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プーチン亡命か暗殺か。近づくウクライナ戦争の終焉とロシアの後始末

8月24日で開戦から半年を迎えるウクライナ戦争ですが、侵略行為を続けるロシア軍の旗色がここに来て悪化の一途を辿っているようです。今回のメルマガ『 国際戦略コラム有料版 国際戦略コラム有料版 』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、各地でロシア軍が追い詰められつつある最新の戦況を解説するとともに、プーチン大統領がカザフスタン侵攻を行う兆しを見せているという驚きの情報を紹介。さらにそう遠くないうちに訪れる「ロシア敗戦後の世界」において、日本が果たすべき役割と国として目指すべき方向性を考察しています。

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ウクライナ戦争の推移

ウクライナ戦争はウ軍が優勢であり、ロ軍は守勢になってきた。今後は、ロシア敗退後の世界の秩序体制をどうするのかが課題になる。これを検討しよう。

ウクライナ東部での戦闘では、ロ軍部隊は攻撃力が弱まり、ウ軍陣地への攻撃も反撃に合い、ほとんどがすぐに撤退している。ウ軍の主力部隊は、南部ヘルソン州やザポリージャ州であるが、西側からの大砲やロケット砲の大量援助で、東部でもロ軍に砲撃を加えることができるようになった。

これにより、ロ軍が攻撃してもウ軍の砲撃に合うことで、ロ軍の損耗もその分、大きくなっている。

そして、スラビアンスクの南に位置するバクムットには、ロシアは傭兵会社ワグナー部隊を使い攻撃していたが、リシチャンスク方面に傭兵会社ワグナー部隊を移動させたようで、フリホリツカなどで激戦になっている。正規軍の兵員不足で、戦闘の多くの部分をワグナー部隊に割り当て始めている

しかし、最強のワグナー部隊がくると、ウ軍も苦戦している。ワグナーはロシアの刑務所から囚人を恩赦を餌に動員しているので、正規軍より兵員がいることによるが、それでも、この部隊の損耗も大きくなっているようだ。

ウ軍が苦戦する理由が、囚人を突撃させて、ウ軍火砲の位置を確かめ、そこを砲撃する。このために囚人を利用しているからだ。よって、囚人部隊の損耗は激しいようである。どんどん囚人を募集して、1ヶ月の訓練後、前線に送っている。

しかし、兵站を攻撃されて弾薬不足からロ軍の砲撃の頻度が少なくなり、逆にウ軍は、大量の大砲と弾薬を西側諸国から供与されて、砲撃量が大幅に増加して、砲撃戦でも同等になってきた。まだ差があるが、以前と比べて差が縮小している。

このため、Pzh2000自走砲を15両供与したが、その内8両が砲身寿命で現在使用できない状態だという。それだけ、大量に砲撃をしているということである。

しかし、ドネツク方面では、ロ軍TOS-1が猛烈に砲撃して、ウ軍苦戦中になっている。ロ軍も一点集中で戦果を上げようとしている。

ザポリージャ方面でも、ウ軍とロ軍が砲撃戦をしているが、激しい戦闘にはなっていない。増員したロ軍は陣地を構築して、立てこもっているようだ。このため、静かである。

そして、サポリージャ原発では、核を盾にして、ロ軍の武器などの保管場所をしているが、原発に対して、砲撃もあり、ロ軍、ウ軍がお互いに非難している。このため、IAEAが両国に査定の承認を求めたが、ロシアは拒否した。

南部ヘルソン州ではウ軍は、HIMARSやM270などで、ロ軍の指揮所、弾薬庫、兵員宿舎、陣地、兵站拠点など多数を攻撃している。アントノフスキー橋をロ軍が修復して、通行できるようになった途端、再度砲撃して通行不能にした。次にカホフカ橋を砲撃して、通行不能にしたが、同じ場所にあるノバカホフカのダムを壊さないで、橋だけを破壊するという曲芸をウ軍は披露している。

