MAG2 NEWS MENU

安倍氏に習った手口か。“大軍拡”を先に「閣議決定」する岸田首相の大暴走

十分な議論も説明もなされぬ中、閣議決定された安保関連3文書。「敵基地攻撃能力」を「反撃能力」として保有することが明記されるという、まさに戦後防衛政策の大きな転換点となるわけですが、識者はどう見るのでしょうか。今回のメルマガ『uttiiジャーナル』ではジャーナリストの内田誠さんが、反撃能力の保有が安全保障につながらない可能性を指摘するとともに、その理由を解説。さらにかような重要事項を閣議決定後に国会に諮る、岸田首相の乱暴さを非難しています。

この記事の著者・内田誠さんのメルマガ

購読はこちら

 

岸田首相「防衛政策大転換」会見、あまりに酷く最悪だった中身:「デモくらジオ」(12月16日)から

冒頭にお話申し上げようと思いますのは、つい先ほどまで、いや、まだやっていますか、もう終わりましたかね、6時半からでしたか、岸田総理の官邸での記者会見がありました。きょうの臨時閣議で、例の、防衛関係の3文書をかえるということで、それについて閣議決定をしたようです。

これ、内容的にはこれまで言われてきたことプラスアルファですが、基本的には戦後の防衛政策の大転換。2015年、安倍元総理が推進した例の安保法制、あれこそ、戦後防衛政策、安全保障政策の大転換そのものだったわけですが、それに勝るとも劣らない、非常に大きな変化をこれから我が国はやろうとしていることになってしまいます。

もっとも、自民党内でもかなり大きな反発を呼んでいる、とりわけ財源論のところですが、来年の統一地方選を控えて増税の話とは何事かというタッチの、いかにも議員らしい発想の批判もあるようですし、閣内でも高市さんとかね、あるいは与党内、公明党はどうだかよく分かりませんが、批判があります。

もちろん、年明けから始まる通常国会の中で、野党からのそれはそれは厳しい批判を浴びることになるでしょう。日本維新の会とか国民民主党などは基本的な反撃能力云々に関して、これ、あとでお話し申しますが、その部分については賛成のようですので、そのような批判ではないのかもしれませんが、少なくとも立憲民主党や共産党やその他の政党に関しては、戦後の憲法違反の政策だというタッチになると思います。

後でご紹介する本会議プレーバックのなかでも、もしかしたら語られているかもしれませんが、なかなか人が集まらないというね、いわゆる反対運動を組織しようとしてもなかなか人が集まらない状況になっているという。これはコロナの影響もありますけれど。そのもとで大衆的な反対運動が起こるかどうか、なんとも言えないですが、論議の内容そのものについては大変危ういというか、岸田さんという人はいったいどういう人なのだろうかという感想を今日も…。

私、クルマを運転しながら岸田さんの、例によって途切れ途切れになるような不思議なしゃべり方の会見を聞いていたのですが、ある場所で危なくブレーキを踏みそうになりましたよ。非常に、酷い会見でしたね。どういうことだったかというと、基本的に安全保障環境が大きく悪化していると。ごく一般論としては正しいと思います。中国の力による現状変更というような話とか、北朝鮮がミサイルをバンバン撃っている、しかもそのミサイルがロフテッド軌道だったり、飽和攻撃だったり、つまり防衛しづらい状況になっている。つまり日本の国の領土と国民の生命・くらし・財産、こうしたものが脅かされているのだということです。で、安全保障の考え方を変えなければいけない、そういうことだと思われます。

この記事の著者・内田誠さんのメルマガ

購読はこちら

 

で、例の安全保障3文書を改訂したということで、その中のキモの部分というのは例の「反撃能力」という奴で、ちょっと前までは「敵基地攻撃能力」だったわけですが、遠くからミサイルを撃って相手のミサイル基地を叩くという話ですね。ある意味荒唐無稽と言ってもいい訳ですが、それは言い過ぎだと言われるかもしれませんが、強調されているのは、それによって攻撃を思いとどまってほしいのだと、日本を攻撃したら酷い目に遭いますよと。いわゆる「抑止論」ですね。しかし、仮にそれが発動されてしまい、相手が攻撃をしてきたときにこちらから反撃をした…で話が終わればいいですが、終わりませんよね。今のロシアとウクライナの間のことを見ても分かるとおり、どんどんエスカレートする危険さえある。力の限り戦うということでは、ロシアがそうなりつつありますね。ロシア軍は相当追い詰められた状況で、何をするか分からないところに来ているのではないかという気がします。

