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ただバイデンに会いたい一心で。金正恩がミサイルを連射しまくる理由

6月5日にはわずか35分の間に8発もの短距離弾道弾を連射するなど、2022年に入り驚異的とも言えるハイペースでミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮。国際社会からの批判を覚悟で危険行為を続ける金正恩総書記ですが、その狙いはどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、米有力紙の記事を紹介しつつ、北朝鮮の指導者の思惑を推測。その上で、金総書記が「一か八かの行動」に出る可能性を指摘しています。

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北朝鮮、金正恩は何を考えているのか?

異常なペースでミサイル発射を行う北朝鮮。最近ではコロナの蔓延も認めています。

金正恩は何を考えているのでしょうか。

本日はニューヨークタイムズにジャン・H・リー氏が書いた寄稿記事をご紹介します。「金正恩が北朝鮮のコロナ発生を知らせたがるのには理由がある」という6月7日の記事です。

金正恩氏は5月12日、初めてフェイスマスク姿でテレビに出演し、全国的なコロナ封鎖を発表した。

 

この2年以上、北朝鮮はコロナを排除することに成功したと主張し、不必要だと言って何度もワクチンの提供を拒んできた。それが先月、一変した。

 

北朝鮮の国営メディアは一連の緊急報道で、特定できない熱病が「爆発的に」広がっていると発表したのだ。400万人以上の患者が報告され、数十人の死者が出ている。

 

予防接種を受けておらず、栄養不足の2,500万人の国民にとって、恐ろしい事態である。

 

では、なぜ今、コロナの発生を認めるのか。

 

首都平壌で患者が急増したため、その発生を認めざるを得なかったということも考えられる。しかし、バイデン氏が最近、韓国と日本を訪問する直前に感染を発表したのは、政治的なタイミングも関係している可能性が高い。

 

金正恩は二重の戦略をとっているのだろう。

 

ミサイル発射によって米国や韓国との緊張関係を維持し、核兵器の増強を正当化しより強い立場に立つためだ。

 

そしてコロナを認める発言は、北朝鮮自身メンツをつぶさずに中国から人道的支援やその他の物資を確保するための手段である。

 

金正恩は、中国からのこれまでのワクチン提供を拒否していたのだ。

 

発生を発表したわずか数日後、北朝鮮は中国・瀋陽に貨物機3機を送り緊急物資を引き取ったという。

 

援助が必要なのは確かだ。北朝鮮は1990年代の大飢饉以来、慢性的な食糧不足に悩まされている。果物、野菜、肉はほとんどの人にとって贅沢品であり、栄養失調は、私が現地で取材した際に全国で出会った多くの人々の、しみのある肌、こけた頬骨、痩せた体型に表れている。

 

過去2年間の国境閉鎖により、食料、医薬品、その他の物資の流れが遮断されたため、生存はより厳しいものとなっている。

 

北朝鮮と米国の新たな協議の見通しは、今のところ立っていないようだ。バイデン氏は、ドナルド・トランプ氏のように金氏に求愛することはないと明言している。

 

バイデン氏が韓国を訪問した際、ある記者が大統領に、金氏へのメッセージはあるかと尋ねた。彼の答えは、「ハロー、ピリオド(終わり)」という簡潔なものだった。

 

1990年代の大飢饉の際、北朝鮮は前例のないほど国際的な食糧支援を呼びかけた。その結果、米国をはじめとする支援によって、北朝鮮は核交渉のテーブルにつくことができた。

 

今、北朝鮮が直面している「コロナ」も同じような状況なのだろう。

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解説

ここからは私の推測になります。

北朝鮮が今年になって発射したミサイルは17発に及びます。異常なハイペースです。

純粋な実験というよりも、誰かに「こちらを見ろ、相手にしろ」と泣き叫ぶ子供のように見えます。これは何を求めているのでしょうか?

まず訴えかけたい「相手」は誰なのかと考えました。

考えられるのは、米国、韓国、日本、そして中国です。もちろん、中国は北朝鮮側にたつ国ですが、ミサイルは方向を変えれば中国北京をターゲットにもできます。米国向けと見せかけて、実は、中国の一部の幹部に向けてのアピールであることも考えられます。

しかし、私は、このアピールはやはり米国に向けてだと思います。

金正恩の権力基盤がどれぐらい強いのかわかりません。ただ、だれの目からみても明らかな事があります。彼が3代目だという事です。国民も軍もみんな知っています。

ですから、国が共産党の立派な理念を唱えても、「結局、金家で世襲しているじゃないか」と思われます。金正恩が立派な指示を出しても「結局、3代目だろ」と思われます。

それをだれよりも感じているのは金正恩自身でしょう。自分がいないところで、国民や軍の幹部が、自分をどのように言っているか、痛いほどわかるはずです。

その意味でトランプとの会談は彼にとって面目躍如だったはずです。それは誇るべき彼の功績です。あのトランプと親しげに話す姿を国民や軍に見せつけることで、みんな彼に一目おかざるえなくなったのです。

実際にどのような話し合いをしたかなどは関係がありません。彼がトランプと二人だけで会談した。そしてその後、仲良く握手していた、という事だけが重要なのです。

それが彼の国内の権威、権力基盤の大きな支えになるのです。

しかし、そのトランプは退任して、バイデンが大統領になりました。トランプとの約束はもう無意味です。

だから、彼はもう一度、バイデンと会いたいのです。二人だけで密室で話をして、その後、みんなの見えるところで握手したいのです。それが彼の権力基盤を少なくともバイデン大統領の退任までは担保するでしょう。

それがために狂ったようにミサイルを打っているのです。

ところが、その彼に対してバイデン大統領は冷淡です。「ハロー、終わり」ですから。

今後もコロナの蔓延で食糧危機は深まり北朝鮮国民の不満はさらに高まるでしょう。

やっぱり3代目はダメだという批判も感じるでしょう。そのプレッシャーに耐え切れずに彼が一か八かの行動にでるかもしれません。そしてその時は近いように見えます。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』6月19日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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