これにより、ヘルソン州のドニエプル川右岸では補給の問題が出ている。ドニエプル川を渡る橋がすべてなくなった。ヘルソン市周辺のドニエプル川でのフェリーによる輸送しかない。非常に限定的な補給しかできないことになった。大量の装甲車両も運べなくなっている。

このため、ヘルソン州全体を指揮するロ軍司令部がヘルソン市街地(ドニプロ川の右岸)から後退し、ドニプロ川の左岸に移動した。このためか、30の大隊戦術群(BTG)がいるはずのヘルソン州中西部などでのロ軍の攻撃もきわめて少ない。

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それと、5月から始まった英国のウ軍新兵教育が終了して、今後毎月1万名の新兵が戦場に出てくることになる。1万人ということは、3個旅団分の人員が戦場に新しく投入できることになる。

このようなことで、1年以内にヘルソン州を解放すると、ウ軍現地司令官は述べているが、ドニエプル川右岸の可能性はあるが、川左岸はどうであろうか?

もう1つ、ウ軍に対レーダーミサイルのAGM-88HARMが供与されて、ロ軍の防空システムのレーダーを最初の3日で17基も破壊したようであり、電子兵器クラハ8も同様に破壊されている。このため、ウ軍のミサイルやロケット、航空機、ドローンを迎撃できなくなっている。

その上、マリウポリの対岸にあるロシア南部イエスクの石油備蓄施設で爆発火災があるとか、クリミア半島の東側の付け根チョンガル付近で大規模爆発とか、クリミア半島のノバフェドロフカのサキ海軍航空基地で、複数回の大規模爆発が起きたとかウ軍の攻撃が続いている。

爆発時に飛行弾道が見えないことから、巡航ミサイルや航空機による爆弾投下ではなく、パルチザンの攻撃でもなく、弾道ミサイルによる攻撃のようである。

パルチザンでは、このような大きな爆発物を複数個、基地内に気が付かれずに持っていくことは不可能である。ウ軍の特殊部隊の成果であるとウ軍は公表したが、それもない。

そして、サキ海軍航空基地のあるクリミア半島から脱出するロシア系住民や観光客の車列でクリミア大橋(ケルチ橋)は、大渋滞した。クリミア半島のロシア系住民もやっと、避難し始めたようだ。

この成果は、ヘルソン州の北中部ロゾベのウ軍橋頭保への空爆も少なくなったことでもわかる。

このサキ海軍航空基地への攻撃に対して、ロ軍は安全規則違反による爆発であり、死亡は1人、航空機は損傷していないと声明しているが、衛星写真では8機のSU24とSU30が完全に破壊され、多数が損傷しているし、ウ軍は操縦士や技術者ら60人が死亡、100人が負傷したとの分析を明らかにした。相当に大きな損害であったことになる。

なぜ、ロ軍はウ軍の攻撃ではなく、自軍の過失というのか不思議であるが、メドベーシェフ前大統領が「クリミア半島への攻撃は、即審判を受ける結果になる」と発言し、この意味は限定的核兵器使用をすることだ。

しかし、これを使用すると、世界的な批判とNATO軍からの核報復を覚悟する必要があり、プーチンは核使用を躊躇しているようである。

対して、ゼレンスキーの演説では、「戦争はロシアのクリミア半島占領から始まった。半島の解放で終わらなければならない」と述べている。このクリミア半島解放を始めるということのようだ。

ということで、クリミア半島も戦火が及ぶことになるが、トルコ政府は、外国籍のクリミア・タタール人に長期居住権を与えるとし、通常8年間のトルコでの居住歴が必要だが、それも免除され長期居住権がもらえるとなり、クリミア半島から大量のタタール人がトルコに出ていくことになる。

