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プーチンの“怒りの炎”に油を注ぐ「クリミア攻撃」ゼレンスキーが犯した大失策

世界中の戦闘終結の願いも虚しく、開戦から7カ月目に突入したウクライナ戦争。現在膠着状態が続くこの戦争はまた、地球上の至る所に「綻び」を表出させているようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、それら綻びの数々を列挙し各々について詳しく解説。さらに日本が置かれている厳しい安全保障環境を紹介するとともに、それが決してウクライナ戦争と無関係ではないことを強調しています。

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混乱を極める世界で何が起きているか?

先週末より、これまであまり報じられなかったが、実はずっとくすぶり続けていた懸念事項が一気に爆発し、表出してきた気がいたします。

報道はそれでもロシアによるウクライナ侵攻をめぐる情報ばかりですが、その裏では、先週、触れたコソボ問題をはじめ、イラク・イラン、アフガニスタンの混乱と悲劇から、中台間の緊張の高まり、軍事演習を通じた中ロ印の間での綱引き、タイのプラユット政権の揺らぎやロヒンギャ問題をはじめとするミャンマー情勢の混乱など、今後、国際情勢を一気に極限の混乱に陥れ、まさにカオスを引き起こしかねない題材が勢ぞろいです。

【関連】あの「悪夢の紛争」が再燃か?ウクライナ戦争の裏側で燻る新たな火種

それらすべてをカバーすることは不可能ですが、今週号ではすでに情報が得られたものをピックアップしてお伝えします。

最初は【ウクライナ情勢】についてです。

このところ欧米から供与された武器が功を奏し、ウクライナ軍がロシア軍に対して反攻を加え、南部へルソン州やクリミア半島で勢力を挽回しているというニュースが伝えられています。

「ロシアの弾薬がもう底をつき始めている」

「欧米諸国と友人たちによる制裁が効き始めている」

「アメリカから供与されるハイマースなどの武器が、ウクライナ軍に力を与え、今ではロシアを押し返している」

いろいろとウクライナの善戦を伝える内容がもたらされ、その勢いに乗るかのように、ゼレンスキー大統領は「ウクライナに属するすべての領土・権益を取り戻すまで戦う」と再度、勇ましいコメントを配信しています。

ロシアによるウクライナ侵攻から半年が過ぎて、ウクライナ疲れが目立ちだした中、再度、国際社会の関心をウクライナに向けさせ、支援レベルを復活させようという狙いが見えますが、私たちは少し落ち着いて状況を見極める必要があるかもしれません。

その一例が「ロシアの弾薬は底をつき始めている」という情報ですが、これに対してはNATOの一角を担い、対ロシア強硬姿勢を取るドイツの連邦軍幹部が「ウクライナ軍はNATOの支援を受けてロシア軍を押し返しているが、ロシア側の弾薬が切れ、かつ戦意を喪失しているというのは恐らく正しくはない。ロシアは一日数万発の弾薬をウクライナに対して用い、そのなかには旧式でありつつも威力がかなり大きいものがあり、無差別攻撃に投入するだけの余力は持っているようだ」との見解を示しているのは、一考の価値があるのではないかと思います。

ハイマースなどの射程が長く、誘導機能も優れている武器を、トルコから供与されているドローンによる位置把握と合わせることで、確かにロシアの弾薬庫を破壊したり、補給路を断ったりする戦果は挙げていますが、まだまだロシアは量でウクライナに勝っており、一気にウクライナ軍が失地を挽回できるほど事態は甘くないということを物語っているのだと考えます。

そして今回、ロシア側の闘争心に再度点火する可能性がある事態が、クリミア半島への攻撃です。

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2014年に「ロシア人同胞の権利を守る」という旗印の下、緑の戦車部隊と情報戦でロシアが一気にクリミア半島を併合してしまいました。その後、「クリミア半島を取り戻せ」がNATOやその仲間たちの合言葉になり、反プーチン大統領勢力の旗印になっていますが、普段からよく意見交換をしているストラテジストたち曰く、「ウクライナがこの時点でクリミアに触ってしまったのは、戦略上、賢明とは思えない」とのことで、「これを機に、まとまりを欠いてきていたロシア軍の眠りを覚まし、ウクライナに対して決定的な攻勢に出させる機運を高めることにつながるのではないか」と考えているようです。

