少なくとも個人的な利益、私利私欲を追求するような議員を見つけ出し、落選させる仕組みは必要でしょう。

スペシャリストの族議員が消え、同族議員が増えました。あるいは、国内産業を支援する族議員が消え、海外企業を支援する外国族議員が増えてしまいました。政治を良くするには、金を否定するのではなく、健全な活動ができるようなルールを明確に設定しなければなりません。

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4.国益優先の政治を!

今となっては、「政治と金」の問題もカワイイものでした。所詮国内の問題であり、国内の金や力を競い合っていただけです。その頃は、海外に日本の利権を売り飛ばしたり、個人の利益のために日本の国力を削ぐようなことはなかったからです。

その国内の金の流れを止め、政治と金の問題を煽り、政治資金を税金で賄うことで、政治家は特定の利益代表から外れていきました。そして、海外の工作資金が流れ込み、国益を損なう政治が蔓延してしまったのです。国益とは、江戸時代に生れた言葉で、領内の自給自足経済を基本にした考えだったようです。つまり、国益という言葉には、アンチグローバリズムの意味があります。

日本経済が低迷を続けているのは、海外投資をあおるグローバリズムが普及し、国内投資が減少し、海外生産によるデフレスパイラルと製造業の空洞化が進み、更には金融健全化の名目で市場に流通する貨幣量を制限したためです。日本は世界で唯一経済低迷を続ける国になってしまいました。

コロナでグローバリズムが行き詰まり、中国生産の見直しが始まりました。更に、ロシアの武力侵攻で世界のエネルギー需給バランスが崩れています。そして、ロシアへの経済制裁がブーメランのようにドル危機に跳ね返ってきました。

世界は全てが変わろうとしています。そして、世界各国は次の時代に有利な位置に付こうと考えています。軍事力の強い国は軍事力で、製造業の強い国は製造業で、金融の強い国は金融で自国に有利な世界体制を構築しようとしています。

その中で、日本はどうすればいいのでしょう。私は、コロナ禍で日本の強みが見えたような気がします。それは、日本は何でも作れるということです。自動車も飛行機もロケットも工作機械もワクチンもマスクも作れます。伝統工芸からハイテク製品まで全て作れるのです。問題は価格競争力ですが、逆に言えば価格だけが課題です。もしかすると、それは為替が解決してくれるかもしれません。

もしかすると、天然資源も本気で開発すれば海外に依存しなくても良いのかもしれません。それだけのポテンシャルがあります。そんな日本を欧米は常に抑圧し、日本が本来の力を発揮しないように制約をかけていました。それでも、世界が混乱すればするほど日本の強みが出てくると思います。

問題は、日本人がその能力を国益のために使うことです。日本が自給自足できるような方向で産業を成長させることです。そして十分に力をつけた上で、世界のパワーバランスをコントロールしましょう。

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■編集後記「締めの都々逸」

「金と政治は 切っても切れぬ うまくつなげて 国益に」

国内でお金を回しましょう。国内で自給自足できるように産業を保護しましょう。日本が豊かになったら、議員にメリットが生れるような仕組みを作りましょう。

現在の日本は、中国を豊かすることが儲けたいという勢力の方向に従った結果です。この動きは、政府・官僚・財界が連携して行いました。米国も日本を素通りして中国に投資して儲ける政策を選びました。その動きに、日本も追随しました。日本を貧しくして、中国を豊かにして儲けよう戦略に、なぜか日本も嬉々として参加したんですね。

恥ずかしながら、私自身もグローバリズムの推進が正しいことだと思っていました。でも、コロナで目が覚めました。「あれ、何のために、中国生産と中国市場進出を進めたんだっけ?儲けるためだったのに、儲からなかったよね」という事実に気がつきました。

更に、この体制を構築するために、様々な戦略が展開されていたんですね。その一つが、政治と金の問題です。日本国内で政治と金を分離してしまう。それで日本の政治を形骸化し、政治家を親中に取り込んでしまう。見事にやられました。我々も気がつかなかった責任があるよね、とも思っていますけど。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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