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覚悟決めたか習近平。中国が穀物市場で不気味な買い漁りを始めた意味

先日行われた中国共産党第20回全国代表大会で、異例の3期目続投を決めた習近平総書記。囁かれ続けてきた台湾侵攻も近いと見て間違いないのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では著者で国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、プーチン大統領のウクライナでの苦戦を目の当たりにしようとも習氏が台湾併合を諦めることはないとして、その根拠を解説。さらに中国による国際穀物市場における「不気味な行動」を紹介しています。

3期目突入・完全独裁者習近平が台湾に侵攻する日

10月16日から10月22日まで、中国共産党大会が行われていました。重要なポイントは3つでしょう。習近平党総書記が、3期目に突入する。最高指導部「政治局常務委員」の7人から、共産党のナンバー2だった李克強首相、汪洋(共に共青団派)、韓正(上海閥)、栗戦書(習近平派)が外されたこと。新最高指導部(政治局常務委員)が習近平の腹心だけになったこと。

というわけで、習近平の【完全独裁体制】ができあがりました。RPE読者の皆さんで、驚いている人はいないでしょう。既定の路線です。この後、習近平の中国は、どうなるのでしょうか?

正確な情報が入らない独裁者

完全独裁者になると、独裁者には都合のいいことばかりに思えます。しかし、そうともいえません。大きな問題が起こってきます。それは、「正確な情報が入ってこなくなること」です。

独裁者の大先輩プーチンの例を見てみましょう。なぜ、プーチンは、大戦略的敗北必至の愚かな戦争を開始したのでしょうか?3月14日付の時事を見てみましょう。

ウクライナ侵攻後、ロシアのプーチン大統領が在籍した旧ソ連国家保安委員会(KGB)の後継機関、連邦保安局(FSB)内部で異変が生じているもようだ。

プーチン氏にウクライナ情勢を報告する立場にあったFSB幹部が自宅軟禁されたとの見方が浮上。事実なら、戦況が思うように進まない「誤算」の責任を取らされた可能性が高い。「侵攻から2週間。プーチン氏は第5局に対する弾圧を始めた」。ロシア独立系メディアは12日、FSBに情報筋を持つ著名記者2人の話を基に伝えた。

独立系メディアは「第5局は侵攻に先立ち、プーチン氏にウクライナの政治状況を報告する任務にあった。第5局はリーダー(プーチン氏)を怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告したもようだ」と分析している。

「自宅軟禁された」のは、FSB第5局セルゲイ・ビセーダ局長です。彼は、「全ウクライナが、解放者としてのプーチンを待ち望んでいる」などと報告していました。ポイントは、FSBが「プーチンを怒らせることを恐れ、聞き心地のいいことだけを報告した」という部分です。プーチンは、「間違った情報」を基に判断を下した。結果が今の悲惨な状態です。2~3日でキーウを陥落させ、終わるはずだった特別軍事作戦。今や、「核を使うぞ!」と脅迫しなければならないほど追い詰められています。

問題は、なぜFSBがプーチンに間違った情報を流したのか?そう、「プーチンを怒らせることを恐れ」とある。要するに、「プーチンが怖かったから、ウソの情報を流した」のです。今のロシアは、「プーチンが恐ろしすぎて、本当のことをいえない」状況になっています。

これは、一般国民だけでなく、支配者層もそうなのです。ウクライナ侵攻(2月24日)に先立つ2月21日、安全保障会議でプーチンは、「ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国の独立承認についてどう思うか?」とメンバーに質問しました。この時、ロシアのエリート中のエリートである安保会議メンバーは、何を考えたのか?