2014年のクリミア半島の併合は、プーチン大統領にとってはサクセスストーリーとして扱われており、また同時に、旧ソ連解体後一度は近づこうとした欧米諸国との決別を意味する大事な契機と言え、今でも続く高い支持率の基盤となっている事項だと考えられています。ロシア海軍の港での相次ぐ爆破事件は、実行犯は公にはなっていませんが、恐らくウクライナ軍の特殊部隊(注:英国に訓練されているグループ)による仕業と言われており、ウクライナ側もそれを否定していないことから、プーチン大統領とその周辺、そしてロシア軍内での怒りの火に油を注ぐことになったという見解です。

個人的にはクリミア半島をロシアが一方的に併合したことは受け入れられないことですが、戦略的には、「今回のロシアによるウクライナ侵攻の失敗を印象付けるための最後のトドメ」として残しておいてもよかったのではないかと考えます。

ちなみに、一説によると8月30日に亡くなったゴルバチョフ大統領も、それまではプーチン大統領の方針を非難していたにもかかわらず、2014年のクリミア半島併合については支持していたほどで、今回のウクライナ侵攻への非難とは、あえて分けていたとのことですから、「ロシア国内でも反プーチン大統領の勢力が増えてきている」と嬉々として伝える報道内容がどこまで信頼に値するかは疑問ではないでしょうか。

ペスコフ大統領府報道官のようにプーチン大統領のスポークスマンとして表立って発言する人は別としても、クリミア半島へのロシア人の思い入れは侮れませんし、特に自らのサクセスストーリーに泥を塗ったウクライナにどのような一撃をプーチン大統領が加えようとするのか、とても気になります。

次に非常に気になるのがウクライナ南部にあり、欧州最大の原発であるザポリージャ原発を巡る攻防の行方です。

ロシア軍が原発内に駐留し、発電所と関連施設を手中に収めている中、ザポリージャ原発内の施設への攻撃が増加しています。原子炉から100メートルの位置に砲撃が…という背筋が凍りそうな情報も多数ありますが、それが誰の仕業か、こちらもまた真相はわかりません。

一説には「ロシア軍はかなり追い詰められており、やむを得ず原発を盾にウクライナからの攻勢を弱めようとしている」といった内容や、「ウクライナのみならず、ウクライナを支援する周辺国、欧州各国も、場合によっては巻き添えを食らうという状況を作り出しているのだ」という情報もありますが、強ち(あながち)偽りとは言えないでしょうが、これもまた事実とも異なるような気がしています。

ただ原発への偶発的な攻撃が生みかねない影響は、福島第一原発事故の記憶およびチェルノービレ(チェルノブイリ)原発事故の記憶が鮮明に残っている私たちにとっては恐怖以外の何でもなく、原発を戦闘に巻き込もうとしていることは行き過ぎだと思われます。

国際社会の懸念の高まりを受け、原子力の平和利用の確保を司るIAEAの調査団(グロッシー事務局長を含む)がザポリージャ原発の状況を調査すべくウクライナ入りしていますが、その効果は未知数です。

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一応、ロシア政府は協力の姿勢を示していますが、原発からのロシア軍の撤退は「今回の受け入れの議題にはない」と受け入れない姿勢で、現在、原発をコントロールしているロシア軍がどれほど協力的かはわかりませんし、恐らくさほど期待はできないでしょう。

そうすると、IAEAの調査団による調査の有効性に疑問が呈されることになります。

今回の調査は本格的になるのか?それともただの見せかけなのか?

