中国が南太平洋を重視する2つの理由
では、なぜ中国は南太平洋を重視するのだろうか。そこには日米豪印クアッドが進める自由で開かれたインド太平洋構想に対抗する狙いがある。世界地図をみれば明らかだが、南太平洋島嶼国が点在する範囲は西太平洋でも大きな割合を占め、西太平洋での影響力拡大を掲げる中国にとっては極めて重要な場所にある。また、オーストラリアは南太平洋を自らの戦略的要衝と位置づけているが、オーストラリアと米国の間に楔を打ち込むことで、クアッドの連携を壊したい思惑もあることだろう。
また、中国が南太平洋を重視するにはもう1つ大きな理由がある。それは台湾の存在で、今日でも南太平洋にはパラオやナウル、ツバル、マーシャル諸島の4カ国が台湾と国交を有している。中国としては、近年キリバスとソロモン諸島が国交を台湾から中国に切り替えたように、同4カ国へ経済支援などで圧力を強めることで国交を切り替えさせ、台湾の存在を南太平洋から消したい狙いがある。
今日、日本でも台湾有事の恐れについてかなりメディア報道が増えてきたように思うが、南太平洋は正に中国と台湾、米国やオーストラリアという形で大国間対立の新たな主戦場になりつつある。
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