プーチンはなぜ動員を決意したのか?
動員令へのロシア国民の反発はものすごいものがあります。なぜでしょうか?
ロシア国民のほとんどが、「特別軍事作戦を支持している」といわれます。しかし、いままでロシア国民にとって、ウクライナ戦争は「他人事」でした。朝仕事にいって家に戻ってくる。テレビを見ると、「ロシア軍は今日も大戦果をあげました!」と報じている。男たちは、ビールを飲みながら、「いいぞ、いいぞ。がんばれロシア軍!」と応援する。こんな感じなのでしょう。
しかし、自分が戦争に行くとなると話は別です。女性たちにとっては、自分の父親、夫、息子たち、兄弟が戦場に送られる。これは、うまいものを食べながら、テレビを見て応援するのとは、全然別次元の話です。それで、ロシア全土で、動員に反対する大規模なデモが起こっています。
ところでプーチンは、なぜ不人気な動員を決断したのでしょうか?戦争のこれまでを振り返ってみましょう。
2月24日にウクライナへの侵攻を開始した時、ロシア国営のプロパガンディストたちは、「2~3日でキエフを制圧して、特別軍事作戦は終わる」といって笑っていました。
3月末、ロシア軍はキーウ(=キエフ)攻略を断念し、東部に戦力を集中しはじめます。プーチンの目標は、東部ルガンスク州、ドネツク州を完全制圧し、5月9日の戦勝記念日で勝利宣言をすることに変わったのです。ところが、5月9日になっても、ロシア軍は両州を制圧できませんでした。
7月3日、ロシア軍は「ルガンスク州全域を制圧した」と発表。これは、確かに戦果といえでしょう。プーチンは、「次はドネツク州だ!」と喜んだ。しかし、ロシア軍の進撃は、ここまでだったのです。
プーチンは、水面下で停戦に動き始めました。ウクライナへの要求は、
・ウクライナは、クリミアをロシア領と認める
・ウクライナは、ルガンスク人民共和国、ドネツク人民共和国の独立を認める
・ザポリージャ州、ヘルソン州をロシア領する
ことなど。ゼレンスキーは、当然こんな要求を受け入れることはできない。彼は、停戦交渉再開に応じませんでした。
プーチンは9月16日、ウズベキスタンでインドのモディ首相と会談した際、「私たちは全てをできるだけ早く終わらせたいと思っているが、ウクライナ側が交渉を拒否している」と語りました。これは、事実です。しかし、「ロシア側が無茶な要求をしている」のも事実。
では、停戦を望んでいたプーチンが、なぜ動員に踏み切ったのでしょうか?答えは、「ハリコフ州で、ロシア軍が大敗を喫し、敗走したこと」です。