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中国は拒否か。ロシアの諜報機関が探し始めたプーチンの「亡命先」

モスクワからわずか200kmほどしか離れていない空軍基地をはじめ、国内3箇所をウクライナによるものと思われる爆撃を受けたロシア。予想だにしなかった攻撃に、プーチン大統領はこの先どのような反応を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、ウクライナ戦争の最新の戦況と、核兵器の先制使用を示唆したプーチン氏の発言を紹介。さらにロシア連邦保安庁が検討し始めたという意外な動きをリークしています。

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ウクライナ軍の長距離攻撃

ウ軍は、巡航ミサイルでインフラ攻撃するロ軍長距離爆撃機の空軍基地を、ドローンで攻撃した。今後を検討しよう。

冬場になり、道の凍結もなり、機甲部隊も動けるようになっているが、その割に両軍ともに、攻勢をかけているとは思うが、前線が動かないようである。

特にウ軍の機甲化部隊が動かない理由が見えない。温存した機甲化部隊はどこにいるのであろうか。もしかして、温存の機甲化部隊自体がないのかもしれない。少しずつ、各戦線に投入したのかもしれない。

南部ヘルソン州

ドニエプル川東岸にウクライナ国旗を立てたが、その後の動きがない。キーンバーン半島のウ軍の動きも分からない。ウ軍は残存ロ軍を排除できていないようである。

しかし、ウ軍南部方面戦術担当の大佐は、ドニエプル川を渡河できる場所と時期を知っているので、その時期が来たら、分かるはずと言う。どうも、ドニエプル川を渡河して、東岸に機甲部隊を前進させるようである。

このため、ロ軍はドニエプル川から10km以上も離れた場所に防衛線を構築しているようである。ロ軍は守勢である。

ザポリージャ方面

ロ軍は、マリウポリに南部方面司令部を作り、ザポリージャ州とヘルソン州への補給を安定させたいようである。クリミア大橋をプーチンが、ベンツ車を運転して復旧したと宣伝しているが、貨物列車は、まだ通行ができないようである。

このため、ロシア本土からアゾフ海をフェリーや揚陸艦で渡り、物資を運ぶ方法で補給を行うようである。プーチンもアゾフ海はロシアの内海になっていると述べている。

前回のパブリウカをロ軍が確保したとしたが、それ以上にロ軍の攻撃がないのは、鉄道輸送ではなく、アゾフ海の海上輸送を中心にしたことで、多大な犠牲を伴う攻撃を止めたようである。

この地域でもロ軍は守勢である。例外的にパブリウカ攻撃があったが、それも止めたようである。そして、マリウポリ・ウルズフ村のロ軍の南部方面司令部も爆破され吹っ飛んだようである。恐らく、HIMARSの攻撃であろう。

ロ軍は、冬場に「戦力化された兵士」が多くないので、今の時期はバフムト以外は守勢になるようである。

もう1つ、ロ保安局(FSB)部隊が、盗聴やインターネット監視により、ウクライナのパルチザン活動家と協力者を摘発するため、ウクライナ南部占領地域で活動を開始した。ここの支配を確実にするようである。動員兵により、手が空いたことで、FSB部隊を本来の業務に回せるようである。

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ドネツク・バフムト方面

ロ軍は、この地域を最重要攻撃地点としている。精鋭部隊の多くをこの地域に集めている。ロ軍の多くの戦闘資源をここに集めているが、それでもバフムトの市内に入ることもできないでいる。

この方面のロ軍は攻撃限界点になってきて、アウディーウカ周辺への攻撃力が弱まっているが、それでもバフムトのワグナー部隊が中心に、攻撃してくる。ドネツク全体から、バフムトだけに戦力を集めているようである。

しかし、囚人兵が団体で脱走をして、後ろの督戦隊に粛清されている。囚人部隊と督戦隊の距離は300mであり、少し撤退すると粛清に会うことになる。動員兵に対しても、同じようなことをしているという。

このような攻撃で、ウ軍も多くの犠牲者が出て、ウ軍もヘルソンから多くの部隊を増援部隊として派遣、ロ軍の攻撃を防いでいる。塹壕戦もあり、前線が動かないのに、双方の犠牲者だけが増えている。

