自民党の圧勝が濃厚とされる今夏の参院選で、昨年の衆院選同様の大躍進が予想される日本維新の会。そんな維新を巡ってはネット上を中心にさまざまな不祥事が取り沙汰されていますが、大手メディアが取り上げることはほぼないのが現状です。その裏にはどのような力が働いているのでしょうか。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、維新が圧倒的な力を持つ大阪府・大阪市と読売・朝日両新聞社との「特別な関係」を紹介。報道機関の使命を放棄したかのような両社を強く批判しています。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2022年6月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
なぜ日本維新の会の不祥事は報じられないのか?
前号では、日本維新の会の創設者であり、元大阪府知事、元大阪市長の橋下徹氏の「上海電力問題」について、ご説明しました。
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上海電力問題というのは、ざっくり言えば次のようなことです。
橋下氏が大阪市長時代、大阪市が計画していたメガソーラー事業に関して、中国の上海電力が突然、事業参加したこと。日本と中国との関係は微妙なのに、社会インフラの根幹を外国企業に任せるのは、政治家として不見識であること。
この上海電力問題は、かなり大きな政治問題のはずなのに、大手メディアはまったく取り上げていません。それどころか、大手メディアは日本維新の会の不祥事に関しての報道が異常に少ないのです。
たとえば、愛知県知事のリコール不正事件では、日本の維新の会の元県議が首謀者だったのですが、日本維新の会との関りはあまり報じられませんでした。またこのリコール不正事件に関しては、リコール運動を大阪府知事の吉村知事なども支持しており、日本維新の会の責任は免れないところなのに、メディアが責任を追及することは一切ありませんでした。ほかにも、維新の会の議員は、たくさんの不祥事を起こしていますが、これもあまりメディアでは取り上げられません。
大阪は、新型コロナにおいて日本最悪の被害を出しているにも関わらず、吉村知事の人気は爆上がりするという怪現象が起きています。維新の会は、大阪で吉本興業と提携しており、吉村知事は大阪のテレビ番組に出まくって、吉本芸人からヨイショしまくられているということを前にこのメルマガでもご紹介しました。維新の会のメディア操作はこれだけではありません。それを今回、ご紹介したいと思います。
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読売新聞と大阪府が連携協定を結ぶという愚行
2021年12月のことです。大阪府と読売新聞大阪本社が、情報発信や教育・人材育成、子ども・福祉、地域活性化、環境など8分野についての包括連携協定を結んだという報道がありました。大阪府が報道機関とこういう協定を結ぶのは初めてです。
この協定の内容は、大阪府は、読売新聞の朝刊に入れられる生活情報誌や同社のSNSをイベント関係の広報などで使用し、読売新聞側は児童福祉施設への新聞の寄贈を行うというものです。また大阪万博でも協力し合うということになっています。
包括提携というと、聞こえはいいですが、要は府の広報事業などの業務を読売新聞が請け負うということです。
また大阪万博での協力関係も、読売側にとってみれば、ビジネス的に美味しいものです。
読売新聞側からは、福祉施設への新聞の寄贈などを行うということになっていますが、その負担額は屁のようなものであり、利益関係で見れば、大阪府から読売新聞に巨額のお金が流れるということです。そのお金は税金なのです。
もちろん、読売新聞から見れば、大阪府は上得意客ということになります。おいそれと、悪いことは書けません。これまで以上に忖度するようになるということです。
この協定書には「取材、報道、それらに付随する活動に一切の制限が生じないこと」と、府の同社に対する「優先的な取り扱いがないこと」を確認する内容が明記されているそうです。
が、そういうものは、形式的にいくらでも書けるし、抜け穴は簡単につくれるのです。これまでも、維新の会の不祥事は、なかなか大手メディアが取り上げないという現象が起こっていました。
