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すでに「日本の水」が危ない。警鐘を鳴らす“水環境の専門家”が明かした恐ろしい現状

蛇口をひねれば安全な水が当たり前のように出てくる日本。しかし、実はその水環境を取り巻く問題は世界中で起こっており、日本もまた例外ではないといいます。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、 水の専門家として活躍する吉村和就さんのインタビューからその問題を明らかにしています。

日本の水が危ない??必要な水が十分に手に入らなくなる危機的状況も

日本は「水ボケ」に陥っている──そう警鐘を鳴らすのは、水環境の専門家として世界で活躍するグローバルウォータ・ジャパン代表の吉村和就さんです。

蛇口をひねれば当たり前のように水が出てくる日本では実感しにくいですが、実は自国に水源があり、それを安全に利用できる国は、193か国の国連加盟国のうち僅か21か国しかありません。

そのため、世界では水を巡る熾烈な争奪戦が行われており、今後、世界人口の増加や地球温暖化などによって、日本でも飲料や産業に必要な水が十分に手に入らなくなる危機的状況になる可能性があるのです。

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数年前、来日したサウジアラビアのサルマーン国王とホテルで懇談した時のことである。ルームサービスで水が提供されるのを見た国王が怪訝な顔をして、「私は水を注文していない」とおっしゃるのを聞いて、我われ日本人との認識の違いを実感した。砂漠に住む彼らにとって水は大変希少であり、有償で飲むのが常識なのだ。

自国に水源があり、それを安全に利用できる国は、国連加盟国193か国のうち僅か21か国しかない。大半の国は、多国間を流れる国際河川に水源を頼り、激しい水の争奪戦を余儀なくされているのである。

恵まれた自然環境と先人の努力のおかげで豊かな水資源を享受してきた我われ日本人は、残念ながらそうした世界の現実に疎く、水の大切さや、水を守ろうとする意識に乏しい「水ボケ」状態に陥ってしまっている。

私は水環境の専門家として国連の環境審議官を経て、世界が直面する水の問題に長年取り組んできた。活動を通じて、日本の豊かな水環境は決して未来永劫盤石なものではないことを痛感すると共に、日本人が水の重要性に目覚め、一刻も早く「水ボケ」の状態から脱却しなければ、世界が直面する深刻な水問題に早晩呑み込まれてしまうという強い危機感を抱いている。

長年水に関わってきた専門家の立場で、まず世界がいま直面している水問題について記しておきたい。

一人の人間が一年間に使用する水は1,700立方メートルといわれ、それより少なくなれば水ストレス、つまり日常生活に不便を感じる状態に見舞われるといわれている。そして2030年には世界人口の半数、約40億人もの人が水ストレスに見舞われることが予測されている。

主な要因は、急速な人口増加と地球温暖化である。

過去100年の歴史を紐解くと、人口増加率の2倍の水が必要になることが明らかになっている。

現在80億人の人口がいまのペースで増え続け、1.25倍の百億人に膨れ上がった時、既に不足している水が現在の2.5倍も必要になる。

水不足に拍車をかけるのが、地球温暖化に伴う異常気象である。水資源というのは、必要な時に必要な量と質が手に入らなければ資源として活用できない。

ところが、近年は各地で旱魃が長期化して土地が干上がったり、逆に洪水を起こすほどの異常な豪雨が頻発し、水の安定供給が極めて困難になってきている。

また、かつて赤道近辺の海水は太陽の熱によって温められ、蒸発して雲になり、温帯地域に雨をもたらしていた。

しかし、地球温暖化で過剰に温められるようになった海水は、カナダやロシアといった高緯度地域に大量の雨や豪雪をもたらすようになっている。

これらの地域では、大量の降雨を想定した水インフラが十分整っておらず、またその治水技術にも乏しいため、深刻な水害リスクが高まっている。

その一方で、これまで豊富な雨量の恩恵を受けていた温帯地域は、十分な降雨に恵まれなくなり、世界における水の偏在が急速に進みつつある。

もちろん日本も例外ではない。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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