MAG2 NEWS MENU

核戦争は“ラクダ”のあとで。半年後にロシア必敗プーチンの腹の内

今月24日で開戦から1年となるウクライナ戦争。一貫して強気の発言を繰り返してきたプーチン大統領ですが、国際社会を敵に回した代償は決して小さなものではないようです。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、最新の戦況と露軍が取り始めた作戦の内容を紹介。さらに2月2日に行われたプーチン氏の演説内容を引きつつ、この紛争が核戦争となる可能性を強く指摘しています。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

ロ軍が「ラクダ」と「肉の波」でウ軍に大規模攻勢

ロ軍が「ラクダ」と「肉の波」でウ軍に対して、大規模攻勢をかけてくるという。今後の戦況を検討しよう。

ロ軍本体も、1ケ所に大量の歩兵を集めて、波状攻撃をする人海戦術を各所で実施している。ウ軍も対抗上、戦闘員を集めているが、人命重視のウ軍は押されている。ロ軍より優秀な兵器が必要であるし、対抗戦術の開発も必要がある。

ロ軍は、人海戦術の上に、輸送部隊をウ軍の手薄な場所に潜入し、突破する戦術を取り始めている。

欧米戦車の供与が決まって、戦車到着までにロ軍は大規模攻勢を仕掛けてくると、ウ軍は見ているし、ロ軍の攻勢が始まっているとも見える。

ロ軍が人海戦術で攻勢をかけているのが、スバトボ・クレミンナの反撃、バフムト包囲、ボハレダラの3ケ所である。そこに集中的に、ロ軍の兵員を集めている。

バフムト・ドネツク方面

ロ軍・ワグナー軍はシイルとブラホダトネも占領し、ウ軍主力は、T1503号主要道の西側まで後退した。しかし、現在、ウ軍の在留部隊がいる南のクラスノ・ホラと北のロズトリフカとミコライフカをロ軍は攻撃している。この北の街の延長上にシベリスクがあり、ここまでロ軍は進軍したいようである。シベリスクを取られると、クレミンナ攻撃のウ軍は、撤退する必要になる。

それと、ウ軍のいない地点からバフムトフカ川までロ軍は来たが、その渡河でロ軍は大損害を出している。このため川を渡った西側にあるブラホダトネから川に沿って南下している。

川の反対側にあるパラコビフカにもロ軍は攻撃している。ウ軍のいない地点で川を越えたたようである。ウ軍のいない地点を探るためには、戦車や軍人とは違う民間人に偽装したトラックなどの輸送隊を使い探すことで、ウ軍からの攻撃を受けないで潜入できることをロ軍は知ったようである。

このため、輸送隊で潜入し、その後、ウ軍のいない場所から人海戦術で攻撃するという方法を取り始めたようである。これで、人員の損耗を少なくするようである。そして、この輸送部隊を「ラクダ」と呼び、人海戦術を「肉の波」と言っているようだ。

バフムトの南側のクリシチウカ、アンドリウカもロ軍が占領して、西にあるイワニフカにロ軍が攻めてきたが、ここはウ軍が防衛している。

ここで止めないとチャシブ・ヤールを取られる。チャシブ・ヤールは、バフムトへの00506道の補給路上であり、ここを取られるとバフムトへの補給が難しくなる。このため、執拗にロ軍は攻めてくる。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

そして、まだ南側のロ軍は、人員補充が効いているので、人海戦術攻撃を止めない。すでにT0504主要道は補給に使えなくなり、今は地方道00506を使って補給をしているという。今使える補給路はM03高速道路と00506道の2本である。

ドネツクのボハレダラには、ロ軍海軍歩兵部隊が攻撃したが、ウ軍機甲部隊の反撃で大損害を出したが、GRUのスペツナズや特殊部隊などを増援して、街を2方面から攻撃しているが、ボハレダラを包囲するようであるが、今のところ成功していない。

ロ軍の勝てる方法は、損害無視の人海戦術と輸送部隊の潜入しかないようであるが、逆に、それに対応したウ軍の人的被害の少ない防御体制が確立していない段階である。このため、ウ軍は苦しくなっている。

大量の人員が突撃してくるので、重機関銃などを水平に打つなどの方法を取っているが、弾薬がなくなる時点で熟達したロ軍兵が攻めてくるので、機関銃が効かなくなり、人的損害が出ている。しかし、物量で押すロ軍の砲撃量も少なくなってきたようである。

マリンカでは、露軍は焼夷弾などのロケット弾で攻撃しているが、砲撃はほとんどないので、砲弾が欠乏している可能性があると。

そして、ロ軍の攻撃が下火になるのは、人員の損害が大きくなり、人員補充が効かなくなる時である。そこまで、ロ軍は突撃をしてくる。

このような攻撃であり、ロ軍は、いくら動員で兵隊の数を揃えてもまともな軍用車両と弾薬が足りないため、やっても自殺行為になるだけとも見える。勿論、ウ軍にも犠牲者は出るが、その比は、100倍以上になる。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ロ軍が、大量の人員と装備を集めて、大規模反撃を計画しているようだ。このため、ロ軍は、クピャンスクに対して砲撃も増えている。ロ軍の反撃もあり、ウ軍は前進せずに、ロ軍の2月24日以降の大規模攻勢に備えて体制を固めている。

