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移民希望者が殺到の異常事態。米国「寛容な政策」で大混乱のメキシコ国境

トランプ氏が大統領在任中の2020年に、不法移民の入国を防ぐため発令した「タイトル42」という公衆衛生法の条項。この規制が5月11日に解除され、メキシコ国境に米国への移民を希望する人々が殺到する事態となっています。今回のメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』では著者の大澤先生が、このニュースを伝える記事を翻訳した上で紹介。さらに不法移民問題の現状をほとんど取り上げることのないアメリカの大手メディアに対して、批判的な目を向けています。

米国人が固唾をのんで見守る国境(タイトル42の解除)

米国から不法移民の侵入を防いでいた連邦規制、タイトル42が5月11日に解除されました。

タイトル42はトランプ大統領が発令したものです。コロナを理由に不法入国した人を難民申請も許さずに追い返す規制です。

それがコロナの終息で解除されることになったのです。

メキシコ国境には移民・難民の希望者が続々と集まっています。中南米だけではなく、東欧諸国、ロシア、中国からも来ています。

そして今、彼らが暴徒となって国境を突破しないかが注目されています。ニューヨークタイムズの記事を見てみましょう。

タイトル42が期限切れとなる中、国土安全保障省の長官は「米国に不法入国した人々はより厳しい結果に直面するだろう」と述べた。

 

バイデン政権は国境に向かう移民に対し、米国への不法移民を制限するタイトル42の失効は、彼らの入国を容易にするものではない、と警告した。

 

国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は言った。「国境は開かれていない」

 

マヨルカス氏は声明の中で、不法に国境に到着した人々は亡命不適格者とみなされ、5年間の再入国禁止や刑事訴追の可能性を含む「より厳しい結果」に直面することになる、と述べている。

 

国境警備隊長のラウル・オルティスは、6万人以上の移民が国境付近で待機していると語った。「私たちは、こうした流れに対処するために、あらゆる資源を投入することに注力している」と述べた。

解説

アメリカ人は固唾をのんで状況を見ています。

少なくとも今は暴徒となって流入する集団はなく、関係者はひとまずホッとしていますが、予断は許されない状況です。

そんな中でバイデン大統領を批判する声は高いです。

共和党からも民主党左派からも非難されています。

共和党からは国境管理の弱さを批判され、民主党左派からは移民・難民希望者に厳しすぎる、という正反対の批判です。

私が変わったなと思ったのは、バイデン大統領や閣僚が「不法移民」という言葉を当然のように使っていることです。

思い出すのは2020年の民主党の大統領候補を選ぶ討論会です。

当時の民主党の大統領候補10人以上が出席していたのですが、「正式な手続きをせずに国境を越えてくる人は違法(illegal)ですか?」という司会の質問がありました。

驚いたことに誰も手を挙げなかったのです。

彼らを「不法移民(illegal immigrant)」と呼ばずしてなんと言うのだと私は思いました。

民主党の大統領候補や大手マスコミは、彼らを「滞在許可書を持たない移民(undocumented immigrant)」と呼ぶべきだというのです。

討論会の後で「やはり共和党(トランプ大統領)に投票するしかないな」と思った米国人は非常に多かったはずです。

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さて、現在に戻って、不法移民への寛容な政策に対して怒っているのは白人だけではありません。

合法的に米国市民になった多くの移民も怒っているのです。合法移民になるためには、本当に多くの書類の提出や面接審査が必要だったからです。

このメルマガでは何度も繰り返していますが、米国の政治の動き、国民感情には不法移民の問題が大きくかかわっています。

「トランプが紳士でないことは知っている、しかし彼の看板政策である国境管理には強く同意する」というアメリカ人は多いのです。

問題は「トランプの人格」への批判と「トランプの政策」への批判をごっちゃにしているマスコミや人が多い事です。

「トランプ憎し」が強すぎて、彼の看板政策までも否定して内容を報道しないのです。

しかし国境管理はあまりにもまっとうな主張なので、バイデン大統領のように修正せざるをえません。

報道は曖昧になります。それこそがアメリカを二分化する元凶です。

蛇足ですが、テキサス州のアボット知事、タイトル42解除の前日にもカマラ・ハリス副大統領の自宅の前に不法移民をバスで送り込みました。

(カマラ・ハリス副大統領は不法移民の擁護派でありながら、彼らがひどい状態に置かれている国境を長く視察せずに批判されていました。)

派手な演出です。そこまでしてテキサス州の不法移民の現状と怒りをマスコミに取り上げてほしいのです。

しかしこのような事をアメリカの大手マスコミ(ほとんど左派)が取り上げる事は少ないです。多くの共和党系のアメリカ人はこれを知っていて呆れています。大手マスコミを信じていません。

日本のマスコミは単に取り上げません。で、トランプへ投票した米国人は騙されているのだと報道しつづけています。

いずれにしても、今から大統領選までの1年半で米国国境でどういった騒動がおこるか、または、おこらないが、来年の大統領選挙にダイレクトに影響します。 (この記事はメルマガ『在米14年&起業家兼大学教授・大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』ポイント解説』5月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をご登録ください)

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image by: David Peinado Romero / Shutterstock.com

大澤 裕この著者の記事一覧

・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長  ・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授 ・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師 慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のエージェントとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。

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