MAG2 NEWS MENU

Japan's pension system. Translation: Employees' Pension Fund membership card. Subscriber number. Pension Handbook.

厚生年金を支払った期間が1年に満たない人の年金受給はどうなる?

年金が支払われるために必要な厚生年金期間は1年ですが、それに満たない人は支払っていても貰うことができないのでしょうか。今回のメルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』では著者で年金アドバイザーのhirokiさんが、 厚生年金期間が1年に満たない人の事例をとりあげ、詳しく解説しています。

厚年期間が1年に満たない人の4パターン事例と、全額税金で救うしかなかった障害者の人への改善

前回は65歳前と65歳後の必要な厚生年金期間の違いを過去から遡って説明しましたが、今回は厚生年金期間の少ない人の年金事例を考えていきたいと思います。

1.厚生年金期間が1年に満たない人の典型的な年金

〇昭和25年6月14日生まれのA子さん(令和5年中に73歳になる人)

1度マスターしてしまうと便利!(令和5年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法。
絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方(令和5年版)。

18歳年度末の翌月である昭和44年4月から昭和45年1月までの10ヶ月間は国家公務員共済組合に加入しました。この期間の平均給与(平均標準報酬月額の事)は11万円とします。

20歳になる昭和45年6月からは国民年金に強制加入となりましたが、支払えなかったので保険料を昭和57年6月までの145ヶ月間全額免除していました(将来の老齢基礎年金の3分の1に反映)。

昭和57年7月から昭和58年2月までの8ヶ月間は厚生年金に加入しました。この期間の平均給与(平均標準報酬月額)は16万円とします。

前月2月末に退職し、昭和58年3月中にサラリーマンの夫(昭和22年3月生まれで定年退職する60歳時の前月の平成19年2月まで厚年期間とします)と婚姻しましたが、サラリーマンの妻であったA子さんは昭和61年3月までの37ヶ月間は国民年金に加入する必要はなかったので加入せず(カラ期間にはなる)。

昭和61年4月からはA子さんも国民年金強制加入となり、夫が厚年に加入していた平成19年2月までの251ヶ月間は国民年金第3号被保険者期間でした(国民年金保険料は負担不要。財源は夫の厚年に含まれているため)。

夫退職してからの平成19年3月からA子さん60歳前月の平成22年5月までの39ヶ月間は未納にしました。

A子さんはいつから年金が貰えていたでしょうか。

さて、A子さんの生年月日から見ると厚生年金は60歳(平成22年6月13日受給権発生)から受給可能であり、共済年金も同じく60歳から受給する事が出来ます。

しかし、年金受給資格期間10年以上(平成29年7月31日までは25年以上)あり、1年以上の厚年もしくは共済期間が無いといけません。

この記事の著者・hirokiさんのメルマガ

登録はこちら

まず、年金記録を整理します。

なお、老齢基礎年金は20歳(昭和45年6月)から60歳前月(平成22年5月)までの480ヶ月の期間の中で計算します。

ア.厚年期間→8ヶ月
イ.共済期間→10ヶ月(細かい話ですが、20歳未満の期間なので老齢基礎年金の計算や受給権があるかどうかを見る場合はこの10ヶ月はカラ期間となります)
ウ.国年3号期間→251ヶ月
エ.カラ期間→37ヶ月
オ.全額免除期間→145ヶ月間
カ.未納→39ヶ月

よって、未納以外は451ヶ月あるので25年以上は満たしてましたね。

しかし厚年期間や共済期間がそれぞれ1年に満たないので、A子さんの場合は65歳からの年金受給となります。

法律が変わった平成27年10月1日の被用者年金一元化後であれば、厚年と共済合わせて1年以上であれば65歳前から厚年や共済が貰えたりするのですが、一元化前の受給者の人だったので完全に65歳から8ヶ月分の厚生年金、10ヶ月分の共済年金と国民年金から老齢基礎年金の受給となります。

なお、夫に厚生年金期間もしくは共済期間が20年以上あって配偶者加給年金が付いていたら、配偶者加給年金はA子さんが65歳到達月になる平成27年6月分まで夫に加算され、平成27年7月分からはA子さんの老齢基礎年金に振替加算(令和5年度82,116円。生年月日に応じた額)が加算されます。

ココでのポイントは厚年期間もしくは共済期間が単独で1年に満たなければ、よくある65歳前から年金を貰うという事は出来ないという事です。

なお、原則として平成27年10月1日の被用者年金一元化以降に年金の受給権が発生する人は、厚年と共済合わせて1年以上あれば65歳前から受給する事が出来ます(今回のA子さんのケースでもし厚年が1年以上で、共済が10ヶ月とかならば厚年のみは60歳から受給できます。共済は65歳から)。

最後にとりあえず基礎年金の計算のみ示します。

・老齢基礎年金→792,600円(68歳到達年度以降の人の満額)÷480ヶ月×(厚年8ヶ月+全額免除145ヶ月÷3+3号期間251ヶ月)=792,600円÷480ヶ月×307.333ヶ月(小数点3位四捨五入)=507,484円(1円未満四捨五入)

他に令和元年10月から始まった年金生活者支援給付金も受給できる場合があります。

この記事の著者・hirokiさんのメルマガ

登録はこちら

2.厚年が1年に満たなかったけども、在職し始めて途中で1年になる

〇昭和33年4月7日生まれのB夫さん(今は65歳)

B夫さんは20歳から30歳までは未納で、30歳から60歳までの360ヶ月間は国民年金保険料を納めました。

国民年金の記録のみなのでこのままであれば65歳(令和5年4月の翌月分)からの受給となります。

被用者年金一元化後(平成27年10月1日以降に受給権発生)なのでもし厚年か共済、もしくは両者合わせて1年以上あればB夫さんの生年月日により63歳(令和3年4月の翌月分)から厚年や共済から受給する事が出来ます。

B夫さんは60歳過ぎの令和2年12月に初めて厚生年金に加入する事になりました。

働いてるうちに63歳誕生日(令和3年4月6日)を迎えましたが、この時点ではまだ厚生年金期間は1年になっていなかったので年金を受給できませんでした。

令和2年12月から令和3年11月でようやく12ヶ月加入に到達するため、令和3年12月1日に厚生年金(特別支給の老齢厚生年金)の受給権が発生します。

よって令和3年12月1日に受給権が発生して、その翌月である令和4年1月分からの厚生年金を受給し始める事になります。

なお、令和4年1月以降も厚生年金に加入しながら厚生年金を受給する場合は、在職老齢年金による停止がかかる場合があります(月給与と直近1年間の賞与を月換算した額と年金月額の合計が28万円を超えた場合。令和4年4月1日以降は47万円に緩和され、令和5年4月からは物価や賃金の上昇で48万円に変更)。

このように、厚年期間が1年以上無くて受給開始年齢からは貰えなかったとしても、その後に1年以上になればそこから受給する事になります。受給権が無かった人などは、受給開始年齢がこのようにズレる人も居ます―― (メルマガ『事例と仕組みから学ぶ公的年金講座』2023年4月26日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

この記事の著者・hirokiさんのメルマガ

登録はこちら

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

有料メルマガ好評配信中

  メルマガを購読してみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 事例と仕組みから学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【月額】 ¥770/月(税込) 初月有料 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け