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プーチンが放つ核の標的は「東京」か。日本を“敵国認定”した独裁者の大暴走

5月9日の対独戦勝記念日を前に、ウクライナ東部への攻勢を強めているロシア軍。明確な国際法違反であるプーチン大統領の行動に対しては、我が国も西側諸国として足並みを揃え強い制裁措置を取りましたが、ロシアによる軍事侵攻はこの先どのような展開を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、自身に寄せられている「嫌な想像を掻き立てるような情報」を元に、ロシアによる日本本土攻撃の可能性を検証。さらに戦勝記念日以降のプーチン大統領の動きを予測するとともに、核戦力使用の有無についても考察しています。

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ウクライナ戦争が引き起こす日本の危機

「日本は本気でロシアを敵に回す気か?」

ロシア政府内にいる別の友人がそう尋ねてきました。

GW中にはついに、ロシア政府は岸田総理をはじめとする政府幹部に対してロシアへの入国拒否を打ち出しました。それに先立って、先日の日本政府によるロシア人外交官8名の国外追放措置への報復として、駐ロシア日本人外交官8名の国外追放が申し渡されました。確か今月10日までに国外への退去が課せられます。

先日もお話ししたとおり、外交官の国外追放措置は最大級の抗議と制裁措置と言えますが、それは同時に直接的な交渉の窓口を閉鎖することも意味し、今後、日ロ間の直接対話の窓口が閉ざされることを意味します。

とはいえ、まだ首の皮一枚残っているとすれば、双方ともに駐在大使の在留は許していることですが、在ロシア邦人保護も含め、随分とロシア国内の情報収集能力は低下することになるでしょう。

今回、欧米諸国(G7)と足並みを揃える形で、日本政府は迅速に対ロ制裁を打ち出し、対ロ非難も繰り返していますが、これまでの有事の際の対応と比べると、はるかに明確にサイドを執った対応に見えます。

ロシアとのエネルギー協力もあり、かつ北方領土問題というハイレベルな外交問題も抱える中、それらの窓口を閉じる覚悟をしてまで、日本政府はロシアに対する徹底的な反対に打って出ることを選択しました。

これまで“どっちつかず”な態度を示して、真正面からの対立を避けるような外交を展開してきた姿勢から大きな方向転換をしたことになります。NATOの加盟国ではないにもかかわらず、NATOの一連の会議にも参加し、対ロ非難を繰り返す姿は、ロシア政府にとっても驚きだったようです。

「もう北方領土(クリル諸島)を餌に日本を釣ることはできなくなった」

先ほどのロシア政府関係者が対話の中でつぶやいた言葉です。

先週号でも書きましたが、ロシア人特有の対外感情、つまり「だれも自分たちのことを理解しようとしない」という感情は、ロシアに批判的でかつ抵抗する者はすべて“敵”と考える傾向が強いため、今回の日本政府からの措置は、ロシア政府としては、日本を敵国扱いすることを意味し、これまで全面的な対立を止めてきた最後の砦が崩されることになります。

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しかし、“日本を敵対視する”という姿勢は、実は真新しいものではありません。

このメルマガをお読みいただいている皆さんの中で、どれほどの方が【ロシアが保有する弾道ミサイル(核兵器搭載)のターゲットに日本の主要都市が入り続けていること】をご存じでしょうか?

それはつまり、現在、臨戦態勢に入っているとされる核ミサイルのターゲットは、ウクライナや東欧諸国、バルト三国や欧州各国という近隣諸国・地域だけではなく、アメリカはもちろん、日本や中国に向いています。

そして今回のウクライナ戦争でも実戦で使用された極超音速ミサイル(核搭載可能)は、今の日米協力の下で存在する安全保障網では探知も撃墜もできないことが分かっているため、ロシア(または中国)からの攻撃の折にはほぼ確実に大きな被害を受けることになります。

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ロシアの北海道への侵攻が最近ニュースやSNS上で騒がれているように見受けられますが、そちらよりも、地上部隊を使わないミサイルによる攻撃のほうがより可能性が高くなります。その場合は、北海道ではなく、恐らく東京をはじめとする主要都市周辺でしょう。

その兆しが見えるのは、私たちの目が(メディア)東部ドンバス地方やマリウポリに向かう中、ポーランドとの国境近くにある主要都市リビウへのミサイルによる攻撃や、時折行われる首都キーフへのミサイル攻撃、そして南部の港湾都市オデーサへのミサイル攻撃などでしょう。

同様の距離をターゲットとする場合、もし極東ロシア地域(例えばシベリア、ウラジオストックなど)から戦術核ミサイルであれば、十分に日本の主要都市に届く計算になるそうです。そして、モスクワ近郊の基地や、ショイグ国防相とその家族が潜んでいるとされるウラル山脈付近の基地(核シェルター付近)からであれば、長距離弾道ミサイルでの攻撃も可能になります。

