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みんなを「同じコース」へと駆り立てる教育で人は幸せになれるのか?

後悔のない人生を送りたい。そう思っている人は多いはずですが、人生の最期に「もっといろいろなことをしたかった」と後悔を口にする人が多くいるようです。「いろいろなこと」とはどんなことで、どう生きるのが幸せなのかを考えるのは、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さん。今回のメルマガ『j-fashion journal』で坂口さんは、定められたレールに従って勉強し働くだけでは、お金はあっても「いろいろな」使い途を見い出せないまま人生を終えることになると持論を展開し、「いろいろなこと」に彩られた時間を手に入れる生き方のヒントを提示しています。

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精神の価値とモノの価値

1.なぜ勉強して名門校を目指すのか?

世間でいうところの理想の人生とは、どんな人生でしょうか。まず、名門幼稚園に入り、名門小学校、名門中学校へと進む。名門高校から名門大学に進学し、その間、ずっと学業優秀。できれば、スポーツもできて文武両道が理想です。

就職は、官庁か一流企業。そこからは出世競争に邁進します。官僚なら次官、企業なら社長を目指す。途中で競争に破れると、出世コースから外され、左遷されたり、子会社に出向されたりします。それでも、生活の心配はないし、十分に幸せに暮らすこともできるはずですが、多く場合、ストレスを抱えるようです。

でも、親や先生はそこまで考えてくれません。そんな心配する前に勉強しなさい。働きなさいと言うのです。勉強ができる方が幸せになる可能性は高い。働き者の方が幸せになる可能性が高い。常に可能性を言っているのであって、結果を保証しているわけではありません。

経済的成功を人生の目標とするなら、自分の能力を見極めた将来設計が必要です。勉強が嫌いなのに、良い大学、良い会社への就職を目指すのは無理があります。むしろ、学歴に左右されずに、経済的成功を目指せる職業を選ぶべきでしょう。個々の能力を考えずに、全員を同じコースへと駆り立てるのは本人のためになりません。

結局、学校では、規則に従い、命令に従うこと、つまり服従するトレーニングを優先していると思います。自分で考え、自分で行動してはいけない。自分の好きなことを、自分のやりたいことをやってはいけない、という訓練が徹底的に行われ、同調圧力を生み出す集団の一員になることが求められているのです。

2.競争の果てに幸せはあるか?

偏差値の高い学校に進学し、偏差値の高い就職先に就職すること。それは競争に勝つということです。多くの人は、競争に勝てば幸せが待っていると信じています。

しかし、クラスの競争に勝っても、学年の競争があり、学年の競争に勝っても、学校間の競争が待っています。偏差値の高い学校に進学すれば、更に多くのライバルが出現します。そう考えると競争に勝つとは、どの時点の話なのでしょうか。どこかで妥協しない限り、競争は永遠に続きます。

そもそも競争が起きるのは、多くの人が同じ方向を目指しているからです。もし、競争相手のいない分野を選べば、競争はありません。人生には、競争を勝ち抜く道だけでなく、競争から降りてオンリーワンを目指す道もあります。競争で幸せになれる人は少数です。しかし、各自が個性を発揮すれば多くの人が各分野でオンリーワンになれるかもしれません。

テレ朝の「博士ちゃん」という番組では、特定の分野に精通している子供たちを紹介しています。好きなことをとことん追求しているので、多くの博士ちゃんは大人の専門家に匹敵する知識や見識を持っています。そのまま育てば、十分に専門家として通用するし、経済的にも安定するでしょう。学校の先生が苦手な科目の勉強を強制し、凡人への道に引き戻さないことを祈るばかりです。

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3.「いろいろなこと」が幸せ

学校で真面目に勉強すること。就職したら会社で真面目に仕事をすること。これが悪いと言う人はいないでしょう。でも、そのまま定年になったらどうでしょう。終末医療の現場の人の話では、人生の最期に「なぜ、もっといろいろなことをやらなかったんだろう」と後悔する人が多いそうです。

学生時代の幸せな時間と言うと、クラブ活動、体育祭、文化祭、遠足や林間学校、修学旅行など、比較的自由な時間ではないでしょうか。授業の時間が幸せだったという人は少数派です。

