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露軍ついに「女性徴兵」提案か。部分動員も兵員不足で焦るプーチン

10月初旬、ロシア軍の総司令官に任命されたセルゲイ・スロビキン氏。過去にシリアで化学兵器を使用したとされることなどから、世界は彼を残忍な人物として認識していますが、これまでの総司令官たちとは違う「柔軟さ」を持ち合わせているようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新のウクライナ紛争の戦況を紹介するとともに、スロビキン氏の総司令官就任後にロシア軍が見せた戦略戦術の変化について解説。さらに当紛争の停戦の見通しを考察しています。

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プーチンが全土インフラ破壊にイラン製自爆ドローン使用も前線は維持できず

プーチンは、ウクライナ全土のインフラ破壊にイラン製自爆ドローンを使用。しかし、前線を維持することができなくなっている。今後を検討しよう。

ウ軍は、ルハンスク州で交通の要衝のスバトボに向かっているし、ヘルソン州では、ムイロベに向かっている。これに対して、ロ軍はヘルソン州南部から撤退の可能性もあるようだ。しかし、この1週間の戦線の動きは少ない。

クレミンナ・スバトボ攻防戦

ウ軍は、クレミンナ周辺に到達して、クレミンナのロ軍基地に対して、砲撃しているが、偵察部隊を出して、ロ軍の状況をみている。

ウ軍は、もう1つ、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向けて前進しているが、こちらも様子見の状態である。

ウ軍は、ロ軍のプーチン防御線の防御力を確かめつつ、部隊の再編成と増強やローテーションを図っているようだ。英国から訓練を終えた兵員がウクライナに戻り、前線に配備される。

このスバトボ防衛に、ロ軍も大量の動員兵が配備させているようであり、その動員兵を実地訓練して、砲兵などの増強を図っている。このため、ロ軍砲撃数が増えている。弾薬もイランや北朝鮮から供給されている可能性以外に、ロシア国内で増産しているようだ。

そして、P66道路までウ軍を押し戻し、P66に防衛線を構築する方向で、ウ軍に攻撃を仕掛けてきている。P66上にプーチン防御線を構築する可能性がある。

ロシア国内が戦時体制に移行したことで、半導体が必要な精密兵器は作れないが、弾薬などの軍事企業に民生企業をシフトした効果が出ているようだ。

そして、T-62戦車の再生などで、弾薬の他にも整備することで、防御力を上げようとしている。ロシアは防御に回り、その体制を整備している。

クレミンナ方向へもウ軍は攻撃しているが、ロ軍も同様に激しい砲撃をウ軍に行っている。砲撃数でロ軍がウ軍を上回っている。

もう1つ、ロ軍がリマンを攻撃したようで、ウ軍が奪還した要衝をそれも前線から遠く離れたリマンをどうのように攻撃したのであろうか?考えられることは2つ。

1つに敗残兵が残っていて、そのロ軍兵が、ウ軍陣地を攻撃したか、2つにはロ軍偵察部隊が、情報収集のためにリマンまで偵察に来たが、発見されて戦闘になったか、である。

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南部ヘルソン州・ザポリージャ州攻防戦

ロ軍は、ムイロベとプラスキンズキーを結んだ線上に塹壕を掘り、防衛線を構築した。ウ軍は前進してスハノバまで来て、ムイロベの攻撃をしていた。

しかし、ムイロベの攻撃でも、数回、ロ軍の鉄壁の防御で、ウ軍は攻撃に失敗したが、とうとうムイロベを奪還したようである。ということは、ロ軍前線部隊も撤退を開始した可能性がある。

ロシアのスロビキン総司令官は、ドニエプル川西岸のロ軍の撤退を秩序だって行うようだ。補給がこの地域には十分できずに、その内、弾薬もなくなり、それと、精鋭部隊をこれ以上失うと、重要地域の防御もできないとして、撤退を決断した。

現在、イリューシン76輸送機と大型ヘリ数機で、ロシア本土とクリミアとの間で補給をしているが、輸送量が少なく前線への補給ができないようである。

このため、前線で弾薬や食糧などが不足しているし、ローテーションもなしに数か月軍務にあたり、士気が低下している。このため、ウ軍への降伏も多くなっている。

よって、撤退が必要で、ロ軍は、カホフカ橋の袂の街ベゼルに要塞を作り、カホフカ橋を渡り撤退できるように最後の拠点を整備している。西岸地域には2万の軍がいるからである。

