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North Korean Soldiers. North Korea big Armed Force and Pyongyang Dictator Kim Jong Un used Military Power to threaten a Nuclear War against the United States. Moscow 29 August 2015.

韓国人が今最も注目。新政府が乗り出した「黄海射殺焼却事件」の真相究明

2020年9月に黄海上にて韓国人公務員を北朝鮮軍が射殺し、焼却した事件を覚えているでしょうか。とても大きなニュースとなり、韓国だけでなく日本にも戦慄が走りました。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では、韓国在住歴30年を超える日本人著者が、新政権となった韓国で本事件への動きがあったことを語っています。

北による韓国公務員銃撃そして焼却事件、真相が究明されるか

2020年9月に発生した黄海上において韓国人公務員を北朝鮮軍が射殺し焼却した事件をご記憶のことと思う。今回はこの話題である。

「韓国軍は様々な情報を精密分析した結果、北朝鮮が北朝鮮側海域で発見された韓国国民に銃撃を加え、遺体を燃やす蛮行を犯したことを確認した」

2020年9月22日に発生した西海(黄海)公務員殺害事件と関連して(当時の)国防部は、同年9月24日「西海韓国国民失踪事件関連立場文」をこのように発表した。

国防部は「韓国国民を対象に犯した蛮行に対するすべての責任は北朝鮮にあることを厳重に警告する」とも述べた。

国防部はこのような立場文を発表しておきながら、記者団対象の質疑応答で「殺害された公務員が越北(北朝鮮に帰順すること)を試みたものと推定される」などと発表した。

その後、北朝鮮当局は翌日、対南通知文を通じて「約10発の銃弾で(北朝鮮への)不法侵入者に向かって射撃した。北朝鮮軍は不法侵入者が射殺されたと判断し、侵入者が乗っていた浮遊物は現地で焼却した」と主張した。

国防部の立場は3日後の2020年9月27日に覆された。「遺体焼却が推定され、正確な事実確認のために(北と南の)共同調査が必要だ」としたのだった。

国防部のこのような立場の変化には文在寅(ムン・ジェイン)政府の大統領府の指針が通達されたためであることが分かった。

(尹新政府の)国防部は「2020年9月27日、青瓦台国家安保室から事件関連主要争点答弁指針を下達され、最初の発表とはちがった立場を(当時の文政府の国防部が)メディアを通じて説明したもの」と6月16日明らかにした。

それと共に「その後、大統領府国家安保室は国防部の分析結果と北朝鮮の主張に違いがあり、事実関係究明のために南北共同再調査などを要求したが、北朝鮮当局は今まで何の返事もない状態」と話した。

(尹政府の)国防部は事件発生から1年9か月後の同日(つまり2022年6月16日)、西海公務員殺害事件と関連して遺族に謝罪した。

国防部は「(再調査の結果)行方不明公務員の自主的な越北を立証できなかった」とし「国民に混乱を与えた点について遺憾に思う」と述べた。

さらに「海洋警察の捜査終結と連携して関連内容をもう一度分析した結果、行方不明公務員の自主的な越北を立証できず、北朝鮮軍が韓国国民を銃撃して殺害し遺体を燃やした情況があったことを明確に申し上げる」と述べた。

大統領室(尹新政府)は2020年の西海公務員殺害事件と関連し、「遺族の真相究明の要求に国家がきちんと応じなかった」文在寅政府をターゲットにしたわけだ。

大統領室関係者は16日午後、定例会見で「国家の最も大きな義務は国民の生命と財産を守ること」と述べた。この、文政府が下した判断を覆したことについてこの関係者は「新旧(政府の)対立ではなく、遺族の真相究明要求に関して(尹)政府が回答したというのが正しい」とした。

同関係者は「民間人が非人道的な蛮行に見舞われたなら、国家は真相究明の責任がある」、「民間人が北朝鮮軍によって無慈悲に殺害され、遺体が燃やされるという非人権的な蛮行が行われたが、明確な証拠もなく自ら越北したというフレームのために事件がウヤムヤにされたなら、そこに何らかの意図(つまり文政府が北の肩を持つという)があると考えなければならない」とした。

