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イスラエルとイランで「核戦争」危機。プーチンが招いた地球滅亡の世紀

半年以上に渡り激戦が続く、ウクライナ東部の要衝バフムト。数日中にロシア軍の手に落ちるとの報道もありますが、ウクライナ軍はついにこの地から撤退することになるのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、刻一刻と変化する戦況を詳しく解説するとともに、バフムト陥落の可能性を考察。さらにこの戦争が世界大戦の序章でしかないとして、その理由を明示しています。

ロシア軍「バフムト包囲網」完成真近もウクライナ軍は撤退せず“死守”か?

ロ軍のバフムト包囲網完成真近でも、ウ軍はバフムト撤退をせずに死守するようである。今後の戦況を検討しよう。

ロ軍は、バフムト包囲を完成させるために、兵力と砲弾などを集めているようだ。

そして、ウ軍も増援部隊を出しているが、それでもロ軍大規模攻勢の成果がバフムトで出ている。ウ軍は、バフムトから撤退して、チャンプ・ヤールに新しい防衛線を作っているが、当面はバフムトを死守するという。

ロ軍は、クレミンナやドネツクの攻撃要員もバフムトに回しているようだ。多くの方面で攻撃が少なくなっている。人海戦術ということは、人的資源を集中して、ウ軍の数倍以上の人員を集める必要がある。

ウ軍も大増援部隊を出して、ロ軍の人海戦術に対抗するので、ロ軍も人員を集める必要になる。そして、人的被害を無視して進撃スピードを上げるしかない。ワグナー軍の主力部隊を投入したことで、巧みに前線を突破していく。

ウ東部軍広報官セルヒー大佐は、「バフムトでの戦闘は極めて激しく、ワグナー軍は高練度の主力兵士たちを投入している」と述べた。

このため、ワグナー軍は、M03号線を超えて西側のベルキウカを占領し、トボボ・バシリフカも占領した。そこを超えて、地方道00506線を切りにきている。しかし、カザリジネスクへの攻撃は下火になっている。この方面の兵力をトボボ・バシリフカ攻撃に差し向けたようである。トボボ・バシリフカ占領後は、再度カザリジネスクを攻撃している。

戦術の柔軟性が高いワグナー軍

また、ロ軍とワグナー軍は、ヤヒドネを占領したが、その先には前進できないのでバフムト方向に前進して、金属加工工場付近でウ軍と戦闘になっている。現在はワグナー軍の第3波が、ロ正規軍で置き換えられつつある状況であり、ウ軍もここに大部隊を送り、攻撃を抑えている。ワグナー軍の兵力は、トボボ・バシリフカとバフムト東部に集中しているのであろう。

ウ軍陸軍司令官のシルスキー大将は、バフムトに滞在し「まもなく始まる反転攻勢まで時間を稼ぐ必要がある」と部隊を鼓舞し、ロ軍の侵攻を食い止める姿勢を強調し、さらなる増援でバフムトを防衛するようである。

しかし、チャンプ・ヤールにあった大隊司令部が砲撃されて、大隊司令官が死亡したことで、これも関係しているようである。

ワグナー軍は、戦術の柔軟性が高いので、ウ軍もおちおちできない。トボボ・バシリフカの陥落で、メインのM03補給路だけではなく、地方道00506道も切断される可能性が出てきた。

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潰えたウクライナの「ワグナー軍撃退」という期待

一番痛いのが、ウ軍がベルキウカを奪還する攻撃をしていたが、この部隊の後方からワグナー軍に攻撃されることになるので、撤退するしかないことである。

バフムト市内を流れるバフムトフカ川の橋を破壊したことで、ウ軍は、バフムト市東部から撤退して、川を防御線として戦う予定でしたが、ワグナー軍は、このバフムトフカ川の渡河に成功して、市の西に攻撃してきて、第5小学校が占拠されたが、このワグナー軍を排除したようであり、再度、バフムトフカ川が防衛線になったようだ。

これにより、ワグナー軍トップのプリゴジンは、バフムトの東部を占領したと豪語している。今、バフムト攻撃にワグナー軍は必要とゲラシモフ総司令官も判断して、砲弾や装備をワグナー軍に優先的に補給し始めた。

しかし、ワグナー軍の消耗は、激戦で、しかも囚人の募集もロ軍から止められているので、兵員不足が起きているようである。海外兵の募集も損耗率が高いことで、集まりにくい状況のようである。

しかし、ウ軍のワグナー軍撤退という期待は、潰えた。

セベロドネツク攻撃時より減少したロ軍の砲撃量

ウ軍は、チャンプ・ヤールにつながる橋が、ロ軍により破壊されたが、その橋を復旧して、補給路として地方道00506道を使って補給している。

バフムトの南側のイワニフカに攻めていたロ軍を道から遠ざけて、T0504主要道を確保していたが、ロ軍精鋭部隊を送り、イワニスク市内に取りついたようだ。市街戦になっている。バフムト南側でも、ロ軍精鋭部隊を送り、ショッピングモールまで前進して、そこでウ軍と戦闘になっている。このため、T0504主要道を補給ラインとして使えないようである。今は、地方道00506線を補給線として使うしかない状態である。