それはこれから見えてくると思いますが、各国の原子力の専門家は「本気なら、長期にわたって調査団はザポリージャ原発に残り、事態を見極めないといけない」と発言し、IAEAが計画している数日間の“調査”の有効性に疑問を呈しています。

とはいえ、長期に原発内に留まるのは、言い換えると国際的な専門家たちを今回の紛争における“人間の盾”化してしまうことも意味しますので、今回の調査団を“いかに有効的に使うか”を戦略的に考える必要があります。

ロシアが原発に駐留しているのは、切羽詰まっているからというよりは、戦闘とは別にウクライナ経済の生活インフラを締め上げるという別の作戦であると思われます。

それは、ちょっと強引かもしれませんが、ロシアに重度の制裁を課す欧州各国への“復讐”としてパイプラインのバルブを閉め、欧州各国(ドイツ、フィンランドなど)を締め上げている戦略に似ている気がします。

そしてロシアが切羽詰まっているか否かについては、4年ぶりに開催される大規模な軍事演習(東方戦線対応)の様子を見ればわかってくるかと思います。

そこに中国のみならず、中国を警戒し、ロシアとの適切な距離を保ちたいインドも参加し、他にスタン系の国々を含め、計12か国の軍が参加するのを、私たちはどう評価すべきでしょうか?

ロシアにはまだ余力があるのか?ロシアの関心は、中国と共に、東にも向けられているのか?ロシアとしては制裁を嘲笑うかのように、自らの支持者の存在を示したいのか?

これらの問いへの答えは、しばらくすると見えてくると思います。

さて、ここでウクライナ情勢から離れますが、ウクライナを舞台に鮮明化した綻びは至る所で表出してきています。

その一例が、イラクで爆発した大規模な武力対立です。

先の総選挙で多くの支持をえたサドル派(シーア派)は経済的に困窮する民からの支持を得ており、現政権がアメリカ撤退後のイラクの状況を改善できていないことに反発して、派の長であるサドル師(自らは議員ではない)が現政権の無能さに抗議するために政治からの引退を表明し、それに呼応した支持者たちが大規模デモを起こし、それが今週、武力による対立に発展したというシナリオです。

サドル師の“引退”宣言は実際にはサドル派を支持する民衆を動員するための作戦だと思われますが、結果として、ただでさえ政治基盤が脆弱な現政権の無力さがクローズアップされ、元々問題視されていた民族間・宗派間のいざこざに再点火して、今や、全土的な対立に発展しています。

まさしく内戦状態です。

その異常さは、首都バクダッドで政府機関が集まり、かつ外国の公館が集まるGreen Zone(イメージでは、東京の永田町・霞が関!?)まで紛争の火の粉は及んでおり、政府機能がマヒしていることを国内外に示す羽目になっています。

異常な状態を受け、イランは国境を閉じ、イラクへの直行便も止めるという措置を取っていますし、各国も大使館員を国外に避難させる措置を取ったようです。

ちなみに、サドル師はシーア派ですので、イランの暗躍が疑われそうですが、サドル派はイランとも対立関係にあるとされ、イラン政府も公式にも非公式にも関与を否定し、火の粉が飛んでこないように気を付けているようです。

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これが何を生むかと言えば、残念ながら一度は勢力を失ったとされるISの復活の兆しで、それはイラクの国としてのintegrityを失わせ、周辺国に対して再度、恐怖を投射することに繋がっています。

そしてそれは、滅茶苦茶にするだけして立ち去ったアメリカ政府とアメリカ軍への非難にもつながっているのですが、その影響については、またの機会に。

アメリカが立ち去り、ISが台頭し始めたと言えば、アフガニスタンを襲っている悲劇から目をそらすわけにはいきません。

8月30日で米軍の最後の飛行機がカブール国際空港を飛び立ってからちょうど1年が経ちますが、支配を取り戻したタリバン勢力は、国際的に正当な政府として承認されていないばかりか、日々、ISなどからのテロ攻撃に遭い、アフガニスタンに安定をもたらすことができていません。

アフガニスタンも例外なく、コロナのパンデミックの影響を受け、そこに大地震などの災害にも見舞われたことで、国民生活は破綻し、栄養失調の子供の割合が異常なレベルに達しているようですが、タリバン勢力に対する政府承認がまだほとんど存在しない中、国連も緊急安保理会議を開催したものの、懸念が表明されるだけで具体的な策が講じられないという悪循環に苦しめられています。

タリバンと言えば、女性の権利をはく奪しているという点がよく非難対象でクローズアップされますが、それ以外にもまったく国を動かすにあたってのキャパシティーが足りていない点を無視することはできません。

