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「城攻め」では上位の策。中国共産党の狙いは台湾の“中からの崩壊”

中国共産党の台湾への野心は明らかですが、四方を海で囲まれた台湾を“力攻め”で陥落させるのは簡単なことではありません。その困難さについて、“戦(いくさ)の神様”上杉謙信でも小田原城を攻略できなかったと、“城攻め”を例にあげ語るのは、ジャーナリストで作家の宇田川敬介さんです。今回のメルマガ『宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話』では、難攻不落の城であっても城内で裏切りがあれば簡単に落城してしまう例と同じことを中国共産党は狙っていると解説。まずは、馬英九前総統時代に「中国国民党」をターゲットにした背景について、台湾の歴史を遡って伝えています。

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ハイブリッド戦で台湾はどのようになったのか

前回は、外国で話題になっている中国の台湾進攻のシナリオについて、その内容を抜き出して見てみました。実際に様々なシナリオがあったと思います。

そのシナリオは、基本的に「ハイブリッド」で中国側が台湾を工作するということが前提になっており、そのうえで、台湾政府内または国土内において、裏切り者を出すということが重要になってくるのです。

一般論として、といっても、戦術的な話なので現在の日本において一般論にはなりえないのですが、戦争の話の中の一般論をしましょう。といっても日本人の親しむ一般論ですから、当然に現代の戦争に関することではなく、まあ戦国時代や三国志などの「歴史もの」の戦術に関して例に挙げてみましょう。

基本的には「城」というのは、外から攻めてもなかなか落ちない構造になっています。日本でもそうですし、中国もそうですが、城というのは外から攻撃されることを前提に作られているものですし、また城というのは、そこに追い込まれるということが前提なので、城の中の人数が少なく、城の外の人数が多いという前提で作られています。要するに少数で守りやすく多数で攻めても攻めにくいということが特徴になっています。

これは、多くの人々が現在に残されている日本の城郭を観光で見てもわかることではないでしょうか。単純に、もっとも高いところ、見晴らしの良いところに天守閣があり、その天守閣に向かってジグザグに、なるべく遠回りするように回廊が設置されています。その上、その回廊は塀で囲まれ、塀には鉄砲狭間や弓狭間といわれる穴があって、そこから回廊を通る敵兵を射かけることができるようになっているのではないでしょうか。

それだけではなく、石や丸太を落としたり、場合によっては熱湯をかけるなども十分に武器になっていたのですから、大変な状況です。攻め手はそのようなところを、盾をもってよけながら進んでゆくということになります。場合によっては石垣を登ったり、塀を壊したりというようなこともあったかと思います。それでも城はなかなか落城しませんから、城攻めだけで何日もかかるというようなことになるのです。

戦の神様といわれた上杉謙信も、北条氏の守る小田原城をなんどもかこみながら、ついに落城させることができませんでした。また、武田信玄も「砥石城崩れ」など、城攻めに失敗している例も少なくありません。

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城攻めをして、失敗すると、被害が大きいばかりではなく、自分の味方、それが上杉謙信や武田信玄であっても、其の臣下の武将が恐怖心を持ってしまい、攻略が前に進まなくなってしまうということになるのです。

しかし、そのような武田信玄が攻撃しても落ちなかった砥石城ですが、これが驚くほどあっけなく落ちてしまいます。これは真田幸隆(真田昌幸の父・真田幸村の祖父)が、砥石城の中を調略し、中の人々を裏切らせて簡単に城を落としてしまいます。

難攻不落といわれた小田原城も、豊臣秀吉が攻めたとき、松田憲秀という武将が裏切り、小田原城は落城します。このように「難攻不落の城」も「内側に裏切り者が出てきて、内側から攻めると、いとも簡単にあっけなく落城する」ということなのです。

どのような城でも同じですが、その城の中が、しっかりと一致団結し、諦めることなく、抵抗を続けていると、意外と大軍が相手でも落とすことは難しいのです。

このように書くと、「それは歴史上の話だ」というような反論をする人がいます。しかし、そのような指摘は当たっているでしょうか。実はウクライナであっても同様の話ではないでしょうか。ロシアのような大国が攻め、また、これはウクライナ側の主張ですがクラスター爆弾や巡航ミサイル(核弾頭は使っていないようですが)を使用して攻撃しています。

いうなれば、上杉謙信が城を攻めているようなものです。しかし、それでもウクライナは2月24日から4カ月以上たっても負けていません。これは、当然「ウクライナ国民の結束が固いから」にほかなりません。

一説には、としか言いようがありませんがロシアは2月24日よりも前、ゼレンスキー大統領の支持率がかなり低下していることを鑑み、攻めればウクライナ国民がロシアになびくものと考えていたと言います。つまり、ロシアはウクライナ国民が革命を起こし、その革命に乗るような形でウクライナの政権を倒すつもりであったようだという観測があります。

