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年金生活者支援給付金が停止してしまう「タイミング」を知っていますか?

令和元年から始まった『年金生活者支援給付金』。消費税が上がったことで生活に支障が出てしまう対策として制定されたものですが、この給付金はいつまで貰うことができて、停止する場合はどんな時なのでしょうか?今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座 』では、著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、 事例を用いて詳しく解説しています。

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消費税対策の為に始まった低年金者用の年金生活者支援給付金事例3つで復習!

こんばんは!年金アドバイザーのhirokiです。

1.令和元年10月からの消費税引き上げで導入された年金生活者支援給付金

令和元年10月から低年金者に対して一定の給付金が支払われる「年金生活者支援給付金制度」が始まり、既にあれから3年が経とうとしています。

なぜこのような給付金が支給されるようになったかというのは、令和元年10月から消費税が8%→10%になったので、消費税対策としての給付という意味合いですね。

消費税増税のように物価が上がるのに、年金額が変わらなければ年金額の価値が下がってしまうからですね。収入が変わらないのに、物価が上がると買いたいモノが今までのように買えなくなってくるので、そのための対策でもあります。

今までA商品が100円で買えてたのに、120円に物価が上がったら100円では買えなくなるからですね。物価が上がるというのはいろいろと生活が苦しくなってきます。

でも賃金もちゃんと上がればそんなに気にする事もないんですけどね。賃金や年金も上がらない中での物価のみの上昇は生活が苦しくなるだけです。

本当は、社会保険としての年金に上乗せ給付をするというのは、今まで保険料を支払った期間や保険料額で決まる年金制度に下駄を履かせる事になるという批判も多かったのですが、別の形の年金とは違う給付金として支払う事で合意しました。

なので年金振り込み時も、別々にして振り込まれます。これは社会保険制度とは別物だよって示したいわけですね。

この給付金案は民主党時代に低年金者に上乗せしろって事で考えられたものですが、当時はやや社会保険としての年金に組み込むような形だったので社会保険方式の原則を崩しかねないものでしたが、別物として給付金を支払うという事になりました。

いつまで支払われるのかと言えば、基本的には終身で支払われます。

ただし、全額を税金で支払っているため所得制限が設けられており、一定の所得がある人は給付金を受給する事が出来ません。

老齢年金の生活者支援給付金は公的年金収入+前年所得≦781,200円となっており、その金額を超えてくると給付金が停止となります。

いつまで停止されるのかというと、10月分から翌年9月分までが停止となっています。

停止されていたけど、前年所得が下がったという人はまた対象者に請求書が送られてきて10月分から受給する事が出来ます。

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さて、給付金の基準額は月額が令和4年度は5,020円で免除基準額は10,802円となっており、毎年度物価変動率によって変化します。

一般的な年金額は賃金変動率や物価変動率が加味されますが、給付金は物価変動率だけで変動します。

物価に変動するという事は、購買力の維持にはなるという事ですね。物価に変動すると言ったら、市役所から支給されてる各種手当(児童手当とか何か)なんかもそうです。

なぜ、一般的な年金のように賃金変動率を用いたりはしないのでしょうか?

年金というのは現役世代の給与の一部である保険料を年金としての財源として支払います。

給与の一定率を保険料として徴収するので、例えば彼らの賃金が上がれば徴収する保険料額も上がって、支払われる年金額も自動的に上がります。賃金が下がれば、その逆の事が起こりえます。

蛇足ですがこのやり方がどうして年金に最適なのかというと、年金というのは現役時代の一定率の価値を保障するものです。

例えば昭和48年の改正時に、現役時代の男子平均賃金の60%以上の給付を目指すものとなりました(今は50%以上を目標にしている)。

現役時代に対しての一定の年金価値を維持するには、賃金の伸びに連動するような仕組みにしなければいけなかったわけです。

よって、積立方式ではなく賦課方式に移行するしかありませんでした(ただし、平成12年改正時は65歳以上の人は賃金スライドではなく物価スライドする事に変更されました)。

では給付金はどうかというと賃金から支払ってないので、賃金変動率は使う事は出来ません。

全額税金で支払いますが、実質価値を維持するために物価変動率にくらいは合わせています。

次に、所得基準額はどうして781,200円(令和4年10月からは778,700円)なのでしょうか?

