6月27日、関東地方は観測史上最も早く梅雨が明け連日猛暑。気象庁の気温予想のマップはさながらRPG内の毒の沼のようになっています。この状況で最大限警戒が必要なのが熱中症です。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で、気象予報士でもある健康社会学者の河合薫さんは、4年前に続き2度目となった6月梅雨明けの理由を解説。熱中症を避けるには冷房が必須も、設定温度を低くしすぎると厄介な「冷房病」の危険度も高まると注意を呼びかけています。
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灼熱地獄と熱中症と。
あっという間に梅雨が明けてしまいました。平年だとこれからが“梅雨本番”です。ところが、なんと関東では平年より22日も早く、雨の季節が終わってしまいました。
「6月に梅雨明けなんて信じられない!」という意見もSNSでは散見されますが、6月に梅雨明けしたのは、今回が2度目(1951年以降)。4年前の2018年の梅雨明けは6月29日です。
わずか4年で2回も6月中に明けたのは、温暖化の影響と言わざるをえません。地球は確実に暖まっていて、極端な気象現象が起こりやすくなっているのです。
特に、今年はインド気象局が、モンスーンが平年より1週間ほど早く北上していることを確認し、インドでは4月下旬から猛烈な熱波に襲われ、最高気温を更新していました。そもそも梅雨は日本だけの現象ではなく、中国では「梅雨(メイユー)」インドではモンスーン(雨季)と、広くアジアの現象です。すべて繋がっているのです。
その数千キロにもわたる梅雨前線をつくっているのが、チベット高原です。中国大陸や日本が位置する中緯度には、偏西風とよばれる強い西風がふいていますが、冬のあいだチベット高原の南まで南下していた偏西風は、春から夏にかけて暖かい空気に持ち上げられ少しずつ北上します。
この西風がチベット高原にぶつかる時期が6月頃。標高5000メートルもあるチベット高原で、偏西風は北と南の2つの流れに分離され、その2つの風が日本の東で、再び合流します。やがて7月になると、偏西風はさらに北上し、チベット高原の北に押し上げられると日本の梅雨は終わります。
今年はすでに6月下旬に、偏西風がチベット高原を越え、チベット高気圧を明瞭に確認できました。どこからどうみても「梅雨明け」なのです。
ちなみに2018年の夏は、記録的な猛暑。まさに灼熱地獄でした。気象庁の季節予報では、今年も平年より暑くなることが予想されていますので、“暑さとの戦いの夏”になりそうです。「災害級の夏」到来です。熱中症をいかに防ぐか?これが今後2ヶ月の最大の課題といえるでしょう。
熱中症は「私」たちが想像する以上に恐ろしい症状です。自覚できない状況で起る「足音なき症状」なので余計に怖い。
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「体力があるから大丈夫!」とか、「若いから大丈夫!」というものではないのです。夜でも発症しますし、気温が低い日でも湿度が高いときは危険です。厄介なのは、熱中症を防ぐことで、冷房病になる危険が高まってしまうのです。
冷房の効いた部屋では冷たい風によって皮膚の温度が急激に下がり、血管が収縮します。体が冷たい状態で、30度を超える屋外に出ると、瞬時にめまいをおこして転倒してしまったり、軽い貧血を起こしてしまったり。人によっては、9月頃にだるさなどの症状がでたりと、「冷房病」はかなりしつこい症状なのです。
熱中症も怖いけど、冷房病も怖い。冷房病を防ぐには、室内と室外の気温差を、5度程度にするのがベストなので、どんなに最高気温が40度に迫ろうとも、クーラーは28度前後に設定し、体を守ってください。
そして、もう一つ。外出するときは、首を冷やすようにしてください。以前(お天気ねーさんをやっていた25年前です!)、「人はどこでいちばん暑さを感じるのか?」を調べたことがあります。全身を25のパーツに分け、40度の熱風をあてて感度の違いを検証したのです。
その結果、感度の高い順に、顔面、首、胸、背中、続いて足と手の指先でした。また同じく25のパーツを冷やすことで全身の皮膚温の変化も見たところ、胸や首、さらに背中を冷やすのがいちばん効果がありました。
某企業の「着るエアコン」なるものが爆売れしているようですが、実に理にかなった商品ですので、熱中症予防にもなりそうです。
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