MAG2 NEWS MENU

中国人女性「沖縄の無人島購入」SNS投稿は“氷山の一角”。日本中の土地を買い漁る中国に警戒すべき理由

中国の交流サイトに投稿された、中国・山東省出身の中国人女性による「沖縄の無人島を買った」と語る動画が、日本中を震撼させています。沖縄の無人島を外国人がいとも簡単に購入できてしまうことに加え、沖縄の島が中国資本になってしまうことに懸念点はないのでしょうか。今回の騒動を「氷山の一角」だとして、北海道など日本中の土地を買い漁る中国人の動きについて解説するのは、外務省や国連機関とも繋がりを持ち、国際政治を熟知するアッズーリ氏。アッズーリ氏は今回、こうした土地購入が習近平政権の進める「軍民融合」政策に利用されると指摘し、日本の安全保障が脅かされる前に法整備を急ぐべきだと提言しています。

外国人の土地購入を規制する法律には該当せず?

2月、30代の中国人女性が沖縄本島から20キロほど離れた無人島・屋那覇島(やなはじま)を買ったとSNSに投稿し、日本の世論で大きな問題となっている。女性は山東省青島(チンタオ)出身で、金融業や不動産業を営んでいるという。

しかし、この女性自身が島の所有者になったわけではなく、女性の親族が経営する東京都内に拠点を置く中国系企業が2年前に購入し、現在では島の51%あまりを所有しているそうだ(他は国有地や村、個人が所有)。

この件について、日本政府は今日までに「屋那覇島は領海基線を有する国境離島、有人国境離島、地域離島に該当するものでなく、昨年施行された「重要土地等調査法」の対象とはならない」としている。

外国人の土地購入規制に関する「重要土地等調査法」は2021年6月に施行されたが、この法律は安全保障上重要な施設の周辺1キロを「注視区域」に、自衛隊司令部や国境離島など特に重要とされる区域を「特別注視区域」に指定し、国は必要に応じて不動産所有者の名前や住所、国籍や使用状況などを調査できるものだ。

そして、所有者や賃貸者に対して使用停止などを要請でき、従わない場合には2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金を課すことが可能となる。また、特別注視区域では、所有権を変更する際、当事者たちに名前や使用目的などを明記した届け出が義務付けられている。

実は「土地を買い漁り放題」だったニッポン

ちなみに、日本では1925年に「外国人土地法」という法律が施行され、同法では政令で外国資本や外国人の土地購入を制限できると明記されているが、その政令は太平洋戦争直後に廃止され、「重要土地等調査法」の施行以前までは実効性を失ってきた。要は、法律はあるものの事実上規制されておらず、外国人が自由に不動産を購入できる状況だったのだ。

「重要土地等調査法」は安全保障上の懸念を受け、長年の議論を重ねる中でようやく施行された法律である。しかし、今回の屋那覇島の件を受け、国民からは「重要土地等調査法」では日本の領土は守れない、もっと言えば、同法では「習政権が進める軍民融合を止められない」との懸念が強まっている。

沖縄だけじゃない。中国に侵食されている北海道

このようなケースは今回が初めてではない。近年、日本各地で同様のケースがみられる。北海道では、中国系企業がスキー場やゴルフ場、広大な畑や水源などを購入し、新たに娯楽施設やホテルを含むリゾート開発を進めている。たとえば、過去には、上海を拠点とする投資会社「復星集団(フォースングループ)」が「星野リゾートトマム」や「クラブメッド」を買収したり、夕張にある「ホテルマウントレースイ」などのリゾート施設が中国系企業「元大リアルエステート」の子会社に2億4000万円で売却されたこともある。

また、スキー場で有名なニセコでは、中国系の不動産開発会社やホテル会社がリゾート開発を強化し、地元の不動産会社を訪れて、建物や土地の購入を検討する中国人も増えているとされる。さらに、新千歳空港近くの土地を中国人が購入するケース、稚内市の野寒布岬(のしゃっぷみさき)には海上自衛隊の基地から1キロしか離れていない広大な土地を中国人が購入するケースなども報告されている。

こういった事実に、地元民の間では「いつか地元が中国人によって支配され、チャイナタウンになるのではないか」「活性化のために、地元の不動産会社も中国人に土地を売らざるを得なくなっている」など懸念の声が聞かれる。

また、野寒布岬のケースのように、日本北限にある海上自衛隊の基地は、ロシアや中国の動きを捉える上でも国防的に重要なレーダーサイトがあるが、この周辺に中国人が土地を購入する目的は何かと国防・安全保障の視点からも警戒感が高まっている。このようにみれば、今回の屋那覇島のケースは中国人による日本浸食の1つのケースに過ぎない。

習近平政権が推し進める「軍民融合」

我々はこれを単に中国人一個人、単なる一企業の行動というだけで終わらせてはならない。我々は、習政権が強化する「軍民融合」戦略にいっそう警戒するべきだろう。習近平国家主席は、中華民族の偉大な復興、社会主義現代化強国の実現を目指し、軍民融合の強化を徹底している。

軍民融合とは両者の壁を取っ払った政策を進めることで、その1つに民間技術の軍事転用がある。米バイデン政権は2022年10月、先端半導体に必要な製造装置や最新技術が軍事転用される恐れを警戒し、中国に対する半導体輸出規制を発表した。そして、先端半導体に必要な製造装置で世界シェアを持つ日本やオランダの協力が必要なバイデン政権は今年1月、両国に対して対中半導体輸出規制に加わるよう要請している。米国ほど厳重な規制を敷くわけではないものの、日本も米国に協調することになったが、これは軍民融合に関する典型例と言えるだろう。

日本の土地買い漁りも「軍民融合」に利用される恐れ

そして、土地購入も軍民融合に利用される恐れがある。屋那覇島のケースもそうだが、中国は日本以上に「政治>経済」「政府>企業」であり、たとえば、沖縄の離島や北海道の沿岸部に土地を購入した中国企業、中国人に対して、その所有権を中国政府に渡すよう強制したり、“外見は民間だが中身は国営”の企業に対して、日本の土地を購入するよう圧力を掛けることは今後十分に考えられる。

台湾問題を抱える中国にとって、在沖縄米軍がどのような戦略を練っているか、台湾有事にどれほど意欲があるかを探ることは極めて重要であり、沖縄県の土地購入はそのまま情報収集・偵察のアジトとして利用される可能性もあろう。

中国のこういった政策や戦略はそもそも日本の主権を侵害するものであり、許されるものではない。しかし、事実は事実として蓄積されていく。中国は今まさに「重要土地等調査法」の抜け道を探っている最中なのだろう。この法律だけでは日本の土地、安全保障は守れない。全離島の外国人購入を規制するような、もっと厳しい規制を敷くことが求められている。

image by: National Land Image Information (Color Aerial Photographs), created by Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism, distributed by Geospatial Information Authority of Japan, Attribution, via Wikimedia Commons

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け