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安倍氏「暗殺」の衝撃。市民が4億丁の銃を持つ米国はどう受け止めたのか?

国政選挙戦のさなかに起きた、安倍元首相銃撃事件。日本中に衝撃を与えたこの決して許されない凶行を、銃社会であるアメリカはどのように受け止めているのでしょうか。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、NYタイムズの記事を引きつつその反応を紹介。さらに米国人が銃を手放せない理由を解説しています。

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銃社会米国から見た安倍元首相暗殺

安倍元首相の暗殺。衝撃を受けました。

各国の政治家、指導者からその死を悼む声が届いていることは、すでに報道されているとおりです。

各国の首相のコメントなどは十分に紹介されていますので、本日は7月8日NYタイムズに掲載された「暗殺に衝撃をうける銃のない社会、日本」という記事を紹介しましょう。

銃がない社会、日本への驚きがあります。

安倍晋三元首相が選挙集会中に暗殺された事件は予測しがたいものだった。銃器の購入と所有に関する法律が最も厳しいこの国では、この種の犯罪は極めてまれである。

 

日本では銃による暴力はほとんど前例がない。2017年以降、銃に関連する死亡は14件で、人口1億2,500万人の国としては驚くほど少ない数字である。

 

日本の銃刀法では、原則的に銃は禁止されている。狩猟に使う銃は例外だが、免許取得に時間と費用がかかるため、わざわざ足を運ぶ人はほとんどいない。

 

銃の購入には、銃の安全講習から始まり、筆記試験に合格するまで12段階のステップを踏まなければならない。さらに、銃の購入者の心身の健康状態について医師の診断が必要である。さらに、身元調査、銃器や弾丸を保管するための銃器庫や弾薬庫の警察による検査など、さまざまな段階を経て購入する。

 

日本の政治が穏やかであることは有名だ。政治的緊張が高まることはめったにない。議会での議論は通常見せかけの怒りを超えることはなく、政治的プロパガンダを鳴らしながら街を徘徊する超右翼団体の車でさえ、治安に対する脅威というよりは迷惑行為と見なされているのだ。

 

政治イベントでの警察の保護は手薄である。選挙期間中は有権者が国のトップリーダーと交流する機会も多い。今回の事件のビデオには容疑者が元首相の近くを歩き手製の銃を発射する様子が映っていた。

 

警察官が銃器を所持していても、ほとんどの日本人は日常生活で銃に出会うことはない。また、米国ではおなじみの銃乱射事件の感情的・政治的余波を日本はほとんど経験したことがなかった。

 

警察庁によると、2021年、日本では死傷者や物的損害をもたらした銃乱射事件が10件発生した。そのうち1人が死亡、4人が負傷している。この数字には事故や自殺は含まれていない。

 

国内で認可されている約19万2,000丁の銃器のほとんどは、散弾銃と猟銃である。これに対し、銃器がほとんど登録されていない米国では、一般市民が手にする銃の数は4億丁近くにのぼると言われている。

 

ここ数週間、日本のメディアは米国で相次いだ銃乱射事件を不信と混乱の入り混じった思いで見ていた。テキサス州ユバライドで起きた銃乱射事件の後、日本第2位の発行部数を誇る朝日新聞は、米国を「銃社会」と呼ぶ社説を掲載し悲劇によって教室が「銃乱射地帯」と化したと述べた。

 

著名な週刊経済誌である東洋経済は昨年“なぜ米国では「銃の所有」が譲れない権利なのか”と問う記事を掲載した。

 

ジャーナリストの津山恵子氏は記事の中で、「これほど多くの犠牲者が出ているにもかかわらず、なぜ米国で銃の保有が続いているのか、日本人には理解しがたい」と述べている。

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解説

最後の「なぜ米国では銃の保有が規制できないのか」というコメントは多くの日本人が同意するものでしょう。

6月25日にバイデン大統領が銃規制の法案に署名しました。法律には銃の購入者が21歳未満の場合は犯罪履歴やメンタルヘルス面などの審査を厳格化することなどが含まれています。しかし、これは銃社会からの決別には程遠いものです。

なぜアメリカ人は銃を手放せないのでしょうか?

これには憲法に基づく思想的な問題と実際的な問題があります。

アメリカ合衆国憲法修正第2条には「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない」とあります。

これが米国人の根底の思想に流れています。

そして現実的な問題があります。

もし仮に銃の保有を禁ずるような法律が可決されたとします。真面目な米国人は銃を政府に差し出すでしょう。

米国に実際に暮らしてみると分かりますが、同国は法律・規制と実際が合致していることが多いです。例えば道路の制限時速60マイル(約100キロ)のところでは、実際に60マイルで走る人が多いのです。

日本のように田舎のガラガラの道なのに制限時速40キロなんて、だれも守っていない規制がかかっていることはまずないのです。

つまり米国人は法律は文字通りに守らなねばならないという世界に生きています。

よって、銃の保有を禁止すれば、多くの真面目な米国人は「ひとつぐらいの銃は、念のために家に残しておこう」などと考えずに差し出します。

でも順法意識が低い犯罪予備軍、ギャングなどは当然差し出さないでしょうから、銃をもっているのは悪人ばかり、善人は自分を守る手段がないという事になります。

随分前ですが、ニューヨークのセントラルパークで28歳の女性投資銀行家がジョギング中に激しく殴打され性的暴行を受けた事件があり全米に衝撃を与えました。

なぜこのような事件が起きたのでしょうか?ジョギング中で彼女に武器がない事が明白だったからです。やはり武器をもつ(または武器を持っているかもしれないと予測されること)は、犯罪の抑制効果があるのです。

この記事にあるように全米には4億丁近くの銃があると言われています。保有を禁止しても差し出すのは、善人ばかりでしょう。実際にそれで治安を維持できるとは考えられません。

米国人と日本人の間には銃について相当な意識の格差があるのです。日本の基準で「米国人は何を考えているかわからない。バカじゃないか」という事は正しくありません。(この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』7月10日号の一部抜粋です。この続きをお読みになりたい方はご登録ください。初月無料です)

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image by: WKanadpon / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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