居酒屋が「禁煙」の看板を掲げる理由はここにあるのかもしれません。それぞれ、がん罹患の可能性を上げるとされる「飲酒」と「喫煙」。それではどちらがよりがんリスクを高めるのでしょうか。今回のメルマガ『糖尿病・ダイエットに!ドクター江部の糖質オフ!健康ライフ』では、糖尿病専門医で糖質制限の提唱者としても知られる江部康二先生が、国立がん研究センターがサイト上でも発表している研究データを元に「どちらが悪いのか」を解説。さらにがん全体の発生率が高くならない1日の酒量を紹介するとともに、飲酒と喫煙が重なった際にがんリスクが高まる理由を考察しています。
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がんのリスク「飲酒と喫煙」では、どっちがより悪いのか? 国立がん研究センターの研究を考察
私はお酒をよく飲みます。糖質制限OKのお酒を、雨の日も風の日も晴れの日も雪の日も、ほぼ毎日、律儀に飲んでいます。
しかしながら、定期的に検査している肝機能は全く正常であり、人生で一回も肝機能障害を経験したことはありません。
万一、肝機能障害が発症したら、きっと酒を減らすと思います。
一方、タバコは人生で一回も吸ったことはありません。
ですから、患者さんを診察するときには、酒飲みには優しく、喫煙者には厳しい傾向があります。
このように、私は、酒とタバコに関してかなりバイアスの入った診療をする医師ということになりますが、さて、「飲酒」と「喫煙」と、どっちがより悪いのでしょう?
とりあえず、一番懸念される「がん」について、国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC研究)を調べて見ました。
お酒も量が過ぎれば将来がんになりやすい
時々飲酒しているグループと比べると、男性において、アルコール摂取量が日本酒にして1日平均2合未満のグループでは、がん全体の発生率は高くなりませんでした。
一方、飲酒の量が1日平均2合以上3合未満のグループでは、がん全体の発生率が1.4倍、1日平均3合以上のグループでは、1.6倍でした。
要するに、お酒をたくさん呑むほど、単純にがん発症リスクが増えるということであり、左党(酒飲み)にはとても頭の痛いお話しです。
なお、日本酒1合と同じアルコール量は、焼酎で0.6合、泡盛で0.5合、ビールで大ビン1本、ワインでグラス2杯(200ml)、ウイスキーダブルで1杯です。
女性では、定期的に飲酒する人が多くないためか、はっきりした傾向がみられませんでした。
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飲酒と喫煙が重なるとがんの発生率が高くなる
ところが、この結果を、たばこを吸う人と吸わない人とに分けてみてみたところ、たばこを吸わない人では、飲酒量が増えても、がんの発生率は高くなりませんでした。
この事実は、左党には大変嬉しいことと言えます。
一方、たばこを吸う人では、ときどき飲むグループに比べて、飲酒量が増えれば増えるほど、がんの発生率が高くなり、1日平均3合以上のグループでは2.3倍、がん全体の発生率が高くなりました。
このことから、飲酒によるがん全体の発生率への影響は、喫煙によって助長されることがわかります。
もちろん、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など、飲酒と特によく関連していると考えられているがんだけでみてみると、喫煙していなくても飲酒量が増えればがんの発生率が高くなるので、油断は禁物です。
ともあれ、そうすると、口唇・口腔・咽頭・(食道)・肝・喉頭など特殊な部位のがんを除けば、飲酒単独で喫煙なしなら、飲酒量が増えてもがんのリスクにはならないと言えます。
私など左党には大変嬉しいJPHC研究報告であり、国立がんセンターの方角に足を向けて眠れないですね。
飲酒と喫煙が重なるとなぜいけないのか
アルコール(エタノール)の分解物のアセトアルデヒドが、がんの発生にかかわるようです。
そして、喫煙者では、エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。
やはり多量飲酒はよくない
がんを含めて、いろいろな生活習慣病をまとめて予防しようと考えると、お酒は日本酒換算で一日1合程度までに控えておいた方が安全なようです。
大量の飲酒は、シンプルに肝臓や膵臓にダメージを与えます。
結論です。
飲酒と喫煙のどっちがより悪いのかと言えば、喫煙と結論できます。
しかし、当たりまえではありますが、大量の飲酒は厳禁です。
本日のブログ記事、グラフや図も含めてより詳しくは「多目的コホート研究(JPHC研究)」をご参照頂ければ幸いです。
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