ヘルソン市の行政機関や司令部などは、既に東岸に移した。その上に親ロ派住民の避難も行っている。どうも、シンガリを誰が担うのかで、ヘルソン市内でロ軍同士で、銃撃戦になったみたいである。

撤退前に、ヘルソン市では銀行やスーパーなどにロ軍が略奪をしているが、ヘルソン市のロ軍も徐々にフェリーや艀で、西岸から東岸に移動させている。そして、ヘルソン市ではネットが不通になった。最後まで残るロシアの通信会社も撤退が完了した。

それと、カホフカ橋に地雷を仕掛けている。ダム自体に穴を開けて爆薬を仕掛けているともいう。そして、ゼレンスキー大統領は、ロ軍がダムを破壊すると述べている。ウクライナ政府は、ダム破壊でヘルソン市は水が5mほど上がるので、避難する必要があると勧告した。

ということで、撤退を開始したが、前線のロ軍の撤退も始まったようだ。秩序だった撤退劇を行っている。前線部隊に精鋭を配し、ウ軍の攻撃を防ぎながら撤退している。お見事。

もう1つ、ザポリージャでもウ国営原子力企業エネルゴアトムは、ザポリージャ原発がある中南部の都市エネルホダルから、ロ軍が撤退を開始したと。もう1つ、この方面でのロ軍の砲撃数が減っていることで、ここの砲兵はスバトボやバクムット方面に配置転換した可能性がある。スバトボとバクムットの砲撃数が増えた理由でもあるようだ。それでもウ軍の砲撃数より多い。

この動きは、ロシアの戦略戦術見直しが始まったことを示している。

バクムット方面

ロ軍の精鋭部隊が少なくなり、バクムット周辺に攻撃を絞り、そこに動員兵も増強して、攻めている。ここでも砲撃数が増えている。ウ軍よりロ軍の方が多いが、精密誘導弾ではないが、ウ軍の損害もある。もう1つが、動員兵が増強で、攻撃力が増していることだ。

このため、徐々にロ軍がウ軍を押しているようである。

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ウクライナ・ポーランド国境地域

ベラルーシとロシア合同軍は、北ウクライナに進軍して、欧米兵器のウクライナ輸送を阻止する可能性があるとウクライナはみている。日中戦争時の日本のインドシナ侵攻とよく似た行動である。補給線の切断を目指すことだ。

このため、ポーランド軍も国境付近に大量の軍を集めて、侵入時に対応する準備を進めている。ウ軍もキーウへの攻撃を想定していたが、ポーランド国境付近となり、急遽、準備を開始しているようだ。

欧米との補給線を切られると、ウ軍も危うくなる。しかし、ポーランドを巻き込むと、NATO軍が出てくる。事実、米軍第101空挺師団「スクリーミング イーグルス」をルーマニアに配備し、対応できる体制を取った。というように、戦線の拡大を招くことになる。それを本当に行うのであろうか?

ベラルーシのルカシェンコ大統領も「われわれに戦争は必要ない」と言っているが、どうであろう。米軍を引き込むのはいかにもまずいと思う。

ロ軍の状況

傭兵会社ワグナーの要員も半分程度が、囚人兵になり、練度は下がり、正面攻撃しかできず、ワグナー囚人兵が全滅して、ウ軍陣地を抜けない状態である。ワグナーでさえ、この有様で、当然、正規軍は、よりボロボロである。しかし、動員で数だけ多い。

それでも兵員の不足から、ロシア下院は、女性を軍隊に徴兵することを提案したようだ。

この現状を見たうえで、どうするかだ。その方策が出てきた。

イランから自爆ドローンを2,500機も導入して、飽和攻撃を各所で行っている特に発電所、変電所、火力発電所などを狙って攻撃して、50%も破壊したようである。冬に向かいウクライナ国民の厭戦気分を出して、停戦に持ち込みたいようだ。

しかし、ウクライナはEUからの送電網と接続済みで、電力が完全に無くなることはないし、原子力発電所や水力発電所を攻撃するにはロシアへの大きな非難を覚悟する必要があり、簡単にはできない。

航空宇宙軍司令官をロシア総司令官にした理由は、ドローンや地上戦で負けているので、そのドローンで勝つ方向を模索するためであろう。大型の自爆ドローンもロ軍最前線で、ウ軍の火砲・トラックなどに向けて攻撃して、大きな効果が出ているようである。

ロ軍弱体化で、前線の維持は難しくなってきたが、防御にシフトして、イランのドローンを利用して、勝つことはないが、今の占領地を維持する方向にロシアの目標を変えたようである。

