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感度の高い女性が応援。なぜ宮迫博之の「牛宮城」は大繁盛しているのか?

開店前から炎上が続き、誰もがその行く末を気にかけていた、宮迫博之氏がオーナーを務める焼肉店「牛宮城」(ぎゅうぐうじょう)。しかし今年3月にオープンするやたちまち人気を集め、今や予約が困難なほどの繁盛店となっています。その成功の秘訣はどこにあるのでしょうか。今回、「牛宮城」のプロデュースを担当した焼肉店経営のプロ・本田大輝氏に話を聞いたのは、フードサービスジャーナリストの千葉哲幸さん。千葉さんはインタビューを通じて、「牛宮城」が顧客の支持を得た理由を分析・考察するとともに、宮迫氏と本田氏のパートナーシップを「理想的」と評しています。

プロフィール千葉哲幸ちばてつゆき
フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

開業前に大炎上した宮迫博之の焼肉店「牛宮城」は、なぜ予約が取りにくいほどの繁盛店になったか?

タレントの宮迫博之氏は昨年まで何かと炎上する存在であった。焼肉店開業プロジェクトもその一つで、昨年の夏に共同経営者となるべくユーチューバーのヒカル氏と決裂し、この構想はリセットされた。そして、宮迫氏が今年3月「牛宮城」(ぎゅうぐうじょう)を開業したことはよく知られている。「開業前に日本一有名な焼肉屋」というキャッチフレーズもつけられた。しかしこの焼肉店の話題はいま静かである。なぜだろうか。

富山の焼肉店企業と運命的な出会い

宮迫氏の店「牛宮城」はいま予約がなかなか取れない繁盛店となっている。17時オープンに合わせてエレベーターホールに予約客の行列ができ、約90席ある店舗は1日2回転している。この静かに大繁盛している背景には同店をプロデュースして運営を受託しているガネーシャ(本社/富山市、代表/本田大輝)という会社の手腕がある。

同社は富山市内に焼肉店「大将軍」を3店舗営んでいる。これらは客単価7,000円あたりで、地元の人々の「ハレの日」の需要に応えている。代表の本田氏は1987年5月生まれ。「大将軍」は現代表の本田氏の両親が立ち上げた店だが、本田氏が経営を引き継いでから多様な業態や高級バーガーの「SHOGUN BURGER」を展開するなど業容を拡大している。

本田氏が「牛宮城」のプロデュースを担当することになったきっかけは、昨年暮れに宮迫氏が「焼肉店をプロデュースしてくれる人を探します」と公表してからのこと。本田氏から「何かお役に立つことがあれば」と打診したところ、宮迫氏は富山の「大将軍」に食べに行き「おいしい」と絶賛した。

プロデューサーで富山本社の外食企業、ガネーシャを率いる本田大輝氏

このころガネーシャでは渋谷に「SHOGUN BURGER」をオープンしたばかりで、この店舗は「牛宮城」の物件から30mも離れていない。宮迫氏はここのハンバーガーを食べてさらに感動。本田氏によると「宮迫さんは、このような当社との出会いに『運命を感じる』と言ってくださった」という。

本田氏はこう語る。

「宮迫さんには『炎上しやすい』というイメージがあるが、私は『炎上しない店をつくろう』と考えた。宮迫さんも『王道の焼肉店をやりたい』とおっしゃっていた。そして、コンセプトづくりにあたって私の知人のインフルエンサーやトレンドをつくっているたくさんの女性たちに話を聞くことから始めた」

感度が高い女性が応援してくれる店

こうして「渋谷にある『王道の焼肉店』が、渋谷にやってくる感度の高い女性から応援されて、このようなお客様がたくさん集まってくる店」というコンセプトを整えていった。同店のメニューブックをはじめとしたビジュアルは落ち着いたセンスでまとめ、トイレの備品も含めて女性が気になるポイントを大切にしたという。