結果的にISによるテロを生み、それを抑えるために、一度は縁を切ったはずのアルカイダとの接触が噂されるなど、状況は悪化の一途を辿っています。

「イラクの状況や、アフガニスタンの状況のひどさについては分かったけど、それがウクライナとどう関係があるのか?」という質問があるかもしれませんが、これらのケースでも、ウクライナでの戦争で生じた国際社会の分断が影響しています。

イラクやアフガニスタンのケースに対しては、ウクライナ前は、主導権争いは存在しても、欧米諸国も、日本も、ロシアも中国も、そして周辺国も、経済的な権益の拡大という狙いの下に支援が行われてきました。それらの支援は国連を通じたものが多く、必ずしも効率的に支援が行われたとは言えませんが、まだ“協調介入”という特徴は残っていました。

ウクライナでの戦争がはじまり、世界が三極化する中、イラクやアフガニスタン、ミャンマーなどでの混乱や悲劇に対する非難や懸念の表明は行われるものの、支援とは程遠く、あくまでも“自らのサイド(極)に引き付けるため”という政治目的を持った接触に過ぎず、腰の据わった寄り添う形の支援は行われていません(ちなみに、ミャンマーのケースは別として、この寄り添い型の支援が上手なのが実は日本で、支援は継続されています)。

「とても気にはなるし、懸念を持っているけれど、今は具体的な策は講じられない」

ウクライナでの戦争をめぐる“陣地争い”の下、イラクもアフガニスタンも、じつは国際協調や支援が行き届かない悲劇の象徴になってしまっています。

これにはいろいろな方からご批判や非難があるかもしれませんが、もし私の思い過ごしや誤解であれば、指摘してくださいね。

しかし、私の知る限りでは、イラクやアフガニスタンの惨状については、皆、話すたびにため息をつき、懸念を述べるのですが、手は差し伸べられていないのが現状でしょう(そして、先週号で触れた第3極の国々にとっても、イラクやアフガニスタンは対象外のようです)。

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イラクやアフガニスタンから国際的な関心や具体的な策を奪っているのが、中台間で目立ってきた緊張の高まりです。

ペロシ議長の訪台に始まり、私の記憶が正しければ、8月末までに4回、アメリカの連邦議会議員団が台湾を訪れ、アメリカの台湾支持を明確に打ち出しています。

これはペロシ議長の訪台後の「台湾は、アメリカにとって本当に支援する相手かどうかを見極めに行ったが、まさに中国に面しつつ、民主主義を堅持する友人であることが明らかになった」という発言を受けての大きな波ですが、10月16日に5年に一度の共産党大会を控え、自らの3期目の承認を控える習近平国家主席とその指導部にとっては、看過できない状況を作り出しています。

実弾を用いた大規模かつ本格的な軍事演習の実施や、経済的な制裁措置などを用いて台湾への圧力をかける北京政府ですが、アメリカの後ろ盾を得たと信じている蔡英文総統も負けじと最前線に赴き、中国への徹底抗戦を宣言して、もう双方、振り上げた拳を下げるタイミングを逸している状況になっています。

どこまでバイデン政権の対中・対台湾政策と合致しているかは精査が必要ですが、確実に11月以降の火種が生まれていることは確実でしょう。

ここでカギとなるのが、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて欧米諸国がロシアに課した経済制裁が“本当に”どれほど効いているのかという内容についての精査結果です。

全く効果がないとは言えませんが、かといって当初、予定していたほどの効果は出ておらず、天然ガスというエネルギー資源、金属や木材の資源、穀物…様々な“もの”を武器に、対ロ制裁の包囲網が崩されているのは事実です。

欧州各国については、エネルギーというインフラを握られ、ノルドストリームI経由のガス供給をテコに、プーチン大統領との我慢比べを強いられています。結果として、口先では厳しい口調でも、実際の制裁措置については及び腰になっているNATOの国もあります。

そこに第3極のインドがロシア産の石油と天然ガスを引き受けて、精製の上、国際マーケットに流すという“穴”が生じていますし、エネルギー需要が増え続ける中国も安価にロシアから供給を受けることで恩恵を被っています。そしてトルコについては、ウクライナにドローン兵器を売りつけながら、ロシアともしっかりと交易を続けていますし、UAEもサウジアラビア王国もロシアと非常に密接な関係を保つことで、経済的な恩恵を受けています(UAEについては、ドバイ─モスクワ間でエミレーツ航空が毎日7便直行便を運航しており、ほぼ満席だとか)。

