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日本人には「会社員」と「会社員以外」という2種類の人間がいると感じた理由

周りの顔色をうかがって、場の空気に合わせるのが日本人の特徴と語られることが多くありますが、実はこれ、会社員を始めとする勤め人の人たちの間での「会社員文化」であって、日本の文化とは別物ではないかという指摘があるようです。紹介してくれるのは、メルマガ『東南アジアここだけのお話【まぐまぐ版】』著者で、マレーシアに11年以上滞在する文筆家で編集者の、のもときょうこさん。会社員としての生活が肌に合わなかった体験を重ね、日本にも自分の意志で行動する人たちはいて、そういう人が見えている人と見えていない人で噛み合わないことが多くあるのが日本社会ではないかと考えています。

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同じ日本でも、「会社員」とそれ以外の人の間には、実は大きな乖離があると思う件

人材育成コンサルタントの孔令愚さんの文章がおもしろかった。
日本の文化と「日本の“会社員文化”」は全くの別物かもしれないという話|孔 令愚|note

孔さんが、外国人の研修で伝えていることは以下のことだそうです。

日本ではチームで仕事を進めるため、周囲の人との“和”を重視する
だからこそ、外国人から見て柔軟性に欠ける行動や、合理的ではない行動を取ってしまう(周囲との“和”を優先するため)

 

(例)

  • 定時になっても職場の人が帰らなければ自分も帰らない
  • 上司が「報告・連絡・相談」をやたらと求める
  • 自分で判断できることもその場で即答せず持ち帰る
  • 有休を取るときは職場の人にお詫びをしておく(お土産も忘れずに)
  • 飲み会は必ず参加し、二次会、三次会も残る

 

その根底には「ムラ社会」の概念があり、周囲との“和”を破る者は“村八分”になるため、日本人は周囲の人に合わせて行動する・・・ということもお伝えしています。

 

これはこれで外国人の方にとって必要な情報なのですが、これが日本の文化なのか?と問われると「実は違うのでは」と考えるようになりました。

 

というのも、日本人でも「一度も会社員になったことがない人」は上記のようなサラリーマン的な行動があまり見られないからです。

あ、確かにそうかも、と思いました。

一度も企業で勤めたことがない自営業の方にお会いすると、驚くほど柔軟で合理的に判断し、周囲の顔色ではなく自分の意志で行動します。

私が下町の人間関係が楽だったのは自営業の人が多かったからかもしれないです。

孔さんは続けます。

ただ現状は「就活」をしてサラリーマンになる生き方しか選べないと思っている人が圧倒的多数なので、「会社員」に向いていない人は会社に入ってからシンドイ思いをしているのではないかと思います。

これは本当にその通りです。「正社員になれた世代が羨ましい」と聞きますが、なかなかどうして、私の周囲で正社員をずっと続けている人たちにも、彼らなりの苦しみがあるのです。

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私はこの正社員の苦しさがよくわかるのです。なぜなら私自身が、正社員時代に絶望していたから。

「このまま自分はずっと同じ満員電車に乗って向いてない仕事をして単調な人生を生きるのか」「自分の人生は一生会社が決めるのか」と悟ったとき。「もうここを辞めたら非正規になって貧乏になる」と脅されたとき。

七転八倒して会社を辞めて、ようやく息がつけるようになりました。私は時間と自由が欲しかった。だから、もうその後正社員には戻っていません。

マレーシアに来てみたら、就職したければ50代でも働くところはあり、なんだなんとかなるじゃんと思いました。もう就職するのは嫌ですけど。

その中で「日本の会社員文化」が我慢できなくなり、海外に脱出することを選ぶ日本人が増えているというわけです。

 

逆に日本に永住する外国人も増えていますが、この裏には「日本は住むには天国だ、ただし日本のカイシャでは働きたくない」という本音があるかもしれません。

これはマレーシアでも本当によく聞く話ですが、人間は基本的に縛られるのを嫌がるのだと思います。この会社文化と似てるなと思うのが、伝えきく、農家の苦しさ(共同作業が基本)です。最近、地方出身で苦しかったという人と話す機会がありますが、「みんな一緒」「抜け駆けはダメ」は人手が必要だった農業では当然だったのかも。

一方、昔の本を読むと(まあどこまで信用していいかはわかりませんが)武士や庶民(商人)などは割とテキトーな生き方をしていたように見えます。江戸には何度も贅沢禁止のおふれが出ていて、要するに、放っておくと勝手なことをしだすのが町民だったんではないかなと。

私は日本にいたとき、親子で江戸中期の「百物語絵巻」にハマってました。主人公の「平太郎」は本当にテキトーな人間です。妖怪が出てても「捨て置いて寝る」と気にせず寝てしまうんです。

妖怪の世界へようこそ! 湯本豪一コレクション5 百物語絵巻 | めぐりジャパン

つまり、やっぱり日本にも多様性があって、なぜかお互いに世界が見えていない上に「会社員」が身分制度みたいになっていて、そこばかりが強調されている。

「会社員しか見えてない人」と「自営業の人が見えてる人」で、話が噛み合っていないみたいな現実はあるのかもしれないなーと思いました。

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image by: Shutterstock.com

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文筆家・編集者。金融機関を経て95年アスキー入社。雑誌「MacPower」を経て以降フリーに。「ASAhIパソコン」「アサヒカメラ」編集者として主にIT業界を取材。1990年代よりマレーシア人家族と交流したのときっかけにマレーシアに興味を持ち11年以上滞在。現地PR企業・ローカルメディアの編集長・教育事業のスタッフなど経てフリー。米国の大学院「University of the People」にて教育学(修士)を学んでいます。 著書に「東南アジア式『まあいっか』で楽に生きる本」(文藝春秋)「子どもが教育を選ぶ時代へ」「日本人には『やめる練習』が足りていない」(集英社)「いいね!フェイスブック」(朝日新聞出版)ほか。早稲田大学法学部卒業。

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【著者】 のもときょうこ 【月額】 ¥1,320/月(税込) 初月無料 【発行周期】 毎週 木曜日

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