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Beautiful Woman Holding a Card Arm Extended with #MeToo written on it

なぜ香川照之は許されてしまうのか?セクハラに甘すぎる日本芸能界の闇

アメリカをはじめ、海外では盛り上がっていた#MeToo運動ですが、日本にはほとんど無縁でした。セクハラなどが起こっている現実があるにもかかわらず、日本人はなぜ#MeToo運動に参加しなかったのでしょうか。今回のメルマガ『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』では著者でジャーナリストの伊東森さんが、 報道された香川照之のスキャンダルから、海外と日本の人権の扱いの違いについて語り、日本の芸能界の闇にも迫っています。

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香川照之の性加害スキャンダルにみる 日本の芸能界の闇 所詮はCM=本業 テレビ・ドラマ出演=副業という現実

香川照之のスキャンダル報道が収まらない。「デイリー新潮」の第1報後、香川の所属事務所はすぐに謝罪コメントをリリース。香川もMCを務めるTBS系の『THE TIME』で謝罪。

スキャンダル自体は極めて悪質ではあるものの、しかし3年前のことであり、性被害者が訴えたのは香川ではなく銀座のクラブであり、被害者との示談も成立していたため、その後、数日間は、やや報道がトーンダウンした様子も。

しかし、8月31日に再び、「デイリー新潮」が新しい証拠として、当時の写真を掲載。さらにそれを追うように「文春オンライン」も報じたことで、空気は一変する。

TBSは『THE TIME』の降板を発表。NHKも『香川照之の昆虫すごいぜ!』(NHK Eテレ)の今後の放送と再放送の予定がないことを発表。

トヨタ自動車とセゾン自動車火災保険は出演CMの放送見合わせを発表、他の企業も続いた。

他方で、香川は、これまで酒席での様子を報じられたことがあり、酒癖に関する噂話を業界内で何度もあったのにも関わらず、香川がこれまで「野放し」であったことの社会的責任も重い。

2010年代後半、海外では#MeToo運動が盛り上がったのにもかかわらず、日本だけが無縁だったのは、所詮は“人権後進国”ニッポンの現れ。

香川は元より、香川を重宝し続けた、テレビ局、そしてCMに出演させ続けた企業も同様に罪がある。

目次

・アメリカの場合 ハリウッドの大物プロデューサーがセクハラ80件で禁錮23年 #MeTooへ
・違約金「5億円」は本当か?
・CM=本業 テレビ・ドラマ出演=副業という日本の芸能界の現実

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アメリカの場合 ハリウッドの大物プロデューサーがセクハラ80件で禁錮23年 #MeTooへ

そもそも、総じて日本はセクハラに甘い。2015年に元TBS記者の山口敬之氏が記者志望である女性、伊藤詩織さんに薬物を飲ませてレイプしたとして訴えられた事件があった。

伊藤さんは刑事訴訟を起こしたものの、証拠不十分で不起訴。その後、伊藤さんは検察審査会に申し立てたが、ここでも「不起訴相当」の議決。

伊藤さんはさらに民事訴訟を起こし、2審東京高裁判決は伊藤さんが受けた性被害に関して山口氏に約332万円の損害賠償を命じる一方、伊藤さんにも事件の経緯を記した著書などで相手の名誉を毀損したとして55万円の支払いを命令。

ハリウッドの場合はどうか。

1990年代後半からハリウッド映画業界で成功を収め、数々のアカデミー賞作品を世に送り出してきたハーヴェイ・ワインスタイン(70)は、1992年以降、女優志望の若い女性80人に対し、レイプを含むセクハラ行為を働き、2020年に禁錮23年の判決を受けて服役している。

最初にワインスタインのセクハラ被害を訴えたのは、ローズ・マッゴーワン。その後、被害を受けた女性たちがTwitterで、

「#MeToo」

と名乗り上げた。

日本の場合、刑事裁判上の“重罪”が殺人事件だけに集中している印象受ける。他方、アメリカでは、殺人はなおさら、セクハラ、あるいは詐欺・汚職など「ホワイトカラー犯罪」と呼ばれる類の犯罪も相当な重罪だ。

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違約金「5億円」は本当か?

香川の銀座のクラブでの性加害疑惑が報じられたに後、CMや番組の打ち切り・降板が相次いだ。

このようななか、「違約金が5億円にのぼる」という報道もあった。しかし、実際には、日本における広告出演契約には、たとえばアメリカのような長い契約書に記載されてあるように損害額をどのように計算するかについて明記されていないという(*1)。

「打ち切りは各社の判断ではあるものの、原因が香川さんサイドにあることは明らかですから、契約期間中の残りの日数に応じて、契約金を返金するという流れになるかと思われます。

たとえば、契約期間があと半年残っていたとして、契約金6,000万円ならば、半分の3,000万円を返すということになります。

なので厳密にいえば、この3,000万円というのは、違約金でも損害賠償でもなく単純に契約金の返還と法律的には言えます。」芸能問題にくわしい河西邦剛弁護士(*2)

タレントの不祥事が起きるたびに、違約金◯億円越えか!」というニュースが駆けめぐるが、実際にはそのような金額はありえないようだ。

CM=本業 テレビ・ドラマ出演=副業という日本の芸能界の現実

日本ではたとえば同じ時期に何本ものCMに出演する女優や女性タレントのことをさして、「CMクイーン」とか「CM女王」というような言い方がなされる。

何社と契約しているか、CM契約額はいくらか、どのくらいの頻度でテレビCMや紙媒体の広告でそのタレント・女優の顔を見かけるかが、日本における芸能界の“人気”のバロメーターとなっている。

ところは、ショウビジネスの本場であるアメリカには「CMクイーン」という言葉は存在しない。つまりは、CM出演本数はアメリカでの人気の尺度にはなりえないのだ。

アメリカにおけるショウビジネスは、俳優のカテゴリ(住み分け)が明確に区別されている。映画俳優/テレビ俳優/舞台俳優/CM俳優/広告モデルといった具合に、それぞれの領域ははっきりと区別されている。

理由は、彼らはまずもって“アーティスト”であること。そして、当たり前だが、特定企業の商品を宣伝するために生きているのではないためだ。

そもそも、今回の香川スキャンダルでも明らかなように、“なんでもかんでも”メディアに露出することは明らかにリスクがある。

さらにいえば、日本の芸能人の場合、番組出演料やドラマ出演料よりCM契約金のほうが明らかに高い場合も。

つまりは、彼らの本業は所詮CM出演であり、番組・ドラマ出演は副業であるという現実がそこにはある。

(*1)弁護士ドットコムニュース「香川照之さんの違約金「5億円」はありえない? 性加害疑惑の報道でCM打ち切り相次ぐ」Yahoo!ニュース 2022年9月5日

(*2)弁護士ドットコムニュース、2022年9月5日

(『モリの新しい社会をデザインする ニュースレター(有料版)』2022年9月11日号より一部抜粋・文中一部敬称略)

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伊東 森(いとう・しん): ジャーナリスト。物書き歴11年。精神疾患歴23年。「新しい社会をデザインする」をテーマに情報発信。 1984年1月28日生まれ。幼少期を福岡県三潴郡大木町で過ごす。小学校時代から、福岡県大川市に居住。高校時代から、福岡市へ転居。 高校時代から、うつ病を発症。うつ病のなか、高校、予備校を経て東洋大学社会学部社会学科へ2006年に入学。2010年卒業。その後、病気療養をしつつ、様々なWEB記事を執筆。大学時代の専攻は、メディア学、スポーツ社会学。2021年より、ジャーナリストとして本格的に活動。

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