オープンしてしばらくの間、焼肉のコースは1万円のものが一つ。すき焼きは5,800円から。これで客単価は1万1,000円ちょっと(9月上旬)。焼肉のコースを一本にしたのは、コースのバリエーションを増やすとオペレーションが乱れるため。このように慎重にオペレーションを育てていった。現状は、コースよりも単品メニューをアピールするようになり月ごとに新作メニューを披露している。

「牛宮城」の名物の一つ「宮迫ハラミ 牛宮城特製塩タレ」1枚1,150円

「牛宮城」の名物の一つ「名物 極みタン塩」1人前3,200円

肉は黒毛和牛だけではなく交雑牛も使用。「交雑牛の場合、脂が軽いのでさっぱりとしていて、たくさん食べることができるし、メニューの価格を抑えることができる」(本田氏)。「牛宮城」の原価率(非公表)は、客単価1万1,000円ちょっとというレベルにあって一般と比べてかなりかけているようだ。いま予約が取りづらい状況になっているのは「王道の焼肉店」という狙いがお客様に受け入れられているからで、リピーターが増えているからだろう。

店のある5階に着いてエレベーターの扉が開くと、店のエントランスに牛の頭と高貴な老人の置物が置かれシュールである。従業員はてきぱきと丁寧にお客を誘導して、こだわりのある絵画を飾った個室に通す。スマイルを絶やさない接客は爽やかだ。エントランスで受けた印象とのギャップが楽しい。筆者が体験したところ「奇をてらわない焼肉店で満足度は高い」という印象を受けた。

東京・渋谷、井之頭通に面したビル5階。エレベーターのドアが開くとこのようなエントランスが迎える

シュールなエントランスに対して客室は個室が中心となり至ってスタンダードな雰囲気

理想的なパートナーシップの形

冒頭で述べた通り、本田氏は焼肉店経営のプロだ。その立場から宮迫氏のように初めて焼肉店経営を志す人物と一緒に焼肉店を立ち上げる場合どのように進めていくのが得策だと考えているのだろうか。本田氏はこう語る。

「それはまず、オーナー様の意向を十分にヒアリングすること。私は焼肉店経営で『どのようにすれば勝てるか』という経験値があり、この二つの方向性の良い『クロスポイント』を探していく。このクロスポイントとは、オーナー様がこれまで想像したことがないような世界。だけど『あ、そこに行くんだ』と納得していただけるところ」

「牛宮城」の接客が爽やかであることを前述したが、ここの従業員は本田氏が社長を務めるガネーシャの社員。プロデューサーと従業員が一貫していることから“おもてなし”の考え方、表現の仕方も一貫している。同店の従業員は正社員8人、アルバイトは50人。

本田氏は「当社が東京で宮迫さんの『牛宮城』で仕事をしている意義はとても大きい」は語る。そのポイントとして以下のことを挙げてくれた。

「まず、飲食のナンバーワンである東京でテーブルサービスの経験をしているということ。『牛宮城』はある意味特殊な店でちょっとしたことで炎上しやすいことからリスク管理がとても重要。アルバイトのスマホを勤務に就く前に預かったり、情報管理に対するリテラシーが高くなった。商品開発を頻繁に行うことが重要なために常にアンテナを張っている。全国で食材を探しているときに『ユーチューブ見てます』といってくれて話が通りやすい」

宮迫氏にとっては地方都市でゆるぎない実績を持つ焼肉店企業に運営を委ね、この地方都市の焼肉店企業としても東京で芸能人ブランドによって高い集客力を維持し、運営ノウハウを蓄積することができている。理想的なパートナーシップと言えるだろう。

牛宮城(ぎゅうぐうじょう)
東京都渋谷区宇田川町12-9 ジュール渋谷5F
JR渋谷駅徒歩5分
営業時間:17:00-24:00(L.O.23:00)
https://gyugujo.co.jp

image by: 千葉哲幸

協力:牛宮城 , 株式会社ガネーシャ

千葉哲幸

プロフィール:千葉哲幸(ちば・てつゆき)フードサービスジャーナリスト。『月刊食堂』(柴田書店)、『飲食店経営』(商業界、当時)両方の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しい。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

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