しかし、イエスクもチョンガルもサキ基地もウ軍支配地から200km以上も離れている。このため、攻撃がHIMARSのロケット弾ではない。

何で攻撃かとなり、射程300kmの対艦ミサイルのネプチューンを地上攻撃用に改造した可能性とか、ウクライナは独自で、ロ軍のイスカンダル短距離ミサイルと同等なミサイルを開発中で、それが実戦で使われた可能性とか、秘密裏にATACMSを供与されていて、それをNATO承認の元で使用とか、いろいろと言われている。

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しかし、米軍は、米国製兵器を使用していないと声明を出したので、ATACMS使用の可能性はなくなったようだ。

しかし、どれでも、もう少しでケルチ橋も攻撃できることになる。そして、このような長距離弾道弾をウクライナが手に入れたとするなら、今後の展開は、大きく変わることになる。

もう1つ、ベラルーシ南東部のロ軍の管理下にあるジャブラフカ飛行場でも8回の大きな爆発が起きたが、国境から20kmの所にあるので、ウ軍HIMARSの攻撃を受けたようだ。ウ軍は現地パルチザンが攻撃したと声明を出し、ウ軍の攻撃を否定している。

しかし、ベラルーシは、エンジン火災の事故という。ベラルーシ軍の1万3,000人程度はロ軍とともに戦うことを了承したというが、ウクライナは、警告の意味で、ベラルーシの空港を攻撃したように見える。

ロシアもベラルーシ軍の意向を汲み、8月の下旬、カザフスタンとの国境に近いアストラハン州のアシュルクで、ロ軍とベラルーシ軍が合同軍事演習を行う。もしかして、カザフスタン侵攻を行うのであろうか?

ロシアは、CCCP(ミニソ連邦)への移行の準備をしているので、この1つにカザフも入れようとしているのかもしれない。どちらにしても、プーチンは「ソ連邦再建の夢」を実現したいようである。しかし、ウクライナとの戦争の上に、カザフスタン侵攻はおかしい。

もしかして、プーチンにウクライナでのロ軍の状況が入っていずに、勝っていると思い、次の目標をカザフにした可能性がある。独裁者に戦場の真実が入らない可能性を考えるしか理解できない。

これに対して、欧米は、ウクライナにテコ入れをして、ロシアの夢を潰す方向で援助を拡大するようである。その1つにA-10サンダーボルト2攻撃機の供与が実現しそうである。このA-10はロシアとの戦車戦に対抗する目的で開発された機体であり、ウ軍の反転攻撃時には、強力な武器になる。

それと、ロシアは敗戦に向けて、軍事力の消耗が著しいことになっている。最近鹵獲されたロシア軍のT-80BVM戦車の爆発反応装甲の蓋を開けて見ると、鉛のはずがゴムの板しか入っていない物や何もないものまである。形だけの爆発反応装甲である。退役した戦車を管理庫から出し、形だけの爆発反応装甲を付けて戦場に送り出しているようである。汚職が蔓延するロ軍はどうしようもない。その上、独裁者には真実を伝えることもできない。

ロシアには、ソ連時代の大量の退役兵器があり、それを管理庫から出して、前線に送り出しているが、兵員と弾薬・食糧は補給しないと兵器だけでは、何の価値もない。この兵站部分をウ軍に狙われているので、南部ヘルソンではロ軍は攻撃できない事態になってきた。

現時点は全前線で膠着状態であるが、ウ軍への西側からの武器援助と新兵補充が整った時点で、南部から奪還の反撃が始まるようだ。

そろそろ、ロシア敗戦に向けて、次の世界秩序を考えて、その準備をする必要になってきたように見える。

どうも、中国もロシア敗戦を織り込み、特にカザフスタン攻撃をロシアが行う可能性が出て、米国と調整したいようである。

11月米国の中間選挙後に、米中首脳会談を行うように習主席は、米バイデン大統領に要請した。

次の世界秩序構築を中国も見て、動き始めたようだ。

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ロシア敗戦後の世界秩序

ロシア敗戦は、クリミア半島やウクライナ全土の占領地を失い、プーチンの亡命や暗殺で終わる。

すでに、シリアへの亡命を準備しているとも聞く。

しかし、なぜロシアはカザフスタン攻撃を準備するのか、訳が分からない。中国を敵にすることになる。カザフは、中国に相談して、外交政策をしているので、プーチンは血迷ったとしか思えない。