北から攻めてくるワグナー軍には負け気味であるが、南のイワニフカを攻めるロ軍は精鋭部隊に置き換わり、ウ軍精鋭部隊は、ロ軍の攻撃を抑えるようである。ウ軍はイワニスクまで後退した。

しかし、撤退時は、ウ軍の殿を務めるのは第93機械化歩兵旅団のようであるが、T0504主要道の周辺までロ軍が来ている。撤退の可能性はまだある。

バフムトの北のフェドリフカ攻撃のロ軍もバフムトに移動したようであり、攻撃がない。ビロホリフカのロ軍攻撃もなくなった。ここの部隊もバフムトに移動したようである。

そして、このバフムトではウ軍の砲撃量の4倍以上もロ軍は砲撃しているが、セベロドネツク攻撃時は、ウ軍の10倍の砲撃であった時から比べると、ロ軍の砲撃量は減っているともいう。

当分、戦況が揺れ動く事態になる。このコラムは、3月12日朝時点での記事であり、今後の展開は変化する可能性がありますので、ご容赦ください。

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誰がシベリア露空軍基地の戦闘機に放火したか

ドネツク方面

ドネツクのボハレダラとマリンカでは、ロ軍は攻撃しているが撃退されている。バフムト以外では、ロ軍の攻撃力が弱い。

アウディーイウカ周辺でもロ軍は攻撃しているが、撃退されている。

スバトボ・クレミンナ攻防戦

ロ軍は、この方面で大損害を出して、攻撃を中止したようであり、部隊をバフムトに回しているようだ。

しかし、クピャンスクに向けて、ロ軍機甲師団と機械化歩兵旅団の1万人で攻めてきているが、ここでも、フリャニキウカへの攻撃がなくなった。ここのロ軍もバフムトに移動した可能性がある。

シベリアではパルチザンが戦闘機に放火

ウラジオストク近郊のアルチョム空軍基地で、Su-27戦闘機が放火された。自由ロシア軍のパルチザンがやったようだが、シベリアにもパルチザンがいるようだ。

インフラ攻撃

ロ軍は9日、ウクライナ全土へ1月以降最大規模となるミサイル攻撃を実施した。発射されたのは計81発で、28発が巡航ミサイルKh101、Kh555で、20発が高精度巡航ミサイル「カリブル」、13発が地対空ミサイルS300で、米欧のミサイル防衛では迎撃できない極超音速ミサイル「キンジャル」6発、飛行速度が速く迎撃が難しい空対艦ミサイルKh22、Kh31、Kh59などであった。

そして、ロ軍はミサイル攻撃に先立ち、8機のイラン製ドローン攻撃した。このインフラ攻撃で、各地で停電が生じたが、回復不能なレベルの被害ではないという。この攻撃で、少なくとも11人が死亡、22人が負傷した。

迎撃したのは、巡航ミサイル34発と無人機4機であり、キンジャールは1つも迎撃できなかった。

トルコとロシアの戦争になりかねない黒海情勢

日米欧がロシア資産を凍結したが、その金額は8兆円であり、ウクライナ復興資金に充当するという。

日本の政府・自民党は、ウクライナなどの被侵略国に殺傷力ある武器を援助できるように、輸出緩和案を検討し始めた。世界戦争の序章の内に、関係法を見直す必要がある。戦争の時代であることを肝に銘じることだ。日本は復興支援で224億円を提供しているが、軍事的な支援ができていない。世界を二分する戦争の時代に備えて、普通の国になるしかない。

国連とトルコが仲介した「黒海穀物イニシアチブ」は昨年7月、ウクライナの3つの港から穀物を輸出することを可能にした。この合意は11月に120日間延長され、反対がなければ3月18日に延長されるが、ロシアはすでに、ロシアの輸出に影響する規制が解除された場合にのみ、延長に同意すると表明している。

今後、国連、トルコとウクライナだけで、延長する可能性もある。エルドアン大統領が、どうするかが見ものである。黒海ではトルコの海軍艦船量は、ロシアの10倍もあり、貨物船のコンボイをトルコ海軍が護衛するので、ロ海軍が攻撃すると、トルコとロシアの戦争になりかねない。

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遅れに遅れる欧米の戦車の到着

スロバキアは、ミグ戦闘機10機とポーランドも30機のミグ戦闘機をウ軍に供与することが決定した。

逆に、スイスは、レオパルト2の第3国経由でのウ軍供与に対して、拒否した。このため、スイスから他国への兵器輸出は、今後なくなりそうである。スイスの代わりをするのが韓国のようである。韓国はウクライナへの第3国経由輸出を認めるという。

それと、パキスタンが44両のT-80UD戦車を西側からの財政支援と引き換えにウクライナに供与するようである。パキスタンも欧米サイドになる。

しかし、ポーランドのスキプチャク将軍は、ウ軍の反攻に必要な西側戦車の数は少なくとも400~500両だ。レオパルド2戦車は1個大隊では不十分で、16~20個大隊が必要だ。今年中に戦争を終結させるために、レオパルド、エイブラムス、チャレンジャーなどの最新戦車の納入を早めるよう、西側に呼びかけた。

