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自民圧勝だった参院選。女性候補者の多さに感じる「違和感」のワケ

自民党の圧勝で終わった今回の参院選。全体を通してみれば、立候補した女性は181人で、1989年の146人を大きく上回り過去最多となりました。しかし、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』の著者で、気象予報士でもある健康社会学者の河合薫さんは、女性候補者の多さに違和感を感じているといいます。

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参院選の結果を見るに思う。いつまで「数合わせ」は続くのか?

自民圧勝で終わった今回の参議院選挙ですが、125人の全当選者のうち女性は35人で、過去最多の28人を上回りました。

候補者たちのポスターをみた時に、「女性増えた」と感じた方も多かったはず。第5次男女共同参画基本計画で示した目標は、2025年までに衆参両院での選挙における女性候補者の比率35%に対し、今回立候補した女性は181人、候補者に占める女性の割合は33.2%とかなり近づいていました。

しかし、その内実をみると「とにかく女の数を増やせ!」的擁立もちらほら。例えば、自民党では6月22日の公示日までひと月を切った5月末時点で、候補者78人中女性は15人。女性比率は19.2 %にとどまっていました。そこで「とにかく増やせ!」といわんばかりに、新人の女性4人を比例代表に追加公認。その結果、“比例に限った“女性候補者の比率は30%にギリギリ達したのです(4人共落選)。

思い起こせば、2020年3月、自民党の女性議員グループが二階幹事長(当時)に要望書を提出し、

などを求め、二階氏は「検討する」としていました。

つまり、少々穿った見方になりますが、「検討するって言っちゃったし、他の政党でも女性増えてるし~。とりあえず候補者増やした!名簿に載せたから、いいじゃん!」ってことなのでしょう。

実際、自民の候補者全体に占める女性比率は23.2%で、主要政党でワースト2位。もっとも低かったのが公明党で、20.8%です。当選者に占める割合も、立憲52.9%、共産50%に対し、自民20.6%、公明15.4%にどどまっています。

男女平等度の指標となる「ジェンダー・ギャップ指数」2021年版の政治分野で、日本は156カ国中147位と、先進国では異例の低さでしたが、万年ビリグループ脱却への道のりは、果てしなく遠いといわざるをえません。

加えて、ポスターで「女性候補者増えた」とは確かに感じましたが、かつての“マドンナ旋風“のような熱さはありませんでした。

自民党総裁選では、高市早苗氏と野田聖子氏が出たことで盛り上がりましたが、あの時のような“熱“をもっと感じさせて欲しかった。そして、「私」たちの1票に、“熱“はあったのでしょうか。

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興味深い分析があります。近年、有権者数は女性の方が男性を350万人程度上回っていて、投票者数では女性が男性より100~150万人程度多い状況が続いていました。

しかし、過去の投票者数の男女差を比較したところ、1989年の参院選では女性の投票者数が増え、男性との差が広がっていました。

そう、マドンナ旋風が吹き荒れたときです。選挙に立った女性だけでなく、1票を投じる女性も増えていたのです。

当時、女性の候補者の割合は21.8%で、選挙後の参議院の女性議員割合は17.5%、投票する女性も増えたことで、初めて自民党が過半数割れしましょた。

「ねじれ国会」は法案審議にも影響を与え、参議院での議論が先導する形で「育児休業法」の成立にもつながったのです。

しかしながら、女性たちが吹かせた嵐は、長くは続きませんでした。「一緒に女性を増やそう!」と闘ってくれる男性は少なかった。

「政治の問題」ではなく「女性の問題」とされてしまった。「変わらないこと」を選択したのです。

変わるための積極的な動き、例えばクオータ制の議論すら進められなかったのが、今の日本です。ならば、ぜひとも「ナショナル・マシーナリー」の創設を検討してほしい。

ナショナル・マシーナリーはジェンダー平等に関する直接の政策立案・調整機関で、形態は国によって異なるが、取り組むのはむしろ「男性問題」がメインです。

世界中の国や地域が1970年代後半から、ナショナル・マシーナリーを設置し、男・女の二分法から脱却しジェンダー平等という立場に徹しています。

例えば、カナダには内閣の中に女性の地位担当大臣と、閣議に出席して発言する権限を有する専任の女性の地位副大臣、その下に女性の地位庁(Status of Women Canada)を設置(1976年~)。フィリピンでは「フィリピン女性の役割国内委員会」が設置され(1975年~)、徹底的にジェンダー問題に関するモニタリングと、政策分析、調査研究を行っています。

また、韓国には、政務長官室というのがあり、これは官房長官が2人いてその2人目が女性問題担当の専任大臣という位置づけです(1988年~)。

もちろん、「今のままでいい。あくまでも自然増で」というのなら、形だけの数値目標を掲げ、場当たり的に候補者を比例名簿に載せるような意味のないことはやめてほしい。

そろそろ、立憲民主党や共産党に女性党首が出て、「女性が見える化」することを期待しています。

みなさまのご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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