このため、イランはクリミアに多数の軍事顧問団を送り、直接ドローンの操作をしているようである。このため、現時点までで10名程度の戦死者も出ている。ウ軍はドローン発射地点を特定して、ドローンで攻撃をしている。

戦略変更に合わせて、プーチンも、併合4州に戒厳令を出して、軍支配を徹底して、ここの支配地域を防御する方向にしたようだ。

ロシア国内では、「これは第三次世界大戦であり、我々はNATOと戦っている」と宣伝し始めた。戦時体制に向かい、生活は苦しくなり、多くの国民に死ぬ可能性が出て、意義を再提示する必要になっているようだ。

そして、失言かもしれないが、プーチン政権幹部キリエンコ氏も「戦争」という言葉を使ったようだ。

その上、ベラルーシを活用して、ポーランド国境攻撃をちらつかせて、ウ軍部隊をベラルーシ国境に貼り付けて攻撃力をそぎたいようだ。

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ドローンを提供するイランとロシアの結びつきが強くなり、イスラエルのラビド首相がロシアを批判したし、イスラエルは、ウ軍にドローン防御兵器を提供しようとした。

しかし、ロ前大統領のメドベージェフに、「兵器をウ軍に送ったら、容赦しない」との発言で、イスラエルはウ軍への武器提供を止めた。

このため、ウクライナのクレーバ外相が、直接ラビド・イスラエル首相と電話会談して、アイアンドームの提供を依頼したが、どうなりますか?

全体的に、スロビキン総司令官は、現状のロシア軍の状況を詳しく知っているので、劣勢であることも承知して、その対応策を出してきたようである。

1つは、ミサイル等によるウクライナ民間インフラへの攻撃の継続で、ウクライナ人の戦意を喪失させること。

2つは、戦線の再設定。冬季の守備のため、ある程度の後退も行い、戦力を保持し重要地域の守備用にその戦力を集中させる。南部ヘルソン州からの撤退もこのためだ。

3つは、主要補給線の防御と強化。スロビキン総司令官はそれと並行して、将来の攻勢作戦の準備をする。国内経済体制を戦時経済体系にして、軍事物質の供給量を増やす。

4つには、スロビキン総司令官は2023年の攻撃計画を策定し、訓練の終えた動員兵とT-62戦車を新地上戦力にして、この計画策定のためのウクライナでの偵察活動もする。この活動でリマンにロ軍が現れた可能性がある。

このため、ウ軍もロ軍が変化したことで、戦略戦術を変える必要が出ているようだ。

1つに、自爆ドローンの飽和攻撃をどうのように防ぐかの方策が必要になっている。当初撃墜率が60%であったが、今は80%まで高めたが、防空システムで100%にする必要がある。

2つに、プーチン防御線・ワグナー防御線という防御線に対して、損害の少ない突破方法を考える必要がある。このためには、攻撃力の高い兵器も必要である。

3つに、ロシアの持久戦にどう対応するのかである。ロシア経済は石油・天然ガスで経済成長はマイナスであるが、ウクライナより経済規模は大きいし、戦場になっていないことで、マイナス幅は少ない。

それに比べて、ウクライナは経済縮小幅が大きく、持久戦を長くはできない。なるべく早く戦争を終わらせる必要がある。しかし、ロシア本国を攻めることができない。

ウクライナ情報総局のブダノフ総局長も、今年末までには、ウクライナが勝利したというレベルまで行くという。

停戦は

このため、どこかで停戦をする必要がある。それもなるべく早く、このためには、米バイデン大統領も、ロ軍を圧倒する兵器をウ軍に提供しないと、戦争は終わらないし、米国議会で共和党が下院で多数になると、長くはウクライナを支援できない。

このため、停戦開始のポイントを作り、そこまで到達する時間を短くする必要がある。

このポイントが2月24日以前のロシアとウクライナの停戦ラインであろうとみる。これに向けて、ウ軍を増強していくしかない。

まずは、ドローン防御システムであり、次に米国のドローン、A-10攻撃機、欧米戦車などの最強な攻撃兵器を提供することであろうとみる。

ロ軍の総指揮官は、状況に柔軟に対応する人であり、今までのような状況に対応できない無能な人ではないので、注意が必要である。ロシアも戦時経済体制を引き、長期戦の構えである。

一方、ロシアの核使用の可能性は、通常戦力で負けない方法を取る柔軟な考え方ができる人であり、危機的な状態にならないことで、現時点では減っている。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年10月24日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: Kosmogenez / Shutterstock.com

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