新政府の海洋警察庁と国防部は、2020年9月に西海の北端、小延坪島海上で行方不明になった後、北朝鮮軍の銃撃で死亡した海水部公務員A氏が自ら越北したと断定する根拠を発見できなかったと明らかにした。

海洋警察と国防部は2年前、軍当局の情報内容とA氏の債務関係、当時海上漂流予測分析などをもとにA氏が自ら越北した可能性が高いとしていた。

これと関連して大統領室関係者は「(故人の)積極的な越北意図を確認できなかったというのが今日発表の核心」とし、「海洋警察の追加調査を通じて、今日発表が出たもの」とした。

さらに、「ユン・ソンヨル大統領が大統領候補時代、『遺族の無念さがあってはならない』と数回強調した」、「国民の知る権利のレベルでも必ず真相究明が行われなければならないという考えから今回の発表となった」とした。

同関係者は「国家がきちんと応じなかったらしいので、(文在寅政府の)北朝鮮に対する融和的態度が反映されたと見ているのか」という記者団の質問に対して「自ら越北の意図が確認されていないにもかかわらず、当時、自ら越北した可能性が高いと発表したことにいかなる意図があるのか、明らかにするのがとても重要だ」、「まだその意図は私たちが確認できていない」とした。

一方死亡した海洋水産部公務員A氏(死亡当時47歳)の遺族が、文在寅元大統領を殺人幇助の容疑で告訴する案を検討中だと明らかにした。

A氏の実兄である李羅津(イ・レジン)氏は同日、TV朝鮮とのインタビューで、「文前大統領と当時国防部長官などに対し、殺人幇助と職務遺棄の疑いで告訴する案を検討している」とし「文在寅政府が国家安保室の主要記録を大統領記録館に移管し隠蔽した」と指摘した。

イ・レジン氏は「惨憺たる気持ちだ。政権が変わったら、数か月で(政府の)立場が完全に変わってしまった」とし「今やっと正常な国家システムが作動した。

これまで(政府が)隠蔽して操作した部分は犯罪だと思う。犯罪と確信するため、告訴・告発を当然しなければならない」と述べた。

A氏の妻B氏も「海洋警察が恨めしい」として「誤って捜査をした人々が正当な処罰を受けることを願う」と話した。当事者の妻や実兄などの遺族たちは、17日に記者会見を開き立場を明らかにした後、A氏の葬儀を行う予定だ。

実際17日、遺族たちは殺害された公務員A氏の息子が尹錫悦大統領にあてて書いた感謝の手紙を妻B氏が読み上げた(ときおり涙にむせびながら)。なぜ「感謝」か。尹錫悦大統領になったゆえに、「越北」という汚名を払しょくできる機会が回ってきたからだ。

越北(北に帰順する)というのは、現在の韓国にとっては最高に不名誉な行為として捉えられるものだ。遺族たちはこの2年間、大切な家長をなくしたばかりか、その汚名を背負って生きてこなければならなかったわけだ。その苦しみはいかばかりであったろうか。

しかし今や新政府となり、そのときの真相が暴かれようとしている。越北の確たる証拠もないのになぜに越北の汚名を自国民に着せたのか。そこにはそれなりのわけがあったはずだ。そうしたことが今や明るみに出ようとしている。

政治報復などという次元でないことは明らかだ。事実を究明し、わけもなく汚名を着せられた人は、その名誉を挽回すべき権利がある。黄海射殺焼却事件の真相究明は、今韓国全員のホットポテトとなっている。

(無料メルマガ『キムチパワー』2022年6月19日号)

image by: Flight Video and Photo / Shutterstock.com

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韓国暮らし4分1世紀オーバー。そんな筆者のエッセイ+韓国語講座。折々のエッセイに加えて、韓国語の勉強もやってます。韓国語の勉強のほうは、面白い漢字語とか独特な韓国語などをモチーフにやさしく解説しております。発酵食品「キムチ」にあやかりキムチパワーと名づけました。熟成した文章をお届けしたいと考えております。

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【著者】 キムチパワー 【発行周期】 ほぼ 月刊

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