MAG2 NEWS MENU

韓国にナメられた日本の「売国」政策。統一教会問題が炙り出した安倍元首相ら保守派の土下座外交のツケ

さまざまな理由をつけ、我が国との二国間の約束事を何度も反故にしてきた韓国。なぜ彼らは日本相手に、明らかな国際法違反を繰り返すのでしょうか。立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さんは今回、その責任は日本側にもあると断言。韓国をここまで付け上がらせた日本政府の「土下座外交」を強く批判するとともに、誰がこのような売国敵行為を続けてきたのかを、旧統一教会問題を絡めて考察しています。

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

韓国のちゃぶ台返し、約束やぶりを許してきた日本の責任

カンボジアの首都プノンペンで開催されたASEAN(東南アジア諸国連合)関連首脳会談に出席した岸田文雄首相は、韓国と尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の会談を行った。3年ぶりとなる正式な日韓首脳会談であった。

日韓関係は「戦後最悪」と呼んでも過言ではない状況だった。「従軍慰安婦問題」について、元慰安婦への支援を目的に韓国政府が設立した財団に、日本が10億円を拠出し、この問題を「最終的かつ不可逆的な解決」とすると日韓両政府が合意した、いわゆる「元慰安婦をめぐる日韓合意」を、韓国側が一方的に破ったからだ。

安倍首相(当時)は「韓国はいつもゴールポストを動かす」と強く反発した。そして、「65年の日韓請求権協定に基づき、両国民の財産や権利などの問題は解決済み」「元慰安婦・元徴用工問題はいずれも決着済みで、それを蒸し返したことを収拾する責任が韓国側にある」という基本方針を頑として譲らない強い姿勢を打ち出した。

その後、日韓両国の間にさまざまな問題が立て続けに起こった。「韓国海軍レーザー照射問題」「元徴用工問題」が起こり、日本が対韓半導体部品の輸出管理を「包括管理」から「個別管理」に変更し、それに対する韓国の報復、そして、韓国が日韓で防衛秘密を共有する「日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」の破棄を決定し、米国の説得で協定失効前日に破棄を撤回する安全保障上の深刻な事態まで起きたのだ。

尹大統領は、「未来志向の日韓関係をつくる」と発言し、日韓関係の改善を望んでいるとされる。だが、日本側は当面「問題は解決済み」という原則を貫きながら、韓国の動きを様子見する構えを崩していない。

もちろん、日韓は外交当局による事務レベルの協議を続けている。「元徴用工問題」では、1965年の日韓請求権協定に沿い、韓国の財団が日本企業の賠償金を肩代わりし、日本企業が賠償金を支払わない形式での解決策を模索している。

しかし、その実現に越えなければならないハードルは高い。まず、韓国の国内事情が問題だ。韓国国会では、野党「共に民主党」が議席の過半数を占めている。尹大統領が「慰安婦問題」「徴用工問題」で、日本の要求を受け入れるという方針を打ち出したら、野党が反発し、国会が機能停止してしまう懸念がある。

尹統領は、しばらくの間、韓国国民の関心が高い国内問題に集中して実績を上げて、支持率を高め、次の総選挙で野党が過半数を勝ち取ることを目指さざるを得ないかもしれない。

その上、大統領の任期が1期5年に制限される韓国では、次の大統領選で政権が保守派からリベラル派に移る可能性がある。その時、保守派の大統領の方針は否定される。日本企業の賠償金を支払えと再び言い出すことを日本は懸念する。要は、また「ゴールポストが動かされる」と日本が警戒しているため、韓国の案を受け入れるのは困難なのだ。

韓国はなぜ「ゴールポストを動かす」と批判されるようなことを行うのか。「ゴールポストを動かす」を端的にいえば、問題が解決しそうになったときに、いきなり問題解決のハードルを引き上げるような行動のことだ。

繰り返すが、両国間の財産や請求権については1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」している。慰安婦問題も、2015年の日韓合意で「最終的かつ不可逆的に解決」している。要するに、「慰安婦問題」「徴用工問題」の合意を破ることは、国家間の約束を破る国際法違反であり、なぜそのような重大なことを平気で行えるのかということだ。

前回の北朝鮮の核・ミサイル開発についても指摘したが、かつて侵略行為を行った「ならずもの国家」日本には、なにをやってもいいと思っているフシがある。韓国も同じだろう。

【関連】北ミサイル開発を“援助”した日本。先制攻撃も報復もできぬ我が国の自業自得

例えば、中央日報ソウル大学国際大学院の朴喆煕教授は韓国・中央日報紙に、日韓関係について、「日本の主張通り歴史問題で韓国がゴールポストを動かしてきたとすれば、事実、日本は『センターライン』を動かしてきた」とコメントを寄せている。

「センターライン」とはなにか意味不明だが、続けて教授は「日本も歴史問題に対して謝罪した立場を否定するようなわい曲された見解をたびたび見せてはならず、韓国も日本の誠意ある謝罪はそのまま受け入れるなど、バランス感覚のある態度が両国共に必要だ」と言うのだ。

要するに、韓国に明らかに非がある問題であっても、「そもそも、日本が植民地支配したことに問題がある。日本は反省し、謝罪すべきだ」と言いたいのだ。だから、通常ならば絶対に許されない国際法違反であっても、日本に対してだけは許されるのだという理屈になるのだろう。

