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プーチンが見せた核戦争“3つの兆候”。もう「まさか」は通用しない

ウクライナ侵攻から2ヶ月半が経つものの、未だ思った通りの戦果を挙げられず苛立ちつばかりのプーチン大統領。かねてから口にしてきた戦術核の使用は、果たしてあり得るのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』では著者でジャーナリストの内田誠さんが、ここに来てロシアが見せ始めた核兵器使用を前提とした3つの動きを紹介。さらに事態がここまでに至った背景を解説するとともに、今後の趨勢を占っています。

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核戦争の危機につながる3つの出来事:「デモくらジオ」(5月6日)から

核戦争の危機につながる出来事でどんなことが起きているかというと、3つほどあります。

1つは先ほどのカリーニングラードで、実はイスカンデルという核弾頭搭載可能なミサイル、超高速で飛ぶ奴ですが、その模擬試射という、実際に撃つのではなく、撃つ形を実験としてやりました。

それから2つ目は5月9日の対独戦勝利パレードに、イリューシン80という飛行機を登場させる(編集部注:9日の本番は航空ショーが中止となりました)。これ、ロシアとして初めてのことでして、定評のある旅客機ですよ。これを改造して、大統領が乗って指揮をする、政治および軍事の指揮を行うための飛行機。4機あるということです。アメリカも同じようなものを当然持っていますが、核戦争でワシントンがやられた、ロシア側で言えばモスクワがやられたときに、政治の中枢に核が落とされて防げなかったということになると、一気に指揮命令系統が毀損されてしまう。それを避けるために空中に政府の最高意志決定部門が移動するということ。

これ、核戦争前提の装備なんですよ。政府専用機みたいな簡単な話ではなくて、軍事的な、つまり兵器の一種と言っていいので。つまり米ロ双方とも、お互いの国土の近いところの海底に原子力潜水艦を待機させていますので、その潜水艦に対して核ミサイル発射の指示を出すことができる飛行機。これが出てくるんですって、パレードに。これ凄いんですよ、「終末の日の飛行機」と言われている。つまり核戦争を前提とした装備です。イスカンデルも核弾頭搭載可能なミサイルです。

そして3つ目。これ一番新しい話ですけど、日本海で、今度は船から潜水艦を狙うミサイル、これの実験をして成功した。つまり船からボーンとミサイルを打ち上げ、それが海の中に入っていって、海中の標的を破壊する、届くという実験に成功したとロシアの国防省が発表しています。

これで3つそろいましたよね。いずも核戦争を前提とした話ですよ。SLBMで核ミサイルを撃つことの出来る原子力潜水艦、これが潜んでいるわけですけれど、それを見つけて破壊するという意味ですから。

つまりは抑制的な要素がどこにもない、むき出しの本格核戦争をイメージさせるようなことをロシアはやっています。で、こうしたことの背景として、これは大分前からずっと申し上げていましたけれど、大量の最新兵器というか、今のウクライナ軍に必要な兵器をいわゆる西側がポーランドあたりからウクライナに送り込んで最前線に届けていると。それによって戦況が大きく変わっていく可能性があるんですね。

既にキーウの包囲戦に失敗したロシア軍ですけれど、そのときは有名になったジャベリンとか、他の国にも色んな対戦車兵器があるのですが、対戦車兵器で一説には400輛とかの戦車が破壊されて、木っ端みじんにやられているんですね。そこで、残った兵をかき集めて、東部の、つまりなんとか戦争目的を(一部でも)達成できそうな、勝利宣言につながるような東部の支配を目指して、大戦車群で襲いかかると。それが今の状態。

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そこに西側の最新兵器が届くのか届いていないのか、どうなのかということが問題になるわけですが。あのような重たい兵器を運ぶには鉄道が一番なんですが、その鉄道を集中的にここ数日ロシア軍はミサイルなどで攻撃している。かなり成功しているみたいです。ところが155ミリ榴弾砲という、かなり遠くに大砲の弾を撃ち込むことの出来る、しかも誘導弾…すごいね、大砲の弾を誘導できるんですね。そういうものを撃てるような兵器が一説には90%以上(前線に)届いているという話もあり、それがにロシア軍の後方を破壊するなり直接戦車隊をぶっ壊すなどということになると、これはもうロシアは終わってしまう、「終了」という感じになりかねない状況だと思うんですね。