クレミンナ包囲網も前進を止めて、ロ軍の反撃に備える体制であるが、コズマネとディプロバをロ軍に占領されて、ウ軍は後退した。ロ軍の空挺部隊はヤムポリフカを攻撃したが、ウ軍は撃退した。ロ軍の反撃が開始したようにも見える。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

ロシアとウクライナの状況

ウ軍は、ロ軍の人的損害を覚悟の上での大規模攻勢に備える体制を取り始めた。この背景には50万人以上の訓練済の動員兵を前線に配備したからである。秋の動員数は30万人であるので、その後も動員を続けていたことになる。この人員で大攻勢を仕掛ける可能性を、ウ軍は警戒している。

このため、ロ軍は、契約軍人が契約期間を満了しても契約解除に応じず、動員兵の退役も認めないという。突撃させて死ぬことでしか退役できないようにしている。脱走や投降、撤退も監視して、させないようにする督戦隊を配備して、士気が低くても戦える体制にしている。脱走兵は、皆の前で殺すようであり、逃げ出すこともできないようだ。

このような状態であり、今までにロ軍の人的被害は、死傷者数が20万人を超えていると見られている。

もう1つ、2023年2月2日に、ロシアは新規のパスポート発行を停止した。動員逃れで、海外に逃げ出す人を止めるためである。

プーチンは、欧米戦車などの兵器が揃う前に、ウ軍に攻勢を掛けるしかないので、3月中に東部ドネツィク・ルハンシク両州の完全占領することを命令したという。ということは、クレミンナ・スバトボやバフムトで大規模反撃があることになる。

そして、再度、ロ軍はリマンを目指すことになりそうである。そうしないと、ドネツクの完全占領はできないからである。

その攻勢は、2023年2月24日以降に始まる可能性があるとのこと。

ダニロフ国防会議書記やレズニコフ国防長官は、50万人のロ軍が大規模反撃に参加するが、多くの損害が出て弱体化して、ウ軍が5月欧米戦車などが揃った後の反転攻勢でのロ軍防御力を弱めることになるとみているようだ。このため、ロ軍の大規模攻勢に、ウ軍がどう持ちこたえるかが、重要なことになる。

ウ軍は、レオパルト2戦車が100+α両、ラインメタル社のレオパルト1戦車が88両供与される方向である。しかし、訓練が必要であり、早くても3月終わり、戦場に出てくるのは、5月になる可能性もある。

なお、前回ギリシャも供与する可能性があるとしたが、ギリシャは供与しないことになった。トルコとの紛争があり、現時点では、それに備えることが必要であり、余力がないとした。

続いて、ポーランドもレオパルト2戦車14台供与と言っていたが、すぐにはできないと言い始めている。カナダを除く、その他の国もすぐにではないというので、ドイツは逆に説得に懸命になっているという。ということで、ラインメタル社のレオパルト1戦車の88両が非常に大きいことになっている。T-74戦車と同じ世代の戦車であり、戦場では活躍が期待される。

それと、レオパルト1戦車の主砲は、105mm砲弾であるが、あまりこの砲弾が使われていない。このため、ドイツはブラジルに105mm砲弾の供与を打診したが断られたという。アメリカのストライカーMGS用の105mm砲弾やイタリアの105mm砲弾、それと韓国のM48とK1用砲弾などである。日本も使用しているが法的制約がある。

そして、ウ軍は、レオパルト2戦車と装輪装甲車が手に入り、次にF-16戦闘機、アパッチヘリやGLSDBなどの長射程爆弾などの兵器・弾薬の供与を欧米諸国に要請している。

この内、GLSDBの供与が決まった。HIMARSから発射できるが、ウ軍にすでにあるHIMARSは、100km以下のロケット弾しか発射できない制限がついているので、GLSDB用の発射HIMARSを提供するという。

GLSDBは、150kmの射程があり、クリミア半島まで届くことになる。このため、前線から100km程度離れた場所にロ軍は、補給基地を作り補給体制を完成させたが、この補給基地を150km離れた場所に作り直す必要がある。

そして、残念ながら、F-16の提供について、米国は供与しないと表明しているし、ウォレス英国防相は戦闘機供与に対し、「この恐ろしい紛争において魔法のつえはない」という。間接的な否定のように聞こえる。というので、供与は当分先になるようだ。

ポーランドはF-16の供与を表明しているが、EU全体の承認が必要というので、難しいようである。言い出しっぺのポーランドでしょうね。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

フランスもミラージュ戦闘機の供与と述べたが、これは英国が供与する巡航ミサイルの発射機として、少数の提供を検討するということで、前線近くでの戦闘を想定していないようだ。

もう1つ、防空システムでは、フランスが「グランドマスター200」レーダーシステムを供与するし、地対空ミサイルシステムSAMP/T-Mambaをフランスとイタリアは供与する。このレーダーとミサイルの組み合わせは強力である。

