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日本人が中国に対して抱く“勘違い”が「最大の中国リスク」という皮肉

習近平国家主席や政府要人の野心を隠さぬ発言等もあり、中国に警戒感を抱く日本人も増加してきてはいるものの、未だ時代錯誤的なイメージを以って中国にシンパシーを示す向きが存在するのも事実です。そんな「勘違い」が中国リスクを招くと警戒するのは、ジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さん。宇田川さんは自身のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』で今回、彼らが口にしがちな中国に対する代表的な2つの思い込みを紹介するとともに、そのどちらもが完全なる誤りであることを証明しています。

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ウクライナ情勢を見て思う「我が国は生きのこれるのか?」日本のリスク・中国編

前回は北朝鮮のリスクを考えてみました。

ある意味で、北朝鮮のリスクは基本的にミサイルの危険と、北朝鮮が蝶番となってロシアと中国を動かすような問題の二つがあるのではないかということを見てきました。

実際に、北朝鮮のミサイル実験に関して言えば、トランプ大統領がアメリカの大統領として戦後初めて北朝鮮の首脳と会談をした前後は、ミサイルの実験は全くなかったのです。

しかし、バイデン大統領になり、また日本の首相が岸田内閣になってから、ミサイル実験が再開し、今年になってから金正恩総書記の発言もかなり過激な内容になってきていて、戦争を想起させるものが増えてきています。

この発言が、日本に向けられたものではなく、韓国(北朝鮮とは休戦中)なのかあるいはアメリカに向けられたものであろうことはなんとなくわかります。しかし、北朝鮮の国力ではこれらの国を占領することは難しい気がします。

さて、では何故北朝鮮がここまで強気なのでしょうか。

これは当然に北朝鮮が強気に発言し、アメリカや韓国などが北朝鮮に攻めてきたとしても、それを守る同盟国がいるということになります。それが中国とロシアということになるでしょう。

さて、私の見るところ、北朝鮮はロシアと中国の「接着剤」的な役割をしているのではないかとみています。

北朝鮮は、戦後ロシアに多くの労働力を派遣しており、サハ共和国のダイヤモンド鉱山なども初めのうちは北朝鮮労働者が多く開拓していたのです。

韓国の労働者の多くがドイツに出稼ぎに行っていて、朴正煕大統領(朴槿恵の父親)がドイツに行った時に演説をしたことは有名ですが、似たようなことで北朝鮮の多くはロシアに行っていたのです。

ある意味で、日本人のシベリア抑留者の代替を務めていたと考えてもよいのかもしれません。

そのように考えれば、金正日(現在の金正恩の父)が初めに結婚し、金日成(金正恩の祖父)に「女優などを嫁にするな」と怒られて追放された成恵琳(金正男の母)は、ロシアに亡命し、モスクワ郊外で生涯を終えています。

金正日が総書記になっても事あるごとにロシアに行っていたのは、この成恵琳の墓参や、隠し子(金正男の弟・金正恩よりも年長であるといわれていますが)に会いに行っていたといわれているのです。

そのように、現在の金正恩の先代の金正日の時には、様々に交流があり、その為に軍事安全保障などの面ではロシアと深い繋がりがあるのが北朝鮮になります。

一方、日用品、特に生活物資や食料品ということになれば、当然中国との間でやり取りをしています。

中朝国境にかかる「中朝友誼橋」において、数十両の貨客列車が通り、その中に様々な日用品や燃料が満載されて運ばれています。

そのような意味で食料などの平時の物品に関しては北朝鮮を支援しているのは中国であるということになるのです。

要するに「北朝鮮のミサイル」というのは、この中国とロシアがバランスよく北朝鮮に影響を及ぼし、なおかつアメリカとの関係が悪化しているという状態でなければ、ミサイルの実験は行われないということになります。

単純に「ミサイルの材料」つまり「ロケットブースターやコンピューター端末」があり、なおかつ「燃料」がなければミサイルは飛ばないわけであり、ロシアから前者が、中国から後者が輸入され、なおかつ追加が入る見込みがなければミサイルは飛ばないのです。

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つまり、ミサイルが多く飛ぶということは、中国とロシアがアメリカ、または韓国など極東の西側諸国に対してなんらかの敵対的な感情を抱いているということになるのではないでしょうか。

そのように考えてみると、ロシアは、現在のウクライナ侵攻を見れば、明らかであり解説の必要はありませんし、また中国に関してもトランプ大統領の時代から経済制裁を行い、ファーウェイの副社長が拘束されるなど、様々な問題が出てきております。

では、日本にとって中国はどのような問題点があるのでしょうか。ここからは中国について「日本のリスク」ということについて、考えてみたいと思います。

日本と中国の関係といって、すぐに「論語」や「遣唐使」など、古代の話を持ち出す人がいます。

実際に、現在の地理的な位置関係にある中国に位置していた古代国家との間には、確かにそのような関係があったということになりますし、また、日本は仏教の伝来などを含めて、様々な影響を受けたことは歴史的事実でしょう。