なんとなく基礎年金満額に似てますがちょっと違いますよね。

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所得基準はどうやって決めるのかというと、「老齢基礎年金の額を勘案して政令で定める」と書いてあります。

計算としては令和3年度まで使っている781,200円は、令和2年中の老齢基礎年金を勘案された額という事になります。

そうすると、令和2年1月から3月までは781,700円で、令和2年4月から12月までは780,900円でした。

781,700円×3ヶ月+780,900円×9ヶ月=2,345,100円+7,028,100円=9,373,200円÷12=781,100円なので、誤差が生じてる点は何かを勘案して決めてるかもしれませんね。

あと、781,200円以内なら給付金が貰えますが、ちょっと問題があります。

781,200円以内なら、たとえば5,020円×12ヶ月=60,240円の給付金が貰えますが、781,200円を超えると1円も給付金が出ない事になると、金額の逆転現象が出てきてしまいます。

場合によっては自分より保険料納めてない人が、給付金の上乗せをした事で受給金額が逆転するような事が起こりえます。

そのため、逆転現象が生じないために781,200円を超えても、881,200円以内までの人には補足的に給付金を出しますよ!という事になっています。

だから、881,200円を超えてくる人から完全に給付金が0となります。

…ということで、今回は給付金を含めた事例を考えていきましょう。

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2.年金生活者支援給付金計算1

〇 昭和63年3月10日生まれのA太さん(今は34歳)

1度マスターしてしまうと超便利!(令和4年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。

絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

18歳年度末の翌月である平成18年4月から平成22年3月までの48ヶ月間は厚生年金に加入しました。なお、平均標準報酬月額は25万円とします。(基礎年金に反映するのは平成20年3月以降)。

平成22年4月からは専門学校に通うようになり、平成25年3月までの36ヶ月間は国民年金に強制加入でした。

しかし、支払う余裕がなかったのでこの間は学生納付特例免除を利用しました。

学生免除は4月から翌年3月までの適用となりますが、過去2年以内に未納期間があるなら、遡って免除にする事が出来ます。

この学生免除期間はそのまま保険料を追納しなければ、全く基礎年金額には反映しません。

あまりこの免除期間が長いのは将来が怖いと思って、平成24年10月の時に「平成24年4月~平成25年3月まで」認められていた学生免除を取り消して、父が平成24年4月~平成25年3月までの12ヶ月間国民年金保険料を支払ってくれました。

よって、純粋に学生納付特例免除期間は平成22年4月から平成24年3月までの24ヶ月となりました。

この24ヶ月は10年以内なら保険料を追納できるので、再就職してから納付しようと思いました。

——

※ 参考

免除制度を利用した後に気が変わった場合に、免除審査が通った後も取り消す事が出来ます。一般的な免除は「取り消しを申し出た月の前月以降が免除取り消し」となりますが、学生納付特例免除は上記のように取り消しを申し出た年度まるまる取り消します。

——

平成25年4月から平成31年3月までの72ヶ月間は海外に居住したため、国民年金には強制加入ではなく任意加入する事は出来ましたが任意加入せず。カラ期間にはなる。

ただし、72ヶ月のうち10ヶ月間だけ任意加入して保険料を納めました。

帰国して、平成31年4月に公務員の妻と婚姻し、令和30年2月までの347ヶ月間は国民年金第3号被保険者となる。

さて、このA太さんの年金はいくらになりますか。

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まず年金記録を整理します。

妻とはA太さんが65歳前に離婚したとします。

1.厚年→平成18年4月~平成22年3月までの48ヶ月間(基礎年金に反映するのは平成20年3月以降の25ヶ月)

2.学生納付特例→平成22年4月から平成24年3月までの24ヶ月

3.国民年金保険料納付→任意加入10ヶ月+父が払ってくれた12ヶ月=24ヶ月

4.第3号被保険者→347ヶ月

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→25万円×5.481÷1,000×48ヶ月=65,772円

・老齢厚生年金(差額加算)→1,621円(令和4年度価額)×48ヶ月-777,800円÷480ヶ月×25ヶ月=77,808円-40,510円=37,298円

・老齢基礎年金→777,800円÷480ヶ月×(25ヶ月+24ヶ月+347ヶ月)=641,685円

年金総額は、744,755円であります。

さて、低年金者には上乗せ給付として年金生活者支援給付金がありますが、A太さんは支給されるでしょうか。

まず条件があります。

ア.65歳以上である事
イ.公的年金収入+前年所得≦781,200円(令和4年10月以降は778,700円)である事
ウ.住民税非課税世帯である事

これらを満たした者として、計算します。

なお、原則として給付金は20歳から60歳までの基礎年金に反映する期間で計算します。

基礎年金に反映しない期間は給付金の計算としません。

・年金生活者支援給付金→5,020円(基準月額)÷480ヶ月×(25ヶ月+24ヶ月+347ヶ月)=4,142円(年額49,704円)

基礎年金額に反映する期間が年金生活者支援給付金として計算される部分という所ですね。

※ 注意

学生納付特例免除期間は基礎年金には全く反映しない期間なので、給付金計算には使用しません。他の通常使ってる免除(全額免除や部分免除等)は給付金額に使う。

(メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2022年9月28日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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