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ようやく世間も気づき始めた?「いい円安」などほとんどない現実

20年ぶりに1ドル129円台となるなど、120円台後半が続く円安。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあり物価高が急激に進む「悪い円安」との言説が広がっています。そもそも自国通貨の価値が上がるのは良いことであるはずなのに、円安を良いものとしてきたのは誰なのでしょうか。今回のメルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』では、著者で精神科医の和田秀樹さんがその“黒幕”を輸出業者、政治家、金持ち、テレビ局と指摘。円高を「暗黒」と呼び、国力を上げる機会を逃し、庶民にとっては本当の暗黒、金持ちには天国の日本ができあがったと解説しています。

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いい円安なんてあるのか?

急激に円安が進み、物価高に直結していることもあり、またウクライナ情勢にそろそろあきてきたのか、話題になることが増えた。

この円安について「悪い円安」ということばがしきりに使われる。これまでの円安は輸出業者を助け、景気浮揚効果もあったので「いい円安」だが、今の円安は輸入品の物価を上げるし、輸出企業も海外に生産拠点を移したので輸出も増えないから「悪い円安」だそうだ。

私は基本的にいろいろなものにはいい側面も悪い側面もあるから両方を検討しなければいけないという考えの持ち主だが、円安については、コロナ自粛と同じく、いい側面のほうがずっと少ないと考えてきた。

輸出業者は確かに儲かったが、円安というのはダメな会社を甘えさせるという側面も大きい。昔なら1ドル80円でも売れて、利益が出せる車を作れていた会社が、120円でないと売れない車を作るようになっている。ここがドイツとの大きな差で、実際、ドイツは外貨準備高をどんどん増やしている。

私はこのコラムでも何回か書いたことがあるが、1ドルが360円だった1971年から、1995年には1ドル80円になるのに24年しかかかっていない。確かに円高不況と言われたが、その当時、日本の車も家電品も今よりはるかに競争力があった。このまま競争力を高めていれば、今頃1ドル20円である。

1ドル20円であれば、日本のGDPはアメリカのGDPを上回る。1ドル20円はさすがに難しくても50円であっても、日本のゲームや食文化(コロナですっかり破壊されたが)であれば1ドル50円でも勝負できる。

1ドル50円であれば、原油価格も今の3分の1になる。武器だって同じ値段で3倍近く買える。はるかに日本の安全保障のためにはいいはずだ。

さらに中国よりもGDPが多くなる。外交的プレゼンスもずっと高まる。このくらいの円高であれば、中国やアメリカの会社は日本の会社も、あるいは都心の土地も、観光地や水資源もなかなか買えないだろう。国益を考えれば円高の方が、メリットははるかに大きいのに、GDPの10%にも満たない輸出業者のいいなりになって円安になり、今頃慌てているというのが真相だろう。

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ついでにいうと、民主党政権時代が暗黒だったという人の多くは、あの頃の円高を問題にする。通貨が高いということは、その国が買われているということなのに、なぜか暗黒時代の扱いだ。

確かに円が高いと外国人からみて割高になるので株価は安くなる。それで民主党政権の時代は暗黒の時代と言われるのだろうが、日本の場合、年金も保険も株価に連動していないから株が安くても庶民は困らない。要するに金持ちにとって暗黒政権だったのだが、テレビ局は金持ちの味方なので暗黒政権と呼ぶのだろう。失業率も減らし、実質賃金も上げ、今よりはるかに一人当たりのGDPも大きかったのに暗黒政権と呼ばれ続ける。この国は金持ち天国だ。

実は、円高は、日本企業にとっては外国の会社を買いやすくなるというメリットがある。ただ、経営者の脳が足りない場合は、そこが思いつかないから輸出で儲けられないと焦ることになる。

以前、対談したことのある元財務官の榊原英資さんによると、円高の是正はドルを買えばいいので簡単だが、円安の是正は難しいらしい。そこで協調介入が必要なのだが、アメリカが応じないので、しばらく円安は続き、140~150円になってもおかしくないという。(メルマガ『和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」』2022年4月23日号より一部抜粋)

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image by: Shutterstock.com

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高齢者を専門とする精神科医、学派にとらわれない精神療法家、アンチエイジングドクター、そして映画監督として、なるべく幅広い考えをもちたい、良い加減のいい加減男。

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