第1次大戦の塹壕戦のようであると、多くのブロガー達は言っている。

しかし、ウ軍の機甲部隊も入ったので、攻撃もしてくることになるが、道路T1302号線を超えて、ウ軍が攻撃して、一部ロ軍陣地を奪っている。

クデュミフカへウ軍は攻撃して、運河の閘門を奪い返したようである。というように、両軍の主流部隊がドネツクに集結する可能性も出てきている。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ウ軍は、クピャンスクからP07を南下してスバトボに向け進軍して、いる。もう1つがクピャンスクからロシア国境戦意向けて、北進している。タブルジャンカ、ライマン・ペルシィなどをウ軍は奪還した。

ウ軍はクゼミフカやキスリフカに前進しているが、戦闘が激しくなっている。このため、ロ軍もドネツクの空挺部隊とワグナー部隊の一部と第1親衛戦車軍をスタロビルスクに集めて、そこからスバトボに投入して、ウ軍の攻撃を防御するようである。

このため、ドネツクのロ軍戦力が落ちている。スタロビルスクはリシチャンスクにも近く、どちらへも増援できる地点であり、そこにロ軍増援部隊を置いている。

もう1つのクレミンナもウ軍は攻撃して、市内直近まで迫っているが、ロ軍も激しく抵抗している。それと地雷原があり、ウ軍機甲部隊の損害も多くなっている。反対にロ軍が、クレミンナ北西10kmのチェルボノポピフカを攻撃している。この攻撃で、ここのウ軍は防戦しているが、激戦になっている。

このように、クレミンナ陥落も非常に時間がかかる可能性が出てきた。ロ軍の訓練を終えた動員兵が出てきて、それなりに戦力化してきたことが大きいようである。

そして、スバトボ北西約18kmのノヴォセリフスケとステルマヒフカにもロ軍が攻撃してきている。スバトボの周りを要塞化しているので、奪還も時間が掛かるようである。

というように、ウ軍の攻勢に、ロ軍も動員兵の訓練が終わり、対応できる体制が整いつつあるようである。勿論、ロ軍は守勢である。

それと、ロ軍はスバトボとロシア国境間の60kmに連続的な配置の塹壕陣地を完成させた。これでルハンスク州の大部分を守れると見ているようである。

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ロ軍や世界の状況

プーチンは、長期戦になると述べて、その体制を整える方向で、国内体制を構築した。その結果、戦費が国家予算の1/3も占めていて、教育や研究開発予算を大幅削減して、国防費に回すことになる。

アントン・シルアノフ財務相は、2022年のロシア連邦の財政赤字が当初予想の2倍以上になると述べた。政府支出が収入を上回る額は、夏に予想されたGDPの0.9%ではなく、2%に相当するとのことだ。

1月には70万人の動員が必要であるとロ軍事ブロガーが言うが、プーチンは、必要ないとした。現在30万人動員して、7万人がウクライナにいるが、残りも訓練終了したら、大きな戦力になるという。

また、プーチンは、紛争において核兵器を先制使用しないという軍事ドクトリンを正式変更する可能性があると示唆した。

今一番ロ軍攻撃で効果を上げているのは、インフラへの巡航ミサイル攻撃であるが、ウ軍は、600kmも国境から離れた長距離爆撃機の基地であるサラトフ州エンゲリス空軍基地とリャザン州ディアギレボ空軍基地を、ドローンで攻撃した。エンゲリス空軍基地では、Tu-95を2機破壊、ディアギレボ空軍基地では燃料トラックを炎上させている。

続いて、ロ軍が使用しているクルスク飛行場にもドローン攻撃があり、燃料タンクが炎上した。クリミアのセバストポリにも2日続けてドローン攻撃をしている。モスクワの真ん中のメガヒムキショッピングセンターも大炎上して、跡形もなくなっている。モスクワでも、ウ軍かウ軍協力者の攻撃を受けることになる。ロシアに安全な場所がなくなっている。

ロ軍は、ソ連時代のTu-141UAVを使用したとしたが、ウクライナの軍需会社ウクロボロンプロムは、航続距離1,000Kmのドローン「シャンク」を開発したと述べているので、この可能性もある。もう1つが、英フィナンシャルタイムズ紙によると、中国製ドローンを改造して使用ともいうが、150Km程度しか航続距離がない。

よって、この場合は、ロシア紙が述べているように、ディアギレボ空軍基地の攻撃では、ロシア国内にウクライナ協力者がいて、近くから飛ばし、エンゲリス空軍基地にはカザフスタンの協力でカザフから飛ばしということになる。

なぜかというと、ロ軍防空責任者は、ウクライナから飛んできたなら、防空レーダーかロシア人の目視があるはずであるが、それがないと言う。どちらにしても、ロシアの防衛を揺るがす事態であると、ロ軍責任者は見ている。当然プーチンにも報告が入っている。