そもそも、なぜわざわざ「連携協定」など結ばなくてはならないのでしょうか?新聞、テレビなどのメディは「権力を監視する」という重要な役目があるはずです。連携協定などを結べば、その目が緩くなるのは自明の理です。メディアは最低限の道義として、政党や国、自治体などと特別な関係を結んではならないはずです。これは民主主義を守る上で、最低限の条件です。
しかも大阪府や大阪市というのは、維新の会という一つの政党の色が非常に濃い自治体です。ここと連携するということは、一つの政党と連携するというふうに、取られても仕方のないところです。もちろん、そういうことは絶対あってはならないことです。
みっともない朝日新聞の転向
また朝日新聞も維新に篭絡されているメディアの一つです。が、これについては、維新側というより、朝日側に責任があります。非常に情けない事情により、朝日新聞は維新に篭絡されているのです。
以前、朝日新聞は維新の会や橋下徹氏に対しては、批判的なスタンスを取っていました。朝日新聞系列の雑誌「週刊朝日」などは橋下氏を糾弾する記事を書き、裁判沙汰になったこともあります。この「週刊朝日」の記事は橋下氏の出自を愚弄するという下品な内容があったため、「週刊朝日」側の全面的な敗北となっていました。
その朝日新聞ですが、2012年ごろから維新の会に対して批判的スタンスを取らなくなったのです。実は2012年には、朝日新聞と維新の会は、共同プロジェクトともいえるような事業を開始しています。
維新の会の橋下氏が大阪市長になった直後の2012年6月、大阪府と大阪市の統合本部会議で、中之島が「大阪・新大阪」などとともに、重点的に開発される地域に選定されたのです。
その当時、朝日新聞の子会社である朝日ビルディングは、中之島に「中之島フェスティバルタワー」「中之島フェスティバルタワー・ウェスト」の完成を間近に控えており、まさに渡りに船の朗報でした。
「中之島フェスティバルタワー」「中之島フェスティバルタワー・ウェスト」は、老朽化した大阪朝日ビル、朝日新聞ビルを取り壊し、200メートルのツインタワーを建てるという社運をかけたプロジェクトでした。
この朝日新聞の「中之島プロジェクト」を大阪府と大阪市が強力に援護したことになるわけです。以降、中之島は急速に開発され、新しい商業地域、オフィス街として大阪の新名所的な存在となっています。
橋下氏や維新の会は朝日新聞を支援するつもりで中之島の再開発を進めたわけではないかもしれませんが、結果的に朝日新聞を大いに助けることになったわけです。
あまり知られていませんが朝日新聞というのは、日本有数の不動産業者です。現在、朝日新聞は販売部数が低迷しており、不動産からの収入に頼っています。
朝日新聞は先にご紹介した大阪の中之島フェスティバルタワーや東京銀座朝日ビルディングやを所有しています。東京銀座朝日ビルディングは、世界最高級のホテルである「ハイアットセントリック」が、入っています。ハイアットセントリックは、これがアジアで初めて進出です。
また中之島フェスティバルタワーには、これまた日本で最高級クラスのホテルの「コンラッド大阪」が入っています。朝日新聞社には、これらの不動産事業の収入が、子会社からの配当金という形で入ってきます。現在、朝日新聞の利益の約半分はこれらの子会社からの配当によるものとなっているのです。
朝日新聞は新聞の売上は激減していますが、不動産収入によって純利益は増えているのです。また朝日新聞の社員というのは、メディアの中でも最高峰の高給です。朝日新聞の社員の平均給料は、1,200万円ちょっとです。これは、日本のサラリーマンの平均の約3倍です。これらの高給は、新聞の売上だけでは到底賄えません。不動産の収入があって初めて成り立つのです。
つまりは、朝日新聞の記者たちにとっては、不動産収入は自分たちの高給を維持するための大事な武器なのです。そして不動産収入を確保する上で、維新の会は大事な協力者なわけです。
朝日新聞といい、読売新聞といい、この節度のなさ、誇りのなさはどういうことでしょう。日本にはこんな情けないメディアしかいないのです。我々はこんな国に住んでいるのです。朝日新聞の方、読売新聞の方、もし良心が残っているのなら、ぜひ弁明をお聞きしたいものです。
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