こういう戦争のあり方というのは、ロシア側からすれば「代理戦争」だと。自分たちロシア軍はウクライナ軍と戦っているのではなくて、NATOと戦っている。もっとハッキリ言えば米軍と戦っていると。これは米ロ戦争であるというふうに言っているようですけれど、そのような見方があることについては全くその通りだと思いますね。だからこそ、ロシアは色々なちょんぼ、失敗をその戦争でやってしまっていて、大変な数の将校が亡くなっていたり、司令官クラスが大勢死んだりしている。どうなっているのだこの軍隊は?という感じになっていますけれど、いよいよピンチがやってくるタイミングが近づいているのではないかという気がしています。

国民の方も、それはなんとなく分かっていて、この先、総動員体制を組まれると出国できなくなる可能性があるということで、1月から3月までの間になんと388万人がロシアを出国したんだそうです。もちろん、毎年、一定数は出ていくわけですし、そういう人もいるわけですけれど、大変な増え方になっている。もう理由もハッキリ見えていますよね。そりゃ兵隊に行きたくないですよ、誰にしても。

で、そういう状態で最後の決戦に臨もうとしているロシア軍というのは、これからまだ色々なことがあるでしょうけれど、アメリカの国防長官が言っていたように、この戦いを通してロシア軍を弱体化させると。弱体化って、なんか「弱くなるのね」という感じに聞こえますけれど、実態としては崩壊するということですよね。弱体化した軍隊って、多分ダメでしょう。そのような軍隊の本来の目的からすれば、存在意義のないものになる、それがロシアということになると、それでも、核兵器を持っているわけですよね。

私は全然知らなかったのですが、広島型長崎型の原爆、15キロトンくらいだったと思いますけれど、アメリカやロシアが持っている使えそうな小さな核兵器、戦術核と言われるもの。これは数分の1くらいらしいですね。でも核でしょ。どんな言い訳とか、どんな工夫をしようが核爆発ですから、当然放射能の汚染もあるわけですし、大変な熱と光とで大勢の人が亡くなることに違いはない。人の頭の上に落とせばということですよね。

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で、これを使う可能性が強まっていて、使われた場合にどうするかということをおそらくNATOや米国はシミュレーションしているのだと思います。あの、各テレビとか、YouTubeなどを含めてね、ロシアの専門家というのはいらっしゃいますよね。元外交官とか研究者とか。この方どうなんだろう?…という人を含めていますよね。それから笹川財団の人とかね、あれも地域研究をやっている人ですよね。非常に目立つのは防衛省の防衛研究所の研究員の人たち。元々自衛隊出身だったりする人たち。元自衛隊のどこかの参謀だったような人とか、統幕議長、河野さんみたいな人もいますけれど、冷静に軍事を語れる人がいないものかなと思うのですが、皆さんはどうでしょうか。

これも明るい話かどうか分からないのだけれど、国連のグテエレスさんが努力をされて、例のマリウボリの製鉄所にこもっている民間人、2回で、いや実質1回だったようですが、100人くらいが外に出たということのようですが、新たに500人が脱出したというニュースが入っています。これ、ロシア側の管理に置かれるわけですよね。選別収容所みたいなものが出来ていて、4カ所も、そこで親露的な人なのか親ウクライナなのかで人を分け、ウクライナ側に関しては尋問したり拷問したりしているのではないかという話が出てきています。結局はロシアの支配地域に送ることになるのではないでしょうか。ですから、それでも地下に何ヶ月もとどまって、衛生の問題もあるし、食事の問題もあるし、何よりその中にいて攻撃を受けるという、大変な圧迫の元で暮らしていた人たちが太陽を一応浴びられる場所に出たということは歓迎すべきことなのかもしれませんけど、そこから先のことも本当はグテエレスさんに頑張って欲しかった気がします。それか一番今新しい話ですね。もしかしたら5月9日にそのことを大宣伝しよう、利用しようとしているのかもしれませんけれど。多分、やるでしょう。

※ マリウポリの500人救出の話は50人の間違いだったようです。最初は500人と言っていましたが、メディアも今は知らん顔して「50人」と。

(『uttiiジャーナル』2022年5月8日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください、初月無料です)

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image by: Sergey Petrov / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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