北ミサイル開発を“援助”した日本。先制攻撃も報復もできぬ我が国の自業自得

2022.11.10
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11月9日、またも日本海に向け弾道ミサイルと見られるもの発射した北朝鮮。今年に入り実に32回もの発射実験を繰り返し、近く5年ぶり7回目となる核実験を強行することが濃厚とされますが、何が北朝鮮をここまで増長させてしまったのでしょうか。その大きな責任は日本にあるとするのは、立命館大学政策科学部教授で政治学者の上久保誠人さん。上久保さんは今回、そう判断せざるを得ない根拠と、日本が本気で核武装論を検討すべき理由を解説しています

プロフィール:上久保誠人(かみくぼ・まさと)
立命館大学政策科学部教授。1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。主な業績は、『逆説の地政学』(晃洋書房)。

北朝鮮の核・ミサイル開発が進んだのは日本のせいだ

北朝鮮が多数のミサイルを日本海の方向に発射している。11月2日には、北朝鮮が一日に発射したミサイル数としては過去最多の23発以上のミサイルを発射した。弾道ミサイル1発は、韓国との間の海上の軍事境界線である「北方限界線(NLL)」を越えた。韓国が対抗措置としてNLLの北側にミサイル3発を発射した。南北が、NLLを越えてミサイルを打ち合うのは史上初めての事態となった。

さらに北朝鮮は、11月3日朝に長距離弾道ミサイル1発を含むあわせて3発の弾道ミサイルを発射し、夜にも短距離弾道ミサイルを3発発射した。また、内陸部から日本海に向けておよそ80発の砲撃を行った。朝鮮半島は、一触即発の緊張状態となった。

また、3日朝のミサイル発射直後、宮城、山形、新潟の3県を対象に全国瞬時警報システム(Jアラート)が発令された。ただし、「日本上空を通過したとみられる」との速報は後に取り消された。ミサイルが日本海上空で「消失」したとされ、韓国では「失敗説」も報じられている。

北朝鮮は、アメリカ軍と韓国軍の空軍による大規模な共同訓練「ビジラント・ストーム」に強い反発を示し、対抗措置としてミサイル発射を行ったとみられている。

そもそも、北朝鮮がこれほど大規模なミサイル発射ができるまでに核開発・ミサイル開発を進められたのはなぜなのかを考えてみたい。北朝鮮の核開発・ミサイル開発は、金正恩氏の父・正日氏の時代に始められた。

金正日氏は、死去する2ヵ月前に「遺訓」を残している。「核と長距離ミサイル、生物化学兵器を絶えず発展させ十分に保有することが朝鮮半島の平和を維持する道であることを肝に銘じよ」「米国との心理的対決で必ず勝たなければならない。合法的な核保有国に堂々と上ることにより朝鮮半島で米国の影響力を低下させるべき」というものである。

金正日氏の念頭にあったのは、「イラク戦争」だとされる。イラクは大量破壊兵器の生産をやめた。しかし、フセイン元大統領は米国に捕えられ、処刑されてしまった。金正日氏は、大量破壊兵器の開発をやめれば、いずれ北朝鮮も同じように、米国に潰される。だから、体制維持のためには、絶対に核兵器を持たねばならないと考えていたのだ。

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