私は、韓国が「ゴールポスト」を動かすのは、日本側にも問題があるのではないかと思う。「ゴールポストを動かす」ことを日本側からみると、「いくら謝罪しても韓国がたびたび基準を変えて充分ではないと主張するため歴史問題が終わらない」ということだ。それは、裏返すと、日本が「謝罪」を繰り返すから、韓国は「ゴールポスト」を動かすのだということにもなる。

「土下座外交」という、古くからある「日本外交」を表現する言葉がある。外交において、相手国の要求を無条件で飲み続けるなど、極端な弱腰の姿勢で臨むことを意味する。この連載では、中国や北朝鮮に対する「土下座外交」を振り返ってきたが、韓国に対しても同様に「土下座外交」が行われてきたとされる。

例えば、1982年に日本の教科書検定に韓国が口を出すという内政干渉に屈した宮澤喜一官房長官談話、1984年の全斗煥大統領歓迎の宮中晩餐会における昭和天皇の謝罪、1990年の盧泰愚韓国大統領を迎えた宮中晩餐での平成天皇の「お言葉」、1993年の河野洋平官房長官が慰安婦問題への日本軍の関与を認め「おわびと反省」を表明した「河野談話」、1995年に村山富市首相が、日本の植民地支配と侵略で多大の損害と苦痛を与えたことを再確認し、謝罪した「村山談話」、1996年の橋本龍太郎首相の「創氏改名」に対する「おわびと反省の言葉」、1998年の「謝罪」が明記された外交文書「日韓共同宣言」など、日本はさまざまな形で韓国に対して「謝罪」を繰り返してきた。しかし、韓国は日本の「謝罪」を受け入れるつもりはなく、ありとあらゆる機会をとらえて「ゴールポスト」を動かし、日本に「謝罪」を求め続けてきたといえる。これが「土下座外交」である。

「土下座外交」は、主に「リベラル派」とされる政治家が行ってきた。そして、前述の安倍元首相のような「保守派」の政治家がそれを止めようとしてきたとされている。だが、私は保守派が「土下座外交」を止めようとしてきたという見方には懐疑的だ。

私は、以前から安倍元首相を中心とする「保守派」の政治家の「二面性」と「内弁慶」体質を批判してきたからだ。保守派は、従軍慰安婦問題などに関して、日本国内で「声高な主張」を繰り広げる一方、彼らの主張を加害国に対してぶつける努力を怠ってきた。

【関連】保守派の常套句「安倍晋三元首相は土下座外交を終わらせた」の大ウソ

韓国側の主張が世界に広がる中、保守派はこれまで外国の雑誌や新聞に論文を掲載することや、外国の政治家やマスコミを説得するなど、日本の理解者を増やす努力を怠っていた。否、保守派は海外の批判から目を背けて逃げ回ってきたのだ。

保守派は、国内で隣国に罵声を浴びせるかのような強気な発言を繰り返し、海外の勢力から「国益」を守るとか、「自主防衛」とか主張してきた。だが、彼らは一歩でも海外に出れば何も言えなくなるのだ。そればかりか、日本の国益を売り渡すようなリップサービスを繰り返してきた。長年にわたる保守派の「内弁慶」な姿勢はまさに、相手国の要求を無条件でのみ続ける「土下座外交」そのものなのではないだろうか。

そして、このような保守派の「土下座外交」の存在を垣間見せてくれるような事実が次々と明らかになっているのだ。安倍派を中心とする自民党「保守派」の政治家と、旧統一教会の密接な関係である。

衝撃的なのは、旧統一教会が「韓国を36年間植民地支配した日本は『サタンの国』であり、贖罪(しょくざい)のために日本人は寄付をしなければならない」という協議を説いていたことだ。つまり「反日」と呼んでも過言ではない教義を説いていた教団から、「愛国」を訴えてきた保守派の政治家が票をもらっていたということなのだ。

私は、旧統一教会と政治の問題は、日本の保守派が、国内では大きな顔をしながら、外国勢力に対してはまるで弱腰で謝罪を繰り返す「二面性」「内弁慶体質」であることを証明していると考えている。

このように考えると、「元慰安婦をめぐる日韓合意」を、韓国側が一方的に破ったことに対する、安倍首相(当時)の強硬な姿勢は、果たして正しかったのかと疑いたくなる。なぜなら、それは韓国側からするとあまりに唐突な強硬姿勢に見えただろうからだ。

安倍首相や保守派は、日本国内で表面的に強気な姿勢を見せていながら、実は韓国側に「日本はサタンの国」というような考え方を受け入れるような「リップサービス」をしていたかもしれないのだ。それならば、韓国が慰安婦合意を反故にしても、安倍首相は受け入れると楽観的に考えても不思議ではない。だから、唐突な安倍首相の強硬姿勢に韓国は驚き、怒り狂ってしまったのではないか。

旧統一教会と政治の問題は、選挙活動を中心とした国会議員、地方議員、首長と教団の様々な結びつきに焦点が当たりがちだ。だが、真に重要なのは、旧統一教会との関係から垣間見えた、保守派の政治家の韓国に対する本当の振る舞いだ。

もし、「土下座外交」を繰り返し、それが韓国を誤解させて、日本の国益を損ねているのであれば、保守派の政治家は断罪されるべきだからである。

image by: Amankgupta / Shutterstock.com

上久保誠人

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け