MAG2 NEWS MENU

お金のプロが注意喚起。お金持ちになれない人が陥りがちな「お得の罠」

「半額バーゲン」などと聞くとついつい財布の紐が緩んでしまうとい方、その行動パターンを見直さない限りいつまでたってもお金持ちにはなれないようです。今回、売り手サイドが仕掛ける「お金の罠」を取り上げているのは、株式会社Money&You代表取締役で資産運用のプロ・頼藤太希さん。頼藤さんは消費者心理の綾をつくこの罠について詳しく解説するとともに、そこから逃れるため心がけるべき3つのポイントを紹介しています。

お金持ちになれない人が陥る、巧妙な「お得の罠」

人は誰しも、少しでも得したい・損したくない、お金持ちになりたいと考えています。ですから、日々の買い物でも、なるべくお金を節約してお金を貯めるようにしたい、はずです。

しかし、そのことはお店の側もよくわかっています。お店は少しでもお金を使ってほしいと考えていますから、あの手この手でお金を使ってもらおうとしています。その中には、節約しているつもり、お得に買い物しているつもりなのに損をしてしまう「お得の罠」が存在します。

人がどのように誤った認知やバイアスに惑わされ、判断を誤ってしまうのか、行動経済学で紐解いてみましょう。

■アンカリング効果:半額セールの罠

たとえば、私たちは商品を買うとき「お得だ」と思って買うわけですが、そう思っているのはアンカリング効果によるものかもしれません。割引前の価格を示すことで「これだけ価値があるものが、ここまで安くなっている=お得」と思い込んでしまうのです。

年末年始や夏冬のバーゲンなどにある王道の罠が「半額セール」です。「10万円の財布が半額セールで5万円!」などとなっていれば、これは安いと思うはずです。その5万円になった財布と、定価5万円の財布なら、5万円になった財布を買う人のほうが多いでしょう。

しかし、もしこの財布がはじめから5万円で売られていたとしたら、そもそもこの財布を買ったでしょうか。よほどの理由がない限りは、買わないのではないかと思います。つまり、本当に必要かではなく、「半額になっている!」というお得感だけで買ってしまう罠なのです。

■選好の逆転:3品で10%オフの罠

目的が本末転倒となるこの行動は「選好の逆転」と呼ばれます。

「3品買うと10%オフ」「2品買うと2品目が30%オフ」など数字はさまざまですが、こうした割引がよくあります。このような表示があると、1品だけ買うのがなんだか割高のように感じられます。しかし、これも罠です。本来、1品だけ買えばいいはずの商品を2品、3品と買うのは無駄ですね。お店側からすれば、多少割引してでも一気に2品、3品と品物が売れるのですから大助かりです。本当に必要なもの、使うものであれば、買っても問題はないでしょう。

■選好の逆転:送料無料・駐車料金無料の罠

ネットショッピングで、「5,000円以上買うと送料無料」となっていることがあります。送料無料にしたいからと、なんとか5,000円に達するように商品を追加した経験のある方もいるのではないでしょうか。

しかし、そこまでして商品を追加するより、送料を払ったほうが出ていくお金は少なくなるものです。同様の罠に駐車料金もあります。数百円をケチり数千円損する結果になりかねません。

■損失回避:食品のまとめ買いの罠

損失回避とは、人間は損失を避けるような意思決定を行う傾向が強い特性を表しています。

肉や魚などを大容量のパックで買うと、小分けにしたパックよりも多少割安になります。

しかし割安だからといって買っても、食べきれずにダメにしたり、たくさんあるからと普段作らないような料理で大量に消費したりすれば、逆に損することになってしまいます。

結果的にお金を使いすぎてしまう上、体重も増やし不健康のリスクを増すことになります。

■ザイオンス効果:度々目や耳にする商品・サービスの罠

ザイオンス効果は、接触回数が多いほど好意を抱きやすくなるという効果があります。テレビCMや動画広告など商品・サービスを度々目や耳にするうちに、その商品・サービスが欲しくなるのはこの効果が働いているからなのです。

人間は目や耳に触れる回数が多いものを選んでしまう傾向にあります。選挙で名前を連呼するのも、この効果を狙ったものです。

■ウィンザー効果・バンドワゴン効果:口コミの罠、人気の罠

ウィンザー効果は、本人が発信する情報より第三者の意見を信じやすくなるという人間の特性を表しています。バンドワゴン効果は、「大人気と言われると商品がよく見えてしまい、自分も買ってしまう」効果です。

通販サイトのレビューや口コミがよければ欲しくなるのは、ウィンザー効果が働いているからです。行列ができている、人だかりができている、「いま一番売れています」「10秒に1つ売れています」と宣伝されている商品が気になるなどは、みんなが買っているから欲しい、流行に遅れたくないという意識からバンドワゴン効果が生まれ、買ってしまうのです。

■極端の回避・オトリ効果:「松竹梅」「並・上・特上」の罠

極端の回避・オトリ効果は、「2つの選択肢で迷っている人に見劣りする第3の選択肢を入れると意思決定が変化してしまう」効果です。

これをうまく使っているのが「松竹梅」や「並・上・特上」。3ランクの商品から1つを選ばせると「竹」や「上」の商品がよく選ばれます。人は、極端な選択を嫌う傾向があるので、高すぎず安すぎず、ちょうどいいものが選ばれがち、というわけです。

安いものを買おうと思っていても、自然と出費が増えてしまうのです。

■タイムプレッシャー:時間制限のある「通販サイト・番組」「店頭セール」の罠

タイムプレッシャーとは、時間制限があると冷静な判断ができなくなる効果です。既に紹介した「選好の逆転」の送料無料、「損失回避」の値下げといったお得を逃したくない人間の特性を利用して、お店側も買わせようするのです。

タイムプレッシャーは意外と身近で頻繁に使われています。最近はYouTube広告でも多いですね。

「この(広告)動画を見ている人限定で商品をたったの980円で購入できます。すぐ売り切れになる可能性があるので急いでクリックしてご注文ください」という具合です。

商品・サービスを宣伝する広告動画は一切見ずに速攻でスキップするのが、罠に引っかからないためには必要なルールです。

■端数価格効果:「8」という数字の罠

端数価格効果とは1万9,800円や1,980円のように端数をつけて安さを印象づける効果です。2万円や2,000円といった切りの良い値段よりも安く感じさせることで、購買意欲を高めることができます。端数の中でも「8」を利用することで、商品が売れるとも言われています。

こういった商品は1つだけ購入したときには気づきにくいのですが、複数商品をカゴに入れていざレジで会計する時に「思ったより高かった」と思うことが多いようです。

このように世の中には、少しでも得したい・損したくないという気持ちを逆手にとって、買わせようとする罠がありふれています。

「お得の罠」から逃れるには、次の3つを心がけてみてください。

  1. 買い物に予算を決める
  2. 買う前に本当に価格に見合った価値があるのかをチェックする
  3. 本当に欲しいか、役に立つかをチェックする

お店の思惑に引っかからないように、賢くお金を使っていきましょう。

プロフィール:頼藤太希(よりふじ・たいき)
Money&You代表取締役/マネーコンサルタント
慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に(株)Money&Youを創業し、現職へ。マネーコンサルタントとして、資産運用・税金・Fintech・キャッシュレスなどに関する執筆・監修、書籍、講演などを通して日本人のマネーリテラシー向上に注力している。『はじめてのFIRE』(宝島社)、『1日1分読むだけで身につくお金大全100』(自由国民社)、『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)など著書多数。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャルプランナー(AFP)、日本アクチュアリー会研究会員。

image by: Takamex / Shutterstock.com

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け