で、その敵基地…いきなり敵と言ってしまうのも凄い話なのですが、NHKのアナウンサーを含め、皆、躊躇無く「敵」とスッと言うのでドキッとするのですが。まあ、攻撃してきた相手だから敵になるのでしょうが、そこの基地を叩いたとして、その能力を持ったと言うことで終わらない話。結果として安全保障につながらない危険が非常に大きいのではないかと思います。単純に、軍拡の論理に入ってくるという話だと私には思えました。

で、ウクライナかどうかはまだ分からないですが、ロシア領内のウクライナを爆撃して、巡航ミサイルでウクライナの生活インフラを散々攻撃してきていますけれど、それに使った爆撃機をおそらくはウクライナ領内から飛んできた自爆型の無人機が攻撃。損害が出て、ロシア兵も3人死んだ。

それと今度の話をごっちゃにする人もいて、10ヶ月間、ロシアの一方的な侵攻、砲撃によって始まり、テレビ塔をいきなり砲撃されたりしているわけですが、10ヶ月戦い、ロシア軍に10万の死者、ウクライナ軍に8万から9万、民間人2万人の犠牲者を入れるとやはり10万人以上の方、併せて20万人以上が亡くなるか深刻な怪我を負うという状況。その戦争のまっただ中の今の局面で起きた、ウクライナ軍によると思われる攻撃、これはウクライナの自衛権の延長に位置することだというのは間違いが無いと思います。

そこに関してアメリカのブリンケン国務長官が…ハイマースで使うロケット弾の射程の問題がありましたよね。ものすごく長い射程のものもあるのに、それをウクライナに供与してしまうとロシア領内を攻撃することになり、アメリカ軍が供与した兵器によってロシアを攻撃したことになり、大変具合が悪い。それは供与しない、射程が比較的短い、といっても70キロくらいあるわけですが、そういうものを供与してきた。だから、ブリンケン長官は、「ウクライナがロシア領を攻撃するよう促してはいないし、意図もしていない」と言っている。

オースティン国防長官の方は、「ウクライナがロシアを攻撃することを阻止するかというと、それはノーだ」と。結局、アメリカはロシアと直接戦争をするということを避ける振る舞いですが、その事件。仮にウクライナ軍の攻撃だとしても、それが今ここで言われているような先制攻撃とは意味が全く違うと思いますね。そのように言いたい方もいらっしゃるようですが、私は違うと思います。

この記事の著者・内田誠さんのメルマガ

購読はこちら

 

それから岸田さんの会見の中で、例の財源の話ですね。これはまた凄い話で、特に与党の議員からすると「おいおい勘弁してくれよ」と言いたい人も大勢いるようで、先ほども言いましたが、増税をやって選挙に突入というわけにはいかないだろうということだと思います。2%を実現するために、2027年度以降ですかね、結局4兆円不足すると。5年間で43兆円というのは凄い大軍拡ですが、そのうちの多くは歳出改革等でなんとかなる(本当かな?)らしいです。あと5年くらいすると足りない部分が出てきて、そのうち1兆円は増税をしなければならない。その検討をしろという指示を与党の税調に出したのが12月8日ですので、真珠湾攻撃の日だね。

(税調は)わずか1週間でまとめさせられた。増税の項目がたばこ税・法人税・復興税。復興税については税率を下げ、その分を新しい税として徴収。税率を下げられた復興税は期間を延ばすことによって必要な金額は確保するという計算らしい。

驚いたのは、官邸の取材をやっている記者さんたちが会見に出ていて、幹事社が読売新聞とかもう一社くらいあったかな。それが差し障りのない質問をしていたのですが、ジャパンタイムスの女性記者が「反撃能力は憲法違反ではないか」というタッチの質問をした。その質問に対して岸田さんの答えは、結局繰り返しだったのですが、それを言うときに、なんかちょっとしどろもどろになってしまい、もとから能弁な人ではないのですが、やっぱり言いたくなさそうでした。

それはそうでしょう。少なくとも戦後我々が選んだ道というのは、憲法9条とかどうとか言う前に、なんとしても戦争を避けようという共通了解があると思います。(今度の大軍拡は)その精神からはほど遠い話で、反撃能力、敵基地攻撃能力にせよ、容易に先制攻撃に結びつく。専守防衛とは水と油、の考え方だと思います。またそのような大転換を、安倍さんに習ったやりかたなのかもしれませんが、閣議決定でやっちゃってその後に国会に諮るということですが、いかにも乱暴な気がします。

(『uttiiジャーナル』2022年12月18日号より一部抜粋。全てお読みになりたい方はご登録ください)

この記事の著者・内田誠さんのメルマガ

購読はこちら

 

image by: 首相官邸

内田誠この著者の記事一覧

ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 uttiiの電子版ウォッチ DELUXE 』

【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け