2年経ってもトランプという“悪霊”を祓えないアメリカ共和党の重症度

 

「MAGA度」を競い合う各候補

各州での共和党予備選では、「ニューズウィーク」日本版5月31日号の表現によれば、「MAGA的な主張を押し出す候補者が乱立し、『MAGA度』を競い合った。候補者のほぼ全員がトランプ流のけんか腰の政治スタイルを実践し、不法移民を厳しく批判し、20年大統領選は『盗まれた』と主張した」。

これは5月3日に行われたオハイオ州の共和党上院予備選についての記述。結局、トランプの「お墨付き」を得て予備選を制したのはベストセラー作家のJ・D・バンスだったが、彼は20年大統領選では「私はトランプが嫌いだ」とまで言って散々批判していたというのに、最近になって恥ずかしげもなくトランプ礼賛に転換した。

MAGAは言うまでもなく、2年前のトランプのスローガン「Make America Great Again」の頭文字である。もし本当にそれを望むなら、広い世界観と長い歴史観を背景に脱冷戦とポスト資本主義のグランドデザインを立ててそこへ向けて全国民を動員する一大ムーブメントを始めるしかないはずだが、それをせずに、単に「一番でなきゃダメなんですか」状態に転がり込みつつある現状に感情的に反発して鬱憤晴らしをするだけなのがトランプ流だったが、その米国社会の底辺からの病的な情動化はますます深まっているということである。

5月17日のペンシルベニア州の共和党上院予備選では、8人の候補者のうち反トランプ派はベテランのロビイストであるクレイグ・スナイダーだけで、彼はまったく支持が集まらずに早々と昨年9月に撤退。残った7人がトランプの「お墨付き」の獲得競争を演じ、テレビでも人気の医師メフメット・オズがトランプの支持をもぎ取って候補者の座を確保した。しかし彼もつい最近までMAGAを痛烈に批判し、またオバマケアと人工妊娠手術を支持していた。

バンスやオズのこの予備選での成功は、酷い無節操ぶりを晒してもトランプのお札はそれを上回るご利益があることを示しているように見えるが、それは共和党の内輪で通用する話で、中間選挙本番でより広い支持を集めて民主党候補に勝てるという保証にはならない。

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