最近、ウクライナへの核兵器使用の可能性が高まったとされる理由に使われるものの一つに、現場と国防省・軍参謀本部との間での交信記録がありますが、その内容は「人はどの道いつかは死ぬのだから。今、ロシアの敵に対して本格的な攻撃を行わなくてはならない」というものがあったそうですが、もし同様のロジックがロシアの“敵国全般”に対して使われるとしたら、アメリカなどとの全面的な核戦争も辞さないという意味にも解釈できます。

その場合、ロシア政府の目から見て公然と敵に回った我が国もターゲットになる可能性は高いと思われます(とはいえ、欧米主催の第2次世界大戦の戦勝式典で、広島と長崎に投下された原爆の映像が映し出された際、十字を切ったのは唯一プーチン大統領だけだったそうで、核兵器使用による被害の大きさに対しては恐らく理解しているはずですが)。

私や周辺のただの被害妄想か、恐怖心からくる認識であればまだいいのですが、もしロシア・プーチン大統領が心から孤立を感じ、「だれもやはり理解してくれない」という猜疑心と被害妄想に押された場合、自国の運命と道連れに大量破壊兵器を使用するかもしれません(あくまでも私の想像ですが…とはいえ、一応、嫌な想像を掻き立てるような情報が寄せられています)。

ついでに日本つながりで気になる兆候があるとすれば、一昨年くらいからプーチン大統領とその周辺(メドベージェフ元大統領など)が言及する“ロシア人とは誰を指すか”という内容です。

多くはウラジオストックで開催される“東方経済フォーラム”の場などで触れられますが、プーチン大統領が「北海道にいるアイヌ民族は、もともとはロシア人である」という発言をしたり、「ロシア語を話す人はすべてロシア人である」という発言をしたりするのは気になります。

同様の内容をメドベージェフ氏なども別の機会に繰り返しますが、ちょっと拡大解釈しますと、クリミア半島侵攻時やかつて南オセチア(ジョージア)、そして今回のウクライナ東部(ドンバス地方)への“侵攻”を行った際の正当化の理由は、「同胞ロシア人の保護」であったことを考えると、ちょっと背筋が寒くならないでしょうか。

またプーチン大統領自身の発言かどうかは確認できていないのですが、最近、日本がロシアに対して“敵対的な”態度を明確にしたという認識が広がってから、「日本は北海道において、ロシア系民族であるアイヌ民族を迫害し続け、抹殺しようとしている」という論調が目立つようになってきているそうです。

私自身が確認したり、耳にしたりしている内容ではないのですが、もしこの情報が本当だとしたら、ロシアの攻撃の方向が北海道・日本にも及ぶ可能性を指摘する情報も、あながち妄想では片づけられないようになってしまいます。

非常に懸念すべき内容ですし、もちろん日米政府はすでに対応を協議しているものと信じたいですが、皆さんはどうお考えになるでしょうか?

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さて、憶測といえば、今、メディアを賑わせているのは、5月9日のロシア(ソビエト連邦)の対ナチス戦勝記念日が、何かのXデーになるのではないかとの報道ですが、実際にはどうなのでしょうか。

1つの可能性は、ロシアがこの日までにウクライナ東部(ドンバス地方)を制圧し、マリウポリも掌握して、ウクライナ戦争の勝利を内外にアピールするというものです。これについては、確かに最近になってロシア軍による攻勢が激化しているのですが、その日までの“制圧”は困難になってきていると思われます。

別の可能性としては、英国の情報筋(特に国防省)が語りだした情報ですが、【5月9日の式典で、プーチン大統領が対ウクライナ宣戦布告を行う】というものです。

これはウクライナ全土に対する宣戦布告なのか、それともウクライナの後ろ盾になっている諸国(特にNATO)に対する宣戦布告となるのか、意見が分かれています。

前者だとしたら、これまでの2か月以上の戦況と何が違うのかという疑問が湧きますが、同時にウクライナに対する攻撃のレベルが上げられるというようにも解釈できます。言い換えると、使用する武器のレベルが上がることを意味し、それがWMD(大量破壊兵器)の使用につながるのではないかとの意味です。

これについては、ロシア側からの情報が取れていないのですが、ウクライナ側および周辺国の情報では、「これまで以上の被害と犠牲を覚悟しなくてはならない」という内容が多く届けられてきています。

それは大量破壊兵器の使用まで覚悟した内容なのか、それとも通常兵器のレベルが上げられるのか、意見が分かれていますが、どちらにせよ、ロシアによるウクライナへの攻撃がレベルアップされ、さらに激しさを増すだろうという見通しを表していると解釈できます。

そして、宣戦布告を行うことで、ロシアサイドでは国民総動員がかけられ、ウクライナ侵攻の目的が、【ロシア人の保護のための派兵】から【ウクライナ全土の掌握によるロシアの国家安全保障の確保】にすり替えられることを意味することになります。