そのように考えると、ロシアであっても、ウクライナを完全に外から崩すことはできず、ウクライナの内側から崩さなければならないと思っていたようなのです。

そのことを考えると、上記の「砥石崩れ」の後の真田幸隆の調略も、また、小田原城を攻めた豊臣秀吉が松田憲秀を裏切らせたのも、すべて攻城戦をうまくやるようにするためであったということが言えます。

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さて、長くなりましたが、これは中華人民共和国が台湾を攻撃するときも同じであるということになります。そのことから、中国は台湾の中に裏切り者を作る工作をしています。しかし、これが通常の方法であれば、ロシアのウクライナのような形で、うまくゆかなくなるということになるでしょう。

ここで「ウクライナとはなにか」ということになります。ウクライナの場合は、ウクライナ国内において「政府と国民」の間に支持率の低下ということがありました。

しかし、それはウクライナ国民がゼレンスキー政権に対して敵対しているということでもありませんし、また、そのことでロシアに政権を移譲するという意思表示でもありません。

ここにあるのは、当然に、「ウクライナが独立をしながらよりよい政権にする」ということでしかなく、特にコロナウイルス対策などでそのように考えられたものであり、ロシアになってよいという考えではないのです。

中華人民共和国が、台湾に対してどのような工作をするか。当然この工作は「中国人民解放軍が攻めた場合、台湾国内で内応して人民解放軍と共同歩調をとる」ような人を増やす工作以外にはないということになるのです。

さて、その中で言えるのは、まずは「中国国民党」という政党になります。中国国民党は、もともと中国の中の国共内戦で敗北し台湾に渡ってきた人々です。このような人々は「外省人」といいます。一方で中国国民党が入ってくる前に台湾に住んでいた人々は「本省人」という言い方をします。

外省人は、いつかは「大陸に戻る」というような考え方を持っています。そのために、いつまでたっても、台湾人というような考え方を持っていませんので、文化も生活習慣も大陸的なところがあるということになります。

同時に、その台湾の外省人は、もともと台湾に住んでいた本省人を「蔑視」しているということになります。そのうえで1947年に、中国国民党、台湾から見た「外省人」は、「2・28」事件を行います。

228事件とは、

国民党支配下の台湾における、外省人と本省人(台湾人)との衝突によって生じた大規模な流血事件。民主化が進む李登輝(リー・トンホイ)体制下で真相究明のための再審査が行われ、1992年2月には膨大な調査報告書が作成されて李総統自ら遺族を弔った。

 

47年2月27日、台北市内の夜市で、複数の警官がヤミたばこ密売の女性を横暴に摘発しようとして市民との間に混乱が生じ、警官の威嚇発砲が原因で1人の市民が死亡、これに抗議するデモが翌28日、台北、基隆を始め全国に拡大した。当時の行政長官・陳儀らは抗議に立ち上がった市民を徹底的に弾圧したため、2万人以上とされる死者が発生し、外省人、特に国民党指導層への台湾民衆の心理的反発は決定的となった。

 

事件後45年にして台湾民衆の心理的な傷がいやされたことは、台湾の将来にとっても重要な展開といえる。(知恵蔵より抜粋)

という事件です。

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台湾では「白色テロ」とも言われています。この事件以降、台湾の中にはいまだに「本省人と外省人」の根深い意識の違い(対立とまでは言えない)があるのです。

中国共産党はこの違いに目をつけ「もともと同じ国の人間である」ということから、国民党を工作の対象に置きます。このことによって、国民党の馬英九前総統などは、中国との間に様々な条約を結ぼうとしています。

経済的な内容である「三通」つまり、中華人民共和国(中国大陸)と中華民国(台湾)の「通商」「通航」「通郵」を実現させ、そのうえで海峡両岸サービス貿易協定を結ぼうとしたのです。海峡両岸サービス貿易協定に反対する大学生が立法院を占拠する事件『ひまわり学生運動』が発生します。いわゆるひまわり革命です。

このようにして、様々な意味で国民党は中国大陸(中国共産党)との一体化を目指すようになったのです。実際には台湾の人々は、「今のまま」が最も良いと思っており、特に独立したいとも、また、共産党と合同したいとも思っていないのです。

そのような中で国民党は、もともと中国からの「移住」であり、日本がいなくなった後の大陸から来た政府であることから「官僚」「教育」「軍」を独占しています。そのことから、多くの国民は台湾の独立や今のままを願っていながら、政府上層部は中国との一体化を目指すといういびつな形になっているのです。

この国民党に対して工作を行ってきたのが、まずは一つ目の「工作」であったということになるのです。では、共産党は、次に「民進党」や「一般の市民」にどのように工作をしたのでしょうか。次回はそのことを見ていきましょう。

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image by: Shutterstock.com

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