就職して社会人になってからの幸せな時間とは何でしょうか。多くは仕事以外のプライベートな楽しみ、恋人とのデート、友人との会食や旅行等に幸せを感じると思います。「いろいろなこと」とは、「幸せを感じる時間」を意味しているのではないでしょうか。

「遊びや恋愛は無駄なこと」と考えている人は勉強や仕事だけに集中してしまいます。そのときは褒められても、人生の最期になると後悔するようです。無駄を排除して、真面目に働き、定年を迎えれば、退職金と年金で安定した老後を過ごすことは可能かもしれません。時間もたっぷりあります。

ところが現実はどうでしょうか。定年になった途端に気力が消えて、ダラダラと過ごす人が意外と多いのです。あまりにも忙しく働き過ぎたために、趣味もなければ、会社以外の友達もいない。お金の使い方も分からないし、何をしたらいいのか分からない。「いろいろなこと」をしていないからです。

4.お金があっても買えないもの

お金があれば何でも買えるということも疑ってみたいと思います。私はアパレル全盛期を経験しています。3億程度の会社が数年で百億の規模になった現場に居合わせました。当然、幹部社員の生活も変わりました。

スーツ、靴や時計が高級ブランドになり、車も高級車に、お酒を飲む場所も安い居酒屋から高級クラブへと変わりました。でも、意外に行動は変わりません。貧しくても、金持ちになっても、酒を飲んでナンパに励むのが好きな人はいます。持ち物は変わってもやっていることは一緒なのです。

お金持ちになったから、茶道を始めるとか、油絵を始めるとか、チェロを習うという人には会ったことがありません。茶道も油絵もチェロも楽しむためには、まず努力が必要です。お金で楽器は買えても、それを演奏して楽しむことはできません。茶器も同様です。買うことはできても楽しめない。だからお金があっても買えないということです。

食事も同様です。高い料理を頼むことはできても、正しいマナーを身につけ、リラックスしながら、高級な料理に相応しい友人との会話はできないものです。

人生を彩る時間は真面目に勉強したり、仕事をするだけでは手に入りません。お金を稼ぐ行動だけでは入手できないことが、世の中には多い。しかし、それに気がつくことなく、一生を終える人も実に多いのです。そして、最期に後悔するというわけです。

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5.自給自足で家族と過ごす幸せ

テレビで自分で家を建てた女性が紹介されていました。自分で土地を買い、大工の専門学校に通い、文字通り自分の手で家を建てたのです。なぜ、そんなことをしたのかというと、小さい頃からの夢だったそうです。それを20代になって思い出した。

そこからアルバイトをしてお金を貯め、土地の購入費と学費に充てたそうです。現在は、ほぼ自給自足の生活をしていて、畑で野菜を作り、鶏を飼い、子育てをしています。月10万円程度の収入でも十分にやっていけるとのこと。旦那さんは建築助手のアルバイトとして来てくれた優しい人で主に主夫業を担当しています。

この女性は完全に自分の人生を自分で設計し、自分で実現していました。多分、優等生やエリートには考えられない人生、考えられない幸せを体験していると思います。

もし、食料危機や金融危機が到来しても、この女性は生き残るでしょう。自分のやりたいことに忠実に生きること。それは、決して不可能なことでもリスキーでもないことを証明しています。

我々は、知らないうちに多数派の人の意見にしたがって生きています。そして、お金を稼ぎ、貯めることだけに興味を集中してはいないでしょうか。もし、幸せな時間を優先にすると、別の人生が見えてくると思います。

■編集後記「締めの都々逸」

「一人一人が 他人のために 生きれば 幸せ巡り来る」

コロナ禍、戦争で自分の価値観が変わってきたのを感じます。最早、売れるの売れないの、儲かるの儲からないのには興味を感じません。そもそも、誰も欲しがらないモノを大量に作っておいて、どうしたら売れるでしょうか、と問われても、「そんなの売れるわけないじゃん」としか言いようがありません。

そんなことより、幸せについて考えましょうよ。世間が定めたような人生こそ、無駄なのではないか。そう思いませんか。

個人的な経験では、会社で働くことで、精神が高められることはなかったと思います。しかし、個人で働くようになってからの仕事は常に新しいことに直面し、それを解決するために勉強し、曲がりなりにも成長したように感じています。

反面、常に経済的には困窮していますが、ストレスはありませんので健康です。これが世間が定めたコースから積極的に外れてきた男の感想ですね。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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