当然にそのことには日本の文化のルーツなども感じることができますので、その一端は傾聴に値すべきところがあるのかもしれません。しかし、現在の中国は、文化大革命で「批林批孔運動」を展開し、また史的唯物論を声高に叫んでその内容を実践し共産主義革命を行った国であり、その主導的立場にあった共産党が現在も一党独裁している国家であるということを考えなければなりません。

つまり、日本のルーツになる中国は、現在の共産党政権とその支持者たちが積極的に自分たちの手でその文化と文明を滅ぼした国であるということも言えるのです。

私が大連にいた1997年から2000年の4年間、北京や大連、上海などの本屋を回りましたが、その中において「論語」という本は存在しません。

また、現在日本やアメリカで展開している「孔子学院」という、アメリカではスパイ組織として名高い場所において論語の教育を受けることはできないのです。

史的唯物論を唱えている政権が精神道徳を学ぶ機関を海外に出すはずがなく、孔子学院などという名前を使っていても、それは「客寄せのための便宜」であって、中身が伴っているものではないのです。

もっと言えば「孔子」という名前ですら、「唯物的価値」で使っているということにすぎません。

要するに、現在の中国に論語など日本人の多くが尊敬するであろう道徳的、または思想的活のある中国は存在しないということになるのです。

さて、中国に対しての日本のリスクは、まず、この「中国との関係における日本人の勘違い」ということが最も大きいのかもしれません。

日本人のこれらの思い込みというのは、本当に厄介であり、またなかなか修正できない物であるということになります。

論語の言葉などは全く知らない、その価値観も共有できない相手に、日本人が論語的価値を持って敬意をもって接するという、他から見たらかなり滑稽な状況が生まれているにもかかわらず、その日本人は全く気付いていないということになるのです。

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もう一つの勘違いは「中国という国家の広さと人口から見た市場的規模」という意味で経済的な価値を感じているということでしょう。

特に日本企業は「政治と経済は別」という、完全に日本人的な感覚をもって接してしまい、そのうえで、完全に日本人の弱みに付け込まれて、そのまま利用されて捨てられるという例が、数十年続いているということになります。

ある意味で「日本人の仲間意識」というような感覚は、中国人からすれば、「格好の餌食」でしかないということになるのではないでしょうか。

中国は2014年の三中全会において「健全に共産党に管理された市場経済」という言葉を使って様々なことを行っておりますが、その中で市場経済を政治的に利用し、また管理するというようなことを行っているのであり、経済に政治が介入するということが前提になっています。

2012年に野田佳彦内閣が尖閣諸島を国有化した時に、中国は突然理由なくレアアースの禁輸に踏み切りました。

中国はそもそも世界経済がどのように回っているかをわからず、中国が原材料、日本で半製品化したものがヨーロッパなどで製品化され、それが中国に戻って販売されているということがわからず、結局自分で自分の足をたべているような状況になっていました。

そのような結果論ではなく、「日本の尖閣諸島国有化」という政治状況で、貿易を注視するということで経済の自由が守られないということから、この時に多くのヨーロッパやアメリカのブランドの工場の多くが中国からミャンマーやバングラディッシュに工場を移したのです。

しかし、なぜか日本だけはそのまま残っているというおかしな状況になっています。

それも、日本が直接の被害者であるにもかかわらず、日本はなぜか中国にリスクを感じない世界経済からすれば「ずれた」経営者が多くなってしまっているということになります。

単純に「勘違い」しているだけではなく、中国という国家の仕組みを全くわかっていない。

実際に改革開放経済をして、1990年代くらいまで、GDPが毎年10%上昇しながら、人件費は全く上がらなかったということになります。

要するに景気が良くなっていながらまったく人件費が上がらなかったということで、ここにも中国の政治が人民の給与にまで介入していたことが明らかになります。

しかし、日本人の経営者の多くは「人件費が安い」という数字だけで飛びついてしまい、そのままそのイメージで現在も存在するということになります。

もっと致命的なのは、2001年以降人件費が上がり、現在では日本よりも人件費が高い年もあるにもかかわらず、なぜか中国にこだわり続けている企業が少なくないのです。

経済効率性も政治的な問題もすべて関わっていながら、ほぼ宗教的妄信で中国神話を信じているような企業経営者がいることではないでしょうか。

ここまでくれば、何らかの弱みを握られているのか、あるいはハニートラップにかかったかと疑われても仕方がないのではないでしょうか。

また、そのような疑いをかけられるような状況を中国は作り出してきたことも事実なのです。

このように、まずは日本のリスクの第一は「中国という国の内情や、政治状況を正しく理解していない」ということになります。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年5月9日号より一部抜粋。続きはご登録の上、お楽しみください。初月無料です)

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image by: Alexander Ryabintsev / Shutterstock.com

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