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ただの勘違い。「流暢な英語さえ話せればグローバル人材」の大ウソ

11月27日に行われた、都立高入試に結果が活用される英語スピーキングテスト。実施の是非を巡っても賛否が割れたこの試験ですが、果たして導入の意義はあるのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者で帰国子女でもある河合薫さんが、公開されたテストの一部を見た率直な感想を吐露。さらに日本の英語教育への自身の思いと、このまま現在のカリキュラムを進めていくことに対する疑問を綴っています。

プロフィール河合薫かわい・かおる
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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来年度の都立高入試で初めて導入される英語スピーキングテスト実施。話せる英語と話したい英語の大きな違い

来年度の都立高入試で初めて導入される英語スピーキングテストが27日、都内約200会場で実施され、約6万9,000人が受験しました。

「スピーキングテスト」はグローバル人材の育成を目指し、「使える英語」教育に力を入れる都の教育委員会が、都立高校の入試で「話す力」をはかろうというテストです。

英語で書かれた文面を声を出して読んだり、休日に自分がしたことを留学生に話すという設定で、4コマ漫画のようなイラストに合わせ声にしたり。私が見たのはメディアで公開されたごく一部ですが、これをどうやって評価するのか?文法重視なのか、発音なのか?それともとりあえず伝わればいいのか?などなど、脳内が「???」になりました。

また、受験者からは「明らかに学校の授業内容をりょうがしてる。これは塾とかで対策してない人かわいそう」との意見も出ていたそうです。

英語は話せた方がいいし、スピーキングテストは面白い取り組みだと思います。しかし、英語はあくまでもコミュニケーションのツールでしかありません。もちろん流暢に話せるに越したことはありませんが、ぶっちゃけ伝わればいい。ただのツールなのです。

ビジネスの世界では同じ業界の「共通ワード」もありますから、より通じやすい。コミュニケーションで大切なのは、「これを伝えたい」という気持ちと、相手が「何を伝えようとしてるのかな?」という受け止める力です。そのためには母語である日本語の語彙を増やし、「自分で考え、シンプルに伝える力」を磨くこと。同時に、相手の意見を受け止める想像力も養う必要もあります。また、グローバルに世界で活躍するには、英語力より会話力が求められます。どんな人とでも自分から話しかけ、会話を転がす力です。

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例えば、日本の海外駐在員はパーティーで“壁の花”になる人が実に多いのですが、そう言う人はグローバル人材でありません。まずは相手を信頼し、片言でもいいから身振り手振りで伝える努力ができる人。そういう人に相手は心を寄せるのです。

ところが日本人は「流暢な英語」さえ話せればグローバル人材だと勘違いしている。英語教育を重視するあまり、日本語力の低下も著しい。いったい何を目指しているのでしょうか。

個人的な経験になりますが、私は英語を話す時、アメリカ人の前では緊張しないのですが、隣に聞き耳を立てる日本人がいるとやたらと緊張します。

「帰国子女のわりには、発音が悪い」「帰国子女のわりには、文法がおかしい」

そう言われそうな気がするのです。

実際に面と向かって言われたことはありません。でも、きっと陰で言われている。だって、私の英語は南部なまりだし、子ども英語だし、そうやってあーだこーだと帰国子女を批判する日本人を、これまで幾度となく見てきたからです。

10年以上前に楽天の三木谷浩史会長兼社長が、「英語の社内公用語化」をいち早く発表した時もそうでした。「ジャパニーズイングリッシュ」「発音悪い」「原稿を暗記したのでは?」などと三木谷氏の英語力を疑問視する意見がネットで上がったのです。

きれいな発音、アクセント、完璧な文法で話さないと、たちまち“嘲笑”の的となる。日本人って、つくづく意地悪だなぁと悲しくなります。

話せる英語教育には、大賛成です。しかし、今の教育のまま、進める意味があるのでしょうか?

みなさまは、この問題についてどのようにお考えでしょうか?是非ともご意見、お聞かせください。

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image by: Shutterstock.com

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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