具体的に、北朝鮮は1993年に準長距離弾道ミサイル「ノドン」を「日本海」に向けて発射して以来、次々とミサイル実験を行なってきた。1998年8月31日は、テポドン1号と呼ばれるミサイルが発射され、津軽海峡付近から「日本列島」を越えるコースを飛行し、第一段目が「日本海」に、第二段目は太平洋に落下した。
2006年7月5日には、スカッド、ノドン、テポドン2号の弾道ミサイル計7発を「日本海」に向けて発射した。その後もミサイル実験は続き、金正日時代には合計17発のミサイルが発射された。
後継者の金正恩氏も、父の遺訓に従って、「北朝鮮を核保有国と国際社会に認めさせること」「米国に体制維持を保障されること」を国家目標として掲げてきた。2012年には射程1万キロメートルの大陸間弾道弾(ICBM)「テポドン2号」を発射実験した。そして、2017年は、2月、3月(2回)、4月(3回)、5月(4回)、6月、7月(2回)、8月(2回)、9月、11月と1年間で計17回もの実験を行った。特に、8月29日の実験では、ミサイルが日本上空通過時に「Jアラート(全国瞬時警報システム)」が12道県で鳴り響いた。
北朝鮮は、これら実験のたびに着実に技術を向上させて、ミサイルの射程距離を伸ばしてきた。そして、ついに米本土に届くICBMを完成させた。米国に対する直接攻撃の可能性を高めることで、ドナルド・トランプ政権(当時)は、北朝鮮のミサイルを現実的な危機と認識したことで、初めてこの問題の解決に重い腰を上げた。2018年6月、史上初の米朝首脳会談が実現したのだ。
米朝首脳の対話は、わずか2回で終わり、北朝鮮が望む米朝の直接対話はふたたび途切れた。だが、北朝鮮はその後もミサイル開発を続けた。特筆すべきは、ミサイルの飛距離の向上だけではなく、ミサイルの発射数の増加である。
北朝鮮は今年に入り、記録的な数のミサイルを発射している。前述の通り、金正日政権時は合計17発のミサイル発射だった。それを、わずか数日で上回っているのである。多くの数のミサイルを同時に発射されれば、それだけ迎撃するのも難しくなる。安全保障上の脅威は拡大し、新たな段階に入っているといえる。
このように、北朝鮮は実験のたびに着実に技術を向上させて、ミサイルの射程距離を伸ばし、一度の発射数を増加させてきた。重要なことは、北朝鮮のミサイルは、ほとんど日本向けに発射され、日本上空を通過することもあったということだ。北朝鮮は、日本に対して、ミサイルを撃ち放題だったのだ。