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プーチンが真似てクリミア併合に成功。中国考案の「超限戦」とは?

全世界の目が向けられてる、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。しかし今この瞬間も、中国による台湾併合計画は着々と進められていることは間違いないようです。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』ではジャーナリスト・作家として活躍中の宇田川敬介さんが、中国人民解放軍により考案された「超限戦」を紹介するとともに、習近平政権が台湾に対して現在仕掛けている、武器を用いない「平時の戦争」について解説しています。

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風雲急を告げていた中国の台湾侵略計画の新たな展開3:中国と中国共産党の現代から見る中国共産党のハイブリッド戦略

この件に限らず、何か計画があった場合、その計画に対して「当初の計画」をまずは考え、その上で「事件や事故によって何がどのように変化したのか」ということを考えてゆくということになります。

今回の内容に関しては、中国共産党は当初から台湾の統一ということを狙っていたことは間違いがありません。

そもそも「国共内戦」という戦争があり、一時日本との戦いで停戦状態になりましたが、日本が戦争に敗戦した後になってその国共内戦が激化します。

そのうえで、日本と戦って疲弊した国民党が敗北し、その国民党が大挙して、日本が支配を放棄した台湾を占拠したということになります。

なお、この国民党の台湾占拠に関しては、国際法的には全く承認されたものではなく、単純に実行行為でそのようにしたということになります。

この辺の歴史は、また別の機会にしましょう。

さて、こののちに、中国共産党の毛沢東は、共産主義を完遂するためにそれまでの政治状態をすべて改正し「大躍進政策」を行ったことから、中国大陸本土では最大5,000万人が餓死したと伝わります。

この結果、中国は共産主義社会の中で世界の最貧国の中の一つとなるということになり、その後、国共内戦は中国大陸と台湾との間で膠着化することになるのです。

この膠着化の中で、長期間いたのですが、改革開放経済を行い、中国が徐々に発展してきた後になって、胡錦涛・習近平政権になって、台湾侵攻が現実化して見えるようになってきたということになります。

ちなみに、前回習近平国家主席の昨年の発言に関して様々な研究をしてきましたが、実際には、「台湾統一」または古くに「国民党勢力の併合」ということで、蒋介石が台湾に逃げて以来、ずっと中国共産党の国家主席は発言を継続しています。

基本的には共産党はずっと同じことを言っているのです。

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しかし、最近になって軍事力や、その配置などから見て、そのことが現実に行われるようになったということになります。

同時に「軍事的な威示行為」が行われるようになっています。

胡錦涛政権の時から、南シナ海の環礁地帯を埋め立て、そこに軍事基地を作るなどのことが行われていましたし、また、台湾周辺の防空識別圏を設定するなど、様々な事を行ってくるということになっています。

日本に対しても同様で、尖閣諸島を核心的利益といい、なおかつ、尖閣諸島に年間1,000回を超える接触(接続海域への侵入を含む)というようなことを行っているということになります。

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中国共産党は、1999年に「超限戦」という概念を作り出し、「平時の戦争」ということを行ってきました。

このことをもとに、2014年ロシアはゲラシモフ・ドクトリンを作り、クリミア半島の併合を行っています。

ある意味で、中国の概念をロシアが実験的に使い、その課題を実現したということになっています。

さて、ここで言う「超限戦」は、日本では、ロシアのゲラシモフ・ドクトリンの言葉を使って「ハイブリッド戦争」というような呼称を使っています。

ハイブリッド戦争とは、正規戦、非正規戦、サイバー戦、情報戦などを組み合わせて行う戦争の事であり、ロシアでは、「軍事的な戦い1:4サイバー戦などの平時での工作」といわれるほど、ハイブリッドの軍事以外の部分が大きくクローズアップされています。

当然、2014年のクリミア半島侵攻の成功から考えて、中国共産党は当然のようにこの内容を推進してきたということになります。

ある意味で今回のウクライナ侵攻に関しても同様であり、ロシアも「二匹目のどじょう」を狙ったということが言えますが、中国なども当然似たような効果を狙ったということになろうかと思います。

その場合に、中国は、2014年から2022年までの期間、それなりの準備をしてきていたということになるのではないでしょうか。

ちなみに、中国共産党は何故、2022年まで台湾進攻をしなかったのでしょうか。

この答えはある意味で簡単で、今年2月に北京冬季オリンピックがあったからという理由になります。

共産主義の場合、国家を挙げてのイベントというのは成功させなければなりません。

そのような国家を挙げてのイベントが、戦争などの内容によって多くの国によってボイコットされてしまっては「成功」とは言えなくなってしまうのです。

基本的に「成功」させるためには、多くの国の反対がないということが必要であり、その上、その中で中国という国家が多くの金メダルを獲得するということが必要条件になるということになります。

そのために「オリンピックが終わるまでは隠忍自重していた」ということになります。

逆に言えば、「ハイブリッド戦争」を目指している中国共産党から考えれば、当然に、それまでの期間は準備をするということになります。

そこで、中国共産党は、三つのルートで目的達成をするということを考えていました。

まず第一段階は「平和的に台湾が中国に併合される」ということです。

これは台湾の馬英九総統の時代にかなり良いところまで行ったと思われています。

国民党公認の馬英九が総統となった事で中台関係の雪解けが期待され、台湾国内でも毛沢東のペーパーウェイトが発売されるようになったのです。

総統選挙では「三不」(台中統一・台湾独立・武力行使のいずれも行わない)をスローガンに掲げてましたが、しかし、総統に就任した後には「統一という選択肢を排除するものではない」と発言した事もあるほど、中国寄りの政策を推進していたとされています。

総統就任後の2008年12月15日には、中国との間で「三通」を実現させました。

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学生には奨学金の返還を求めない措置を講ずると言い、旅行業者には三通(中台間の通信、通商、通航の直接開放)で空と海の直行便を定期化し、年間360万の中国人観光客を呼び込んで商売を繁盛させると呼びかけたのでした。

2010年には中華人民共和国と事実上の自由貿易協定である両岸経済協力枠組協議(ECFA)を締結し、海峡両岸におけるサービス貿易制限を解除し、マーケットを互いに開放し、貿易の自由化に達することを目標とする海峡両岸サービス貿易協定の締結を推進したのです。

野党民主進歩党や台湾大学生たちは、台湾の中小企業に対する脅威、人材流出、言論や情報の安全性を恐れ、いわゆる「ひまわり革命事件」が発生します。

また、台湾に先駆けてこの条例を行った香港が、民主化運動を徹底的に弾圧されたことを見て、馬英九政権の方針が中国共産党に「飲み込まれる」というような感じであるというような感覚になったのです。

このことから台湾独立を強く志向する蔡英文総統が2016年に選出され、国民党は大きく停滞することになります。

それまで中国共産党が国民党との間に様々な懐柔工作を行ってきたのが、蔡英文総統になってことごとく覆されるようになっているのです。

しかし、それでも中国は経済的に台湾との間において優位性を保ち、また台湾の大企業は中国に進出して利益を得ていることなどから、経済的には依存関係が継続していることになっています。

そこで中国共産党は蔡英文総統の時代になって第二段階に入ります。

つまり「孤立化と威圧」ということになります。

台湾の陳水扁総統の時も同様に行いましたが、中国共産党は、蔡英文総統が当選したことによってガンビアと国交を回復し、そのことによって台湾との国交を排除させているということになるのです。

このようにして、中国共産党は台湾との国交を排除させることを条件に、中国との国交を回復し、台湾の孤立化をさせているということになります。

同時に、軍事的な威圧を加えてゆきます。

(メルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』2022年6月20日号より一部抜粋。続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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