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京大教授が絶句。防衛費増を利用した岸田首相の「大増税」に呆れたワケ

防衛力強化を議論する政府の有識者会議は、防衛費増額の場合の財源について、国債に頼らず幅広い税目による「増税」を含めた国民負担が必要だとする報告書をまとめました。その報道に接し絶句したと語るのは、京都大学大学院教授の藤井聡さん。今回のメルマガ『藤井聡・クライテリオン編集長日記 ~日常風景から語る政治・経済・社会・文化論~』では、有識者会議に名を連ねる経済専門家の顔ぶれについて、緊縮財政を目指す岸田政権と財務省が「増税」の結論ありきで選んだ人たちと指摘。欺されて増税を許せば、経済が疲弊しかえって防衛力を低下させてしまうと、「増税論」の矛盾を説明し阻止すべきと訴えています。

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岸田・麻生流の緊縮財政派は今、「防衛費増」を利用して「増税」を狙っている ~増税のためにつくられた“有識者会議”~

『有識者会議“防衛費財源 国民負担で”意見相次ぐ』、の報道にはホントに絶句しました……
有識者会議“防衛費財源 国民負担で”意見相次ぐ 議事要旨公開 | NHK

この会議は、「外交・防衛のほか、経済・財政分野などの専門家」も出席していたそうですが、彼らの発言は「むやみに国債発行をしてはならない」「第2次世界大戦時の軍事費調達のため、多額の国債が発行され終戦直後にインフレを招いた歴史を忘れてはならない」と、国債発行はダメだという意見に加え、「日本はOECD=経済協力開発機構の国々と比べ租税負担が少ない」「幅広い税目による国民負担が必要なことを明確にして理解を得るべきだ」と、増税・国民負担を求める意見が多数でたとのこと。

こうした意見は、財務省の公式見解、すなわち所謂“ザイム真理教”の教義そのものです。一体どういう人達がこの発言をしていたのかと確認してみると、そのリストは次の様なものでした。

これらのリストには、国際政治学者や元外交官・防衛官僚、外交・軍事のジャーナリストなどが含まれていますが、経済・財政関係の有識者として入っているのが、翁百合株式会社日本総合研究所理事長 元日銀のエコノミスト、喜多恒雄株式会社日本経済新聞社顧問 慶応大学経済学部から日経新聞に入社、國部毅株式会社三井住友フィナンシャルグループ 取締役会長の3人。

まず、國部氏は、財務省の意向に逆らった委員会発言など絶対の絶対に出来ない銀行グループの取締役。喜多氏も同様に、「財務省の機関誌(赤旗)」とすら言われる日経新聞に入社し、顧問にまで上り詰めた人物。彼らがザイム真理教の教えに背いた発言をする筈がなく、増税だ、国民負担増だ、財政破綻だ、国債発行はまかり成らぬという発言をすることは、人選の時点でハッキリ分かっていた人物です。

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翁氏は、「日銀が独立であるべきだ」という思想を若い頃から徹底的に植え付けることで有名な日銀の出身。日銀が国債を買いまくるアベノミクス流の積極的な金融政策に反対の立場のエコノミストです。だから、彼女は防衛費調達のために国債を発行することを徹底的に反対することが端からわかりきった人物なのです。

(ちなみに人選は、岸田氏が、反アベノミクスの立場を取り、「反黒田」的な金融政策を取ろうとしていることの布石と捉えることもできるでしょう)

以上の3人以外は、先にも申し上げたように、外交、軍事の専門家であり、経済・財政の専門家である銀行マンや日経新聞マンや日銀マンに、経済・財政の事で論戦を戦わせ、彼らを論破することなど100万%不可能です。

ちなみに、座長の上山氏は、「総合科学技術・イノベーション会議の常勤議員」という中立的な立場の方に見えますが、上智大学経済学部教授・学部長を歴任した歴とした経済学者。事実、イノベーション会議でも、「真水」の財政支出を徹底回避し、融資だけで大学支援をすべきだという議論を主導されている方です。したがって、銀行マンや日経新聞マンや日銀マンに逆らった差配をなさることは、これもまた100万%あり得ません。

したがって、この「有識者会議」の委員構成を選択する時点で、この会議から「防衛費増は、国債はダメ。増税・国民負担で賄うべし」という結論が出ることが事実上確定していたわけです。

言うまでも無く、岸田総理大臣をはじめとした人選をした方達が知らなかった筈はありませんから、むしろそういう結論を出すために誰に頼んだら良いのかと考え、人選をしたと考えざるを得ないでしょう。実に、有識者、ならびに国民を舐めた話です。

そもそも有識者会議とは、政府だけでは判断できないから、その筋の立派な有識者の方々のご意見を伺い、それに基づいて政治判断をさせていただきます、という種類のもの。

にも関わらず、政治の側が有識者会議の意見をコントロールして増税すべきだと言わしておいて、それをさも「専門家の皆さんの有り難いご意見でございます」という顔をして受け取り、自分がやりたかった「増税」をやろうとしているわけです。実にあざとい話。

こうした子供だましに欺されずに、何としても防衛増税を阻止せねばなりません。このままでは、増税によって経済はさらに疲弊し、「貧国」化が進み、その結果、富国強兵が不可能となり、「弱兵」化し、国防力がさらに低下することは確実だからです。

このままでは、国防力をあげようという話にザイム真理教が寄生し、増税にもっていかれて国防力がさらに下がる……という悪夢の結末を迎える他有りません。国民世論の力で、この流れを食い止める他ないのですが……どれだけの方がこの真実を認識するのか、甚だ心許ないですね……。

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image by: 首相官邸

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京都大学大学院・工学研究科・都市社会工学専攻教授、京都大学レジリエンス実践ユニット長。1968年生。京都大学卒業後、スウェーデンイエテボリ大学心理学科客員研究員,東京工業大学教授等を経て現職。2012年から2018年まで内閣官房参与。専門は、国土計画・経済政策等の公共政策論.文部科学大臣表彰、日本学術振興会賞等、受賞多数。著書「プライマリーバランス亡国論」「国土学」「凡庸という悪魔」「大衆社会の処方箋」等多数。テレビ、新聞、雑誌等で言論・執筆活動を展開。MXテレビ「東京ホンマもん教室」、朝日放送「正義のミカタ」、関西テレビ「報道ランナー」、KBS京都「藤井聡のあるがままラジオ」等のレギュラー解説者。2018年より表現者クライテリオン編集長。

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【著者】 藤井聡 【月額】 ¥880/月(税込) 【発行周期】 毎週 土曜日

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