大いにあり得ることですが、後者の可能性も消せない兆候も出てきています。

それは5月4日にショイグ国防相が国家安全保障会議で行った発言にある「NATOによるウクライナへの兵器の運搬は、明らかなロシアへの敵対行為とみなし、それへの報復・攻撃は正当化される」という内容です。

アメリカや欧州各国、そして日本からウクライナに提供される武器弾薬を含む支援の拡大と、レベルアップがロシア側を刺激し、さらにロシアの国家安全保障が脅かされているというイメージが強まっている表れとも理解できます。

そしてそれが、以前よりプーチン大統領などが繰り返していた「ロシアの国家安全保障を脅かそうとする勢力は、予想以上の対価を支払うことになる」という脅しに繋がり、ショイグ国防相の発言を受けて、それが実行に移されることを示したと解釈できます。

もしポーランドに集結しているNATO勢力に攻撃が及んだり、すでに実行されているようにモルドバへの攻撃が激化したりした場合、NATO軍はどのように対応するのでしょうか。

プーチン大統領が宣戦布告を行う相手がウクライナとその友人たちだとしたら、NATOとしては宣戦布告を受けて何らかの対応を迫られることになります。自らに攻撃が及ばない限りは、ロシア側からの脅しはスルーするかもしれませんが、もし偶発的にでも被害を受けた場合には、NATO側の自制の限界がやってくることになるでしょう。

そして仮にNATOおよびウクライナがロシア領内に向けて攻撃をかけるような事態に発展したら、それはもう戦争の“国際化”に繋がり、それはすなわち第3次世界大戦の勃発と言えるかもしれません。もちろん、そんなことは望みませんが。

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ここで戦争の国際化と敢えて表現したのは、現時点までは、ウクライナの背後にNATO勢力が控えていることは明白でも、戦場はウクライナ国内に限られており、戦火がロシアや周辺国に及んでいない状況(注:モルドバやジョージアの親ロシア派エリアには攻撃が及んでいますが)が、ウクライナ周辺国に拡大することを意味しています。

そうならないことを切に祈りますが、いろいろと提供される情報を総合的に分析した場合、あまり楽観視できる状況でないことは皆さんと共有しておきたいと思います。

もしここで戦争の国際化のベクトルが、西側だけでなく、ロシア領土を超えて東側にも広がるような事態になったら、その先にいるのは、日本です。

通常、戦争の戦略においては、戦端を複数開くことは決して賢明だとは考えられていませんが、もしミサイル戦力の活用による多方面への同時攻撃を意図していたら…。

他国が報復としてロシアとの交戦状態に入る中、一応、自衛戦力に限られている我が国はただ戦禍に見舞われるだけなのでしょうか。

プーチン大統領に近しいとされる数人曰く、先述の“プーチン大統領の十字”のエピソードを受けて、日本に対して核戦力を使用することは考えられないとのことですが、追い込まれたリーダーがどのような行動に出がちかという傾向を見てみると、不安は払しょくされることはありません。

現在、核廃絶に向けた国際的なキャンペーンを広島から拡大する取り組みのプリンシパル・ディレクターを務める身としては、あまり核の脅威について熱く語ることは避けたいところなのですが、規模の大小に関わらず、核兵器が使用されうる可能性がこれまでになく高まっているように感じています。

このように話していると、きっと「日本が何をしたっていうんだ!悪いのはウクライナに攻め込んだプーチンだろう?」というご指摘を受けるかもしれませんが、日本がG7と歩調を合わせてロシアに課した経済制裁は、解釈によっては【大量破壊兵器の一種】であり、ロシアの企業や金融機関、ロシア人の生活、そして生命さえも破壊し、罪のある者のみならず、無実の一般市民にも致命的な打撃となる攻撃だという意見がちらほら出てきていることに、私たちは注意しなくてはなりません。

ラブロフ外相は「5月9日は通年通り対ナチス戦勝記念日であって、今回のウクライナ戦争とは無関係」と述べていますが、私は何らかのギアチェンジが起こるXデーになり得ると考えています。

その内容が本当は何なのか。それを現段階で知っているのは、恐らくプーチン大統領のみなのかもしれません。

しかし、私たちは、ウクライナ戦争は決して遠くで起きていて直接的に被害を受ける戦争ではないという考えを改める必要性に迫られていることに気づき、起こり得る危機に備える必要があると感じています。

私のカレンダーを眺めてみた時、5月9日の予定が多くの協議要請で仮押さえされていることがとても気になりますが、ゴールデンウイークが明ける5月9日、そしてその後の毎日が平和であることを祈っています。

私が今回描いた様々なシナリオが全てただの杞憂に終わりますように。

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image by: Andranik Ghazaryan / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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