「プーチン皇帝様は、どんなお答えを望んでおられるのだろうか?うっかりKYなことをいったら、自分は破滅だ。なんとしても皇帝様の意向に沿った意見をいわなければ」

こんな感じでしょう。それで、ほとんどの人が、「独立承認を支持します」と
いった。

ところが、一人の正直者がいました。ナルイシキン対外情報庁長官です。彼は、「西側にもう一度だけチャンスをあげましょう。彼らに、ミンスク合意を履行しろとウクライナに圧力をかけるよう要求するのです」といった。

するとプーチンは、「交渉を開始しろというのか?」と質問します。ナルイシキンは、この一言で、震えあがってしまいました。対外情報庁のトップは、しどろもどろになり、「いえ。私は、ルガンスク、ドネツクを併合することを支持します!」と変なことをいってしまった。

プーチンは、宿題を忘れた小学生のようになっているナルイシキンの態度にとても満足で、ニヤリとしながら、「俺たちはそんな話をしているんじゃねえ。ルガンスク、ドネツクの独立承認の話をしてるんだ」。ナルイシキンは、おどおどしながら、「独立承認を支持します!」と言い直しました。

これを見ると、ナルイシキンは、ルガンスク、ドネツクの独立承認に、本音では反対だった。当然、ウクライナ侵攻にも反対だったことでしょう。ところが、プーチンが怖くて、本音を貫けない。貫いたら、命がないかもしれない。これは、大げさではなく、そのままの意味です。

ロシアの現状は、どうなのでしょうか?結局、プーチンが、一人ですべてを決めているといえるでしょう。だから、今の大惨事の責任は、すべてプーチンにあります。

習近平が台湾侵攻を決断する日

先日、中国共産党大会で、前国家主席の胡錦涛が退場させられる映像が流れました。

【波紋】胡錦涛氏“退席直前”新映像…「習近平氏と意見不一致か」欧州メディア【もっと知りたい!】(2022年10月27日)

胡錦涛は、習近平の人事に不満があったとされています。長老に恥をかかせ、自分の力を見せつけた習近平。気分がよかったことでしょう。

しかし、実績を見ると、胡錦涛の方が、習近平より優秀です。胡錦涛が中央委員会総書記だった2002年から2011年のGDP成長率は、

10年間の年平均は10.68%。胡錦涛の時代は、まさに「中国経済黄金期」といえるでしょう。

では、習近平が中央委員会総書記になった2012年から10年間はどうでしょうか?

10年間の平均は、6.68%です。減速は明らかですね。しかも、コロナの反動だった2021年を除けば、ほぼ一貫して成長率が右肩下がりになっています。もはや中国が「高度成長時代」に戻ることはないでしょう。そして、習近平自身もあまり景気の動向に興味がないようです。プーチンと同じですね。

ここが民主主義国家と独裁国家の大きな違いです。日本と欧米の指導者たちが今一番気にしているのは、インフレです。これをなんとかしなければならない。なぜ?支持率が下がり、次の選挙で負け、権力を失う可能性が高まるからです。ところが、独裁者には、そのような心配がありません。

だから、独裁者は、あまり経済のことを考えず、好きな道を進むことができる。

で、独裁者の望みは何かというと、たいてい「歴史に名を残すこと」だったりするのです。プーチンは、クリミアをウクライナから奪ったことで歴史に名を残した。しかし、もっと大きなものが欲しくなった。そう、ウクライナとベラルーシをロシアに併合すること。「これで歴史に名を残せるな」と。

習近平は、どうでしょうか?いうまでもなく、「台湾統一」で歴史に名を残すことができます。だから、私たちは油断すべきではありません。現状、ウクライナに侵略したプーチンがボロボロになっている。このことは、習近平に「一定の教訓」を与えたことでしょう。

しかし、それで習が台湾併合をあきらめるはずがない。彼は今、「より周到な準備が必要だ」などと考えていることでしょう。

ちなみに中国は、コメ、小麦、トウモロコシなどを買いあさっています。米農務省のデータによると、世界の在庫量に占める中国の割合はトウモロコシが69%、コメは60%、小麦は51%に達している。

なぜ??????????????

第2次大戦時、世界には二人のメイン独裁者がいました。イタリア・ムッソリーニとドイツ・ヒトラーです。事実上第3次大戦がはじまっている今、世界には二人のメイン独裁者がいます。現代のムッソリーニはプーチン。現代のヒトラーは習近平です。

日本は、敗北必至の独裁陣営について、2次大戦の過ちを繰り返してはなりません。そして、日本政府は、台湾有事の準備をはじめるべきです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年10月28日号より一部抜粋)

image by: Frederic Legrand – COMEO / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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