英で中国人外交官がデモ参加者を殴打。浮き彫りになった中国の本質

 

一方、中国外交部の王文斌報道官は、中国大使館の職員は国際外交協定に従って行動していると述べ、また、マンチェスターの中国総領事館は、デモ参加者は「香港独立派」の小集団であり、集会は「無許可」であり、国家元首を侮辱する写真を掲げていたと主張し、謝罪するどころか、居直る始末です。

たとえいくら習近平を侮辱する写真であったとしても、他国で違法な暴力行為を行うことは許されません。

だいたい、これまで中国や韓国の反日デモでは、日本国首相の写真を侮辱的に扱い、さらには日本の国旗を焼くといった行動が繰り返されてきました。

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今回の中国の言い分が通るなら、こうした行為に対して、日本の外交官が中国人を殴打してもいいことになります。もちろん、そんなことをされれば、中国政府も黙ってはいないでしょうし、節度と良識のある日本の外交官がそうした暴挙に出るはずもありません。

このような自分だけは何をやっても許されるという身勝手な姿勢こそが中華思想なのです。コロナ流行以前、世界各地で中国人観光客の傍若無人ぶりが話題になったことがありましたが、この事件からは、一般民間人のみならず、国を代表する外交官にまで、中華思想が浸透していることがわかります。

この事件の余波はアメリカにも及んでいます。アメリカ上院外交委員会の筆頭理事であるジム・リッシュ上院議員は、この事件を「恥ずべきこと」とし、外国政府による他国での暴力行使という脅威だと述べています。また、共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、アメリカは中国共産党の人道に反する犯罪に抗議する人々とともに立ち上がるべきだと主張、さらにアメリカ国家アジア研究局の上級研究員であるナデージュ・ロラン氏は、もしもこの件で中国領事館側が何の罰も受けなければ、同様の行為が再び起こるだろうと懸念を示しています。

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これは、日本にとっても他人事ではありません。日本の中国大使館や領事館で、同様の暴力行為が行われる可能性があるからです。

2002年には、中国・瀋陽の日本総領事館に駆け込んできた北朝鮮脱北者に対し、中国の公安局が総領事館の敷地内に入って引きずり出すという事件がありました。言うまでもなく、大使館や総領事館の敷地は設置国の国内という位置づけですから、中国公安局は日本敷地内に無断で入って乱暴狼藉を働いたことになり、大きな国際問題に発展しました。

在瀋陽総領事館事件

今回のイギリスでの事件は、他国の領土内で、中国当局者が当該国の法律を無視して乱暴を働いたという点で、国家主権を揺るがす大問題であるのです。

しかも、中国は国防動員法や国家情報法を制定しており、在外外国人を動員することが可能になっています。国防動員法は、中国政府が有事だと認定した際に、海外にいる中国人に対して軍事動員できるというもので、いわば、在外中国人に他国への攻撃行為を命じるものです。また、国家情報法は有事・平時を問わず、中国政府への情報工作活動を義務付けるものです。

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