というように、まだ準備が不十分である。それと、デンマーク、ドイツ、オランダのレオパルド1戦車約100台のうち、最初の1台が5月上旬にしかウ軍に渡されないということで、5月以降、夏にしか戦車400両は揃わないことになる。もしかしたら、夏以降秋になる可能性もある。2023年中に戦争終結が難しいような情勢である。

ぐずぐずしていると、米中の対決が極まって、世界戦争になってしまうよ。世界戦争にしないためにも、早くロ軍を敗退させて、停戦に持ち込む必要がある。

インドは中立から若干欧米よりにシフトした。対中では日米に組するが、対ロでは組しないが、より中国の強さが際立ち、欧米に寄ってきた。

それと、ハンガリーもロシア離れになるようである。セルビアがロシアから離れでEUサイドに鞍替えしたことで、ハンガリーもNATOに留まることを優先するようである。ということで、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟を承認するようである。

全世界の貿易から排除されるロシア

残すはトルコであり、5月の大統領選挙後にしか判断できないという。

しかし、トルコ政府も欧米の制裁に従うことを決定、3月1日よりロシアへの物資の提供やボスボラス海峡通過を禁止した。ということで中立から欧米サイドにシフトした。

このことから、次に注目なのが、アルメニアとジョージアでしょうね。ジョージアは親EUデモで、ロシア風「外国の代理」法案を取り下げた。

また、EUボレル外交安全保障上級代表(外相)は、ウクライナに侵攻するロシアへの制裁措置について、「これ以上することはほとんどない」とした。金融活動作業部会FATF(ファトフ)からロシアを除名することになり、強度の制裁になる。

金融活動作業部会FATF(ファトフ)とは、マネーロンダリングやテロ資金供与などへの対策を監視する国際的な枠組みであり、これからの除名とは、世界との貿易から排除されることであり、イランと北朝鮮はすでに除名されている。

ということで、今後は、財政・軍事面でウクライナ支援を一層強化する必要があるとしたのだ。

FATF除名された国と貿易をすると、その国も除名されることになるので、トルコもハンガリーもロシアから離れるしかないことになる。

しかし、中国はどう出てくるのかが、まだ分からない。

ちょっと違った支援としては、ラトビアで酒気帯び運転により押収した車をウクライナへ寄付されるとのことである。これは多くの国で真似できそうである。

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イスラエルのイラン攻撃から始まる核戦争

ベラルーシのルカシェンコは、中国訪問で、兵器工場の建設と技術移転とそれに伴う中国の投資を呼び込み、続いて、イランを訪問する。ここでも武器工場をベラルーシに作ることになるようである。

イランと北朝鮮は自国に備蓄していた弾薬と火器をロ軍に提供したが、イランは核技術をロシアから手に入れたようであり、核兵器を作れるようになっている可能性が高い。

これに危機感をイスラエルは感じて、イライス戦争になるようである。この2国は、核戦争になりやすい。地続きではなく、ミサイル攻撃から戦争が開始するからである。

そして、リトアニア情報部門は、ロシアはあと2年程度、今のレベルの攻撃ができると分析している。それは、冷戦中後の時期に弾薬や兵器を備蓄したことで、膨大な予備があるからだという。しかも、他国から砲弾等が提供されると、戦える期間は伸びるという。このため、プーチンは長期戦に持ち込み、ウ軍支援に欧米諸国が疲れるのを待つ戦略になるようだ。

事実、トランプ氏が、米大統領になれば、ウクライナ支援は止めると宣言している。トランプが大統領になったら、停戦になる。

世界大戦の序章でしかなかったウクライナ戦争

世界情勢は、米中の2大巨頭の激突の道を歩み始めた。戦争の時代になってきた。それも大戦争である。第3次世界大戦であろう。

このため、米中の勢力圏拡大競争になり、中国は手を出して、中東をまず、手に入れたようである。

米国は、中央アジアに手を入れて、カザフスタンとの関係強化をしているし、韓国を中国から引き離した。日本も同様に中国圏から引き離そうとしている。台湾も米国陣営に取り込んだ。

この面からも、世界大戦争の序章が始まっている。民主主義と専制主義の戦いになる。

中東は専制主義の国であり、中露陣営に着いてしまった。

経済も米国の金融危機を経て、民需から軍需に変えることになりそうである。中央銀行バブル崩壊を何とか切り抜けるためには、大戦争が必要なのであろう。

ウクライナ戦争は、その序章でしかなかったのである。このため、早く、ウクライナ侵略戦争をロシアが不利になるように終わらせる必要がある。米中対決の戦争にしないためにも、序章で終わらせることである。

そして、欧米諸国の動きに「グローバル・サウス」の諸国は冷ややかな目を向けている。「グローバル・サウス」の諸国の多くは、専制主義国であり、中国か中立の方が得になるとみている。

21世紀は、地球滅亡の世紀になる可能性もある。そして、イスラエルとイランの動きに焦点が移ることになるようだ。

さあどうなりますか?

(『国際戦略コラム有料版』2023年3月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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