しかし、防空能力が低く捕捉できなかったというと、ロ軍防空責任者が、ロシア国民から非難されることになるので、そう言っている可能性もある。

このため、エンゲリス空軍基地などから30機いたが16機が消えている。ドローン攻撃を受けて、爆撃機を退避したようである。

この攻撃で、ロシアは、報復で核兵器を使う可能性を示唆し始めた。それが、プーチンの先制使用の可能性もあるという発言になっている。

ショイグ国防相は、ロ軍が戦争で新型で高度兵器システムを使用すべきという考えを示した。高性能兵器とは、低出力の核兵器のようであり、その砲弾を大砲やミサイルで攻撃に使用して、能力を向上させたいようである。

この低出力の核を使用するために、プーチンは、先制使用したいようである。プーチンは酔った姿で、これを述べている。核使用となると、ロシアの崩壊になる可能性もあるからだ。NATOは、核を使用したら、ロ軍を全滅させると述べている。

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それと、イラン製のシャヘド136UAVが3週間ぶりに登場した。1つにロシアが在庫を撃ち尽くし、最近補充されたか、寒冷地対応をされて、使えるようになったかである。

12月6日、ウ軍は14機のシャヘド136を含む17機のUAVを撃墜したとしたが、脅威である。そして、短距離弾道ミサイル・イスカンデルのほとんどを、使い果たので、弾道ミサイルの攻撃はない。このため、イランからの弾道ミサイルが欲しいようである。イランの希望であるSu-35を渡してもミサイルを手に入れるようである。

それと、ロシアは、経済制裁後も弾道ミサイルの生産はできないが巡航ミサイルを生産しているようであり、その半導体を3国経由で手に入れているようだ。

ウ軍も155mm砲弾が不足してきたが、スロバキア、ポーランド、ウクライナで大量生産して、前線に届ける仕組みを作り、戦車の損耗に対しては、米国はドイツにレオパルド2戦車のウ軍への供与を要請した。というように、どんどん、兵器をウ軍は手に入れることになるが、ロ軍は、砲弾を自国で生産する必要がある。

それに必要な資金であるが、原油の60ドルという上限価格が決められて、資金の手当も制限されることになる。その上に、トルコは、ボスポラス海峡を保険なしのタンカーに通過を認めないとした。ロシアのタンカーは英国の制裁で船舶保険を取得できない。よって、ボスポラス海峡を通過できないことになる。

しかし、一番問題なのが、軍務に従事した後、有名ロ軍事ブロガーのイゴール・ガーキンは、「ロ軍には最終的な戦略目標がないことと、兵士や将校は『何の為に戦っているのか、何が勝利の条件なのか』を理解していない」との感想を述べている。唯々、惰性で戦争を続けているだけであり、士気も上がらないとした。ロ軍の問題点であり、侵略戦争の問題点でもある。

ロシアの侵略戦争に反対しているインドのモディ首相も 、2000年以来毎年開催していたプーチンとの首脳会談を見送りにした。

というように、ロシアの孤立化、存在の希薄化に直面しているようである。カザフのように、プーチンに反旗をひるがえす国も出てきた。このため、イラン、北朝鮮、ベラルーシなどの3流国が、頼りである。

もう1つ、プーチンの亡命先をFSBは探し始めている。当初、中国を指名したが、中国の反対なのでかアルゼンチンなど南米になるようである。ロシア敗戦時の対応もFSBは検討し始めているし、米国とも協議している可能性がある。

一方、中国は原油決済をドルから奪い、人民元にする方向で米国の覇権を崩し、戦闘機という大きな武器市場を米国は捨て、日英伊などに明け渡し、ロシアも存在感がなくなり、大きな世界秩序の激変期になっている。英国も米国の衰退を見て、日英同盟に復帰しているし、ドイツは米国の衰退を見て、中国によっている。

このため、米国の最大の敵は、中国であり、ロシアではない。米ロは、そのため、ロシア崩壊を望んでいない。ウクライナとは違うスタンスにあるが、米国は、ウクライナのロシア国内攻撃を止めることもできない。このように、ややこしい時代になっている。

ルービニ氏の言うように、「メガ脅威の時代」で、1914年から1945年までの時代と同じようになっていると見える。戦争の時代ともいえる。それも敵味方がグチャグチャになってきている。

さあ、どうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2022年12月12日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by: 279photo Studio / Shutterstock.com

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