このような距離感は、中国との距離感や台湾との距離感にも直接的に反映されています。

以前にもお話ししましたが、サウジアラビア王国もUAEも、多くのアフリカ諸国も、中国との関係を重視して、台湾関連の国際案件にはことごとく反対票を投じますし、中国が主張する“台湾観”に対して賛同し、欧米諸国を中心に、台湾海峡の問題を国際案件にすることに強く反対するという勢力となっています。

この勢力、ロシアによるウクライナ侵攻に対する各国の反応をベースに見えてきた第三極の国々と見事に一致します。

そうしてみた時、ちょっと注意深くシナリオを練ってみてくださいね。

仮に中台間で武力衝突が起きた際、どのような状況が見られるでしょうか?

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一つ目は国際的な対中制裁の発動にどれほどの国々が賛同するかですが、これはほぼ、今回のロシアに対する制裁への賛同国・反対国・棄権国のリストと一致してくるものと思われます。

おまけにロシア経済の規模(世界第10位か11位)に比べると、中国の経済規模はかなり大きく、どこまで世界1位か2位と言われる中国経済に“楯突くことができるか”を考えた際、ロシアに対するケースよりも、経済制裁の効果は薄れるでしょう。

そして、インドは知りませんが、中東諸国は、中国と25年間にわたる戦略的パートナーシップ協定を結ぶイランも含め、中国をバックアップすることになると予想されます。ゆえに、対中経済制裁は、さほど影響を持たないと思われます。

二つ目は、軍事的な視点です。これは今回のロシアによるウクライナ侵攻の状況を見れば分かります。ロシアの侵攻に対しては各国から非難が寄せられ、欧米諸国については、NATOの枠組みを通じた武器弾薬の支援が行われていますが、ロシアと直接的に軍事的な対峙は行っていません。

この状況に鑑みると、仮に中国が台湾に対して軍事侵攻を行った場合、各国からの非難は寄せられるでしょうが、軍事面では直接的に対中戦に参加せず、あくまでも台湾支援に限られるように思われます。

言い換えると、アメリカは台湾を全面的に支援するというものの、台湾有事の際に軍事介入はしてくれないと思われます。

勝手な妄想かもしれませんが、菅政権時代にバイデン大統領との間で「日本の防衛力強化」と「アジア太平洋地域における役割の増大」について合意されていますが、少し穿った考え方をしますと、台湾有事が勃発した際、極論を言えば、米軍は直接的には動かず、台湾と日本に軍事的な支援を行って、中国への対峙の最前線を台湾と日本に“押し付ける”ような気がしてなりません。

以前、中国の軍関係者やストラテジストと話した際には「日本と戦うなんて大それたことは考えていない。中国は中越戦争以降、実戦を経験していないし、ましてや世界を相手に戦ったことは近代においてはない。負けてもアメリカや世界と戦った日本の恐ろしさはよく知っている」とのことでしたが、有事の際、もし日本が意図せず、アメリカに支えられる形式で前線にいて、中国と対峙していたとしたらどうでしょうか。

そしてそこに北朝鮮がちょっかいを出して来たら?そして、その時、韓国はどちら側についているのか?そして、今回の4年ぶりの大規模軍事演習が“東”を対象にしているロシアはその時、どのように動くか?

このように考えたら、大げさかもしれませんが、我が国日本を取り巻く安全保障環境はとてつもなく厳しいものであることは想像できるかと思います。

そして、それは、決して現在進行形のウクライナでの戦争とは無関係ではないこともお分かりになるかと思います。

まとまりのない内容になったかもしれませんし、突拍子もないようなお話だとお感じになるかもしれません。

しかし、国際情勢を俯瞰的に眺めてみた際、このような分析もあるのだとお考えいただき、皆さんのお考えの一助にして頂ければ幸いです。

以上、国際情勢の裏側でした。

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image by: Pavlovska Yevheniia / Shutterstock.com

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世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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