イスラエルのネタニエフ首相は、「アイアンド-ム」の提供を検討しているという。もし、提供されると、砲撃にさらされているヘルソンやハリキウなどの砲撃を駆逐できる可能性がある。

このような供与で、プーチンは、ボルゴグラード(旧スターリングラード)で、ウクライナへの戦車供与を決定した欧米諸国について、「ロシアは彼らとの国境に戦車を送らないが、対抗手段があるし、ロシアに勝利できると考えている者は、ロシアとの現代戦が(過去とは)別物だと理解していない」とも発言。核兵器の使用を示唆した。ということで、最後は核戦争になると見た方が良い。

ラブロフも、「西側諸国がロシアの永続的な敗北を目論んでいる」し、「モルドバを次のウクライナにする為に、自由民主主義とは程遠い方法でサンドゥ大統領を国のトップに据えた」ともいう。

逆に、CIAバーンズ長官は、今後6ヶ月がウクライナでの戦争の最終結果を左右する「間違いなく決定的な」ことが起きると発言した。勿論、ウクライナが勝利することになるが、プーチンが1ヶ月ごとに支配地域が減少する事態が起きて、交渉にシフトすることになるか核使用の可能性があるようだ。

実をいうと、米国は、ウクライナが領土の20%をロシアに割譲する条件の和平案を打診したが双方が拒否したとのことで、ウ軍の攻撃制限を緩和して、より攻撃できる兵器を供与しだした。

このことで、ロシアを負け込ませて、交渉の場に着くことを目指し始めたようだ。ウ軍は交渉の場に出すことは簡単で、兵器の供与を止めればよいが、ロシアを交渉の場に出すには、負けて領土が縮小する事態が必要である。そして、2月24日の線まで戻して、停戦にするというのが、米国の終戦目標であろう。米国の真の敵は中国あり、ロシアではない。

そして、プーチンは、交渉を蹴ったことで、現在より多くの領土を獲得する必要が出て、総動員に近い体制にした。

それと、ロシアの味方が徐々に少なくなってきた。ロシアの味方はイランと北朝鮮ではあるが、ウクライナ東部の「復興支援」のため、北朝鮮が建設作業員として軍人や警察官の派遣を進めているが、一方、戦争が長引き、ロ軍が負けそうであるため、北朝鮮は労働者の派遣を一旦凍結しているともいう。北朝鮮もロシアの味方をすることは、危険だと気が付いたようである。

逆に、ハンガリーとオーストリアがウクライナ支援をしないと述べているし、中立国のスイスは、ウクライナへの自国兵器輸出が第3国経由でできるように法改正する審議を議会で始めるという。

オーストリアは、ウィーンの国連機関に勤務する2人を含むロシア人外交官4人を追放する方針を明らかにした。オーストリアは中立に拘っている。スイスは中立の中でどう支援するかを考えている。中立の中でも色が出ている。

そして、フォンデアライエン欧州委員長とミシェル欧州大統領は、訪宇して、ゼレンスキー大統領と会談した。この中でフォンデアライエン委員長は、オランダのバークに国際法廷を作る準備のための「国際センター」を設置して、ロシアの侵略と戦争犯罪の検察を行うとした。ロシア敗戦時の法廷の準備を行い始めている。

もう1つが、ウクライナ復興費用で、没収したロシア資産を転用する方向で欧米は動いている。

米国とロシアの核軍縮条約「新戦略兵器削減条約(新START)」に規定された査察をロシア側が拒否しているとした。戦争での核使用が徐々に、その可能性を増している。

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

世界の状況

CIAのバーンズ長官は、中国の習近平国家主席が2027年までに、台湾侵攻の準備を行うよう軍に指示しているとの見方を示した。

本当は、この状況で米中対話を行い、米中の対話で事態の進行を遅らせる必要があると思うが、米本土上空で中国のものとみられる偵察気球が発見されたことを受け、ブリンケン米国務長官の中国への訪問を延期した。なお、気球は大西洋上に出た時点で、空対空ミサイルで破壊したという。

しかし、この気球で米国の世論は、大騒ぎになっている。空港では一時的に航空機の発着を見合わせるなど、大変である。このため、ブリンケン米国務長官の中国への訪問を延期になったともいう。

ロシアの複数の国営軍需企業に対し、中国企業が戦闘機の部品や電波妨害機器などの軍用品を輸出し、ウクライナ侵攻を支援している問題で、早急に中国と話し合うことが必要になっている。

ということで、対ロ政策上、中国と対話が必要であるとは認識しているようであり、これ以上の両国関係悪化は、インフレを加速することも認識しているともいう。

なお。国際戦略コラムのHP上にYouTubeを貼ります。出てくる地名がどこにあるのか分からないと思いますので、動画で確認ください。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年2月6日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・津田慶治さんのメルマガ

初月無料で読む

image by: Alexey Smyshlyaev / Shutterstock.com

津田慶治この著者の記事一覧

国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 国際戦略コラム有料版 』

【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け