どうも、民族国家は、他国への侵略を意図しないが、多民族を統治する帝国では、国家統一のために、敵を作る必要があり、常に戦争が必要になっているようだ。それも勝てる戦争である。

米国も常に戦争をしている。この意図は国家の分断を阻止する必要からで、敵を作ることで国家統一を維持している。今、米国内中西部と沿岸地域に国論が分裂しているが、それぞれの地域の人たちの性格が違い、かつ民族などの連帯を維持する要素もないことで、他地域の人たちを理解できない。

これは、ロシアや中国でも同じである。米国は民主主義を発展させるという理想で国家を維持してきたが、貧富の差が大きくなり、その理想での国家維持ができなくなってきている。

一方、ロシアと中国は、国家を拡大する方向で国民を統合しているので、どうしても、領土拡大を目指すことになる。勝つ戦争の志向が国家統治の面からも、組み込まれている。

そして、米国の力と中国の力とロシアの力がぶつかりあうと、大戦争になる。米国は民族国家を助けて、民主主義を守るという理想があり、ロシアと中国とは反対方向である。

今、ロシアはウクライナへ侵略したが、これを認めると、次の侵略を繰り返すことになる。カザフへの侵略もウクライナでは、これ以上戦争に勝てないので、勝てる戦争として、弱いカザフを狙うことになる。勝てないと経済困窮を説明できないから、どうしても勝てる戦争が必要になっている。

中国もカザフへの影響力があり、中国でも勝つ戦争願望のロシアの行動を容認できない状況になってきたので、カザフを巡り、米中がタッグを組みそうである。

もう1つが、米国の対中経済制裁で、中国は現在でも不動産不況から金融不況と複合不況になりそうであり、その上に西側企業の撤退や中国企業のNY株式市場上場廃止になると、中国経済が持たないことになる。このため、中国も正式にロシアと敵対することで、米国の対中経済制裁を緩めたいようである。

しかし、そうすると、ロシアの敗戦が必然となる。このため、ロシア敗戦後の世界秩序を考える必要になる。

中央アジア諸国の支配権は中国に譲ることは仕方がない。ロシアをどうするのかである。

ロシアの民主化は必然となり、ナヴァーリヌイ氏を民主化のトップに据えることになる。しかし、これだけでは、また「ロシアの夢」を将来、言う人が出てしまう。

ということで、ロシア連邦の民族国家化であろう。ロシア内の共和国を分離独立させて、帝国化を防ぐしかない。

中国はロシア沿海州を自国領土であり、その返還を要求してくる。日本も千島列島、樺太の領有権を主張すればよい。というように、シベリアの自国領土化を中国、モンゴル、日本が主張するはずであり、北方領土以外は、住民投票で決めることにすればよい。

となるはず。それに向けて、日本も中国、モンゴルと調整することである。林外相は、中国との関係が良いので、打って付けである。

ロシアの共和国が民族国家化した後、日本は中国けん制のために、シベリアの民族国家群と経済安全共同体を構築して、中国包囲網を作る必要がある。というような、大まかな構想をもって、政治家は、日本を指導してほしいものだ。

ロシアとベラルーシのカザフ攻撃準備で、事態が大きく変化しているようだ。

さあ、どうなりますか?

(『 国際戦略コラム有料版 国際戦略コラム有料版 』2022年8月15日号より一部抜粋、続きは ご登録 ご登録 の上お楽しみください。 初月無料 初月無料 です)

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image